04-09.三つの道
「改めて。皆。私に力を貸して頂戴」
「ええ。もちろんよ」
「はい♪ よろこんで♪」
「待ってました♪」
「頑張りますわ!!」
ノーラ、ルヴィ、ヒマリ、クラリスの表情がパァッと明るくなった。
……そっか。皆も迷ってたんだ。私が中途半端だから。ただそれだけのことだったんだ。
『ふふふ♪ 良いお姉ちゃんだね♪ クーちゃんが惚れるだけのことはあるよね♪』
そうよ。私はお姉ちゃんが大好きなの。
『わかった♪ 邪魔はしないよ♪ むしろ応援しちゃう♪』
余計な……いえ。是非お願いするわ。イロイ。
『やった♪』
もっと素直になろう。皆にもハッキリと問いかけよう。
「私は何をしたらいいと思う? 先ずはノーラ。あなたの意見を聞かせてもらえるかしら?」
「陛下と腹を割って話しましょう。王族から正式に外してもらうのよ。結局のところ、クーフェリアは王位を継ぎたくないのでしょう? レオンの妻となって次の国王を支えるつもりも無いのでしょう? なら交渉しましょう。そして味方につけましょう。理解者を得るのは大切よ。私たちがどれだけ議論を重ねたって出来ることは限られているわ」
「ええ。ノーラの言うことは尤もね。その場合重要なのは交渉の手段ね。ただ訴えかけても受け入れてもらえるとは限らないものね」
「そうね。そういうのは他の子に任せるわ。私から提案出来るのはここまでよ。後は得意な子に任せましょう」
ノーラは自分の苦手分野も正確に理解しているのね。以前は隣国に嫁ぐのが嫌すぎて引き籠っていたくらいだものね。結局自分では言い訳が思いつかなかったのよね。わかるわ。その気持。勇気を出してくれてありがとう。自分で半端だと思う考えを示すのってとても抵抗のあることだものね。
「ルヴィ。今の件でもそれ以外でも構わないわ。考えを聞かせてくれるかしら?」
「早々に侯爵領へ拠点を移すのも良い手かと♪ 新しい技術を広めるにも、王都を拠点とするのはかえって難しいですから♪ そういうのは一度別拠点で広めてから王都に持ち込むべきだと思います♪」
なるほど。ノーラの意見の先の展望についてってことね。
確かにルヴィの言う通りだ。一見王都は最先端を行ってるから新しい技術も受け入れやすいように見えるけど、権利関係の問題で簡単に話が通るとは限らない。最悪王家や他の貴族に最高権限だけを奪われてしまうかもしれない。
その点侯爵領であれば、当主の祖父を説得すればことは済む……か?
「侯爵領の次期領主は私の叔父で、その次は従兄弟よ。向こうに住み着いたらいずれ従兄弟と結婚しろなんて言われないかしら?」
「乗っ取りましょう♪」
「却下……と言いたいところだけど、案の一つとして残しておくわ」
「ふふ♪ クーも覚悟が決まったようですね♪」
「ルヴィ程には割り切れないわ」
愛に生きるつもりが無いとは言わないけれど。
「ヒマリはどうかしら?」
「廃城見つけたよ♪ いつでも始められるよ♪ 魔王様♪」
まったく別の意見が出てきたわね……。
いえ。以前私が口にしたんだけれども。わざわざ探しておいてくれたのね。
「ありがとう、ヒマリ。整備は任せたわ」
「イエス♪ マイロード♪」
「魔王と英雄の二重生活なんてのも面白そうだよね」
お姉ちゃんまで変なこと言い出した。
「王女はごっこ遊びと割り切ってもっと気楽にやってみたらどうかな」
「そんな言い方は嫌よ。アヤメ」
「クーちゃんは真面目過ぎるんだよ。それこそ割り切らなきゃダメだよ。いずれクーちゃんは王都を離れるんだから。お父さんとお兄ちゃんが……家族が大切なのはわかるけどね」
