04-08.一致団結
ベルドール子爵は窮地に立たされている。
クラリスが子爵令嬢としては優秀すぎたのもそうだが、その娘が第四王子の婚約者となった第十一王女に突っかかっているからだ。家の都合などお構いなしに。
実際には、子爵の意思として認識されるだろう。貴族社会とはそういうものだ。
つまり、クラリスに現状維持を頼む策には最初から無理があった。
それだけじゃない。ソラール姫との接触もさしたる効果はない。私たちがどれだけ言い訳を積み重ねても、周囲の見る目は変わらない。
何せソラール姫と私……クーフェリアの接点も既に広まっているからだ。そもそも私が広めたのだ。だから皆は、私がソラール姫を使ってクラリスの籠絡を行ったと見るだろう。
結局それでは意味が無い。私は何もかも間違えていた。そもそも打てる手が少ないというのもあるけれど、それ以上に皆が協力的ではないのも問題だ。
皆わかっていた筈だ。
ノーラは賢い。王族であり、学園の卒業生でもある。アルミディアという国をこの場の誰よりも理解している。
ルヴィはただ面白がるだけだ。私のやることをただニコニコと見守っているだけだ。
ヒマリだって似たようなものだ。いつでも笑顔を浮かべているくせに、裏ではコソコソ仕込みを済ませている。私が明らかに間違った道に進もうとしても止めすらしない。なんならその道を実現しようと舗装だってしてくれるのだろう。
私が王なんて名乗ったからだろうか。だから皆が指示待ちなのだろうか。私はただの小娘なのに。貴族の顔だってろくに知らない世間知らずなのに。
私はもっと皆に助けてほしい。自分から意見を出して導いてほしい。そう望むのは我儘なのだろうか。アヤメの言ったように、先ずは時間を掛けて皆との信頼関係を築いていくべきなのだろうか。私が焦りすぎているのだろうか。
「……お姉ちゃん」
「いいよ。わたしが引き受ける。今回はわたしのやり方をよく見ていてね」
お姉ちゃんは何を言われずとも察してくれた。私の情けない声を聞いただけで私の願いを理解してくれた。
「さて皆。見ての通りクーちゃん様がお困りだ。めいめい知恵を出し合ってこの窮地を乗り切ろう。異論は無いかな?」
「もちろん」
「はい♪」
「まっかせて