……そうね。いつまでもお姫様ではいられないのよね。私自身がそう望んでいるのよね。
お姉ちゃんは誰よりも私を理解してくれている。私の家族への未練を知っている。そのお姉ちゃんが敢えて口にしたのだ。私の中途半端はそこにあるのだと。
「……私は王女を辞めたい。自由に好きなことをして生きていきたい。けれどやっぱり辞めたくない。家族を手放したくない。だから私は道を示せずにいた。皆に対してだけでなく、私自身の中でさえ、彷徨い続けてきた」
いずれかの比重は下げなければならない。道は一つだ。
英雄王女クーフェリアとして救済の道に生きるのか。
侯爵令嬢クーフェリアとして発明の道に生きるのか。
魔王クーフェリアとして自由の道を生きるのか。
三つの道が浮き上がってきた。皆なら他にだっていくらでも道を示してくれるだろう。けれどどの道を選ぶのかは私の役目だ。それだけは誰にも委ねられないのだ。委ねてはいけないのだ。
これ以上道は増やさないでおこう。増えすぎては余計に迷ってしまう。……いえ。身体が足りなくなってしまうから。
「……全部よ。どうせなら全部試してみましょう」
『ふふふ♪ それでこそクーちゃん♪』
「え? 全部? お兄ちゃん殿下とも結婚するの?」
「しないわ。お兄ちゃんが形だけで良いって言うなら甘えることにするけど」
「「「「ひどい……」」」」
「仕方ないじゃない。そこはお兄ちゃんが選ぶべきものだもの。私はただ王に道を示すだけ。私のことを忘れて生きるのか、或いは私を形だけの王妃にして繋ぎ止めるのか」
「レオンが選ぶ道なんて決まっているじゃない」
「ふふふ♪ 悪女ですね♪ クー♪」
「あはは♪ 全部投げたね♪ クーちゃん♪」
「どういうことですの???」
「そっか。英雄王女は『王』じゃないもんね。姫だもんね」
ノーラ、ルヴィ、ヒマリ、クラリス、アヤメはそれぞれのリアクションを示した。
「……」
ユキノだけは微妙な表情で固まっている。
「ユキノの意見も聞いておこうかしら」
「御心のままに。クー様」
「どこまででも付いて来てくれるってことで良いのよね?」
「はい。クー様」
「ならユキノは魔王の側室ね」
「浮気だ!!」
アヤメ。いきなり立ち上がるなんてはしたないわよ。
「お姉ちゃんが私を独り占めしたいと言ってくれるなら嬉しいわ♪ 頑張って守り抜いてね♪ お姉ちゃん♪」
「まさか!? そういうこと!?」
「うふふ♪ 私はお姉ちゃんだけでいいのよ♪ けれど皆はどうかしら♪ クーちゃんハーレムが生まれるかどうかはお姉ちゃん次第よ♪」
「また丸投げ!? さてはそうやって一つずつ切り分けていく気だなぁ!?」
「ええ。私一人では抱えきれないもの。お兄ちゃんには王族としての私を。お姉ちゃんにはハーレムの決定権を。私が自分で決めきれないものは信頼する人たちに任せていこうと思うの。良い考えでしょ♪」
「名案ね。クーフェリア」
「最高です♪ クー♪」
「そうこなくっちゃ♪ クーちゃん♪」
「が、頑張りますわ……?」
「なっ!? 違うでしょ! わたしたちの王様であるクーちゃんに全部決めてもらおうって! 待って! わたしに近づかないで! 皆! 目を覚まして!!」
「逃がしません」
「ユキノ先輩!? まさか本気で側室に!? いったい何歳離れていると!? やっ!? ちょっ!? 違うんです! 今のは! ごめんなさぁ~~~い!!」
あはは♪ 期待しているわ♪ お姉ちゃん♪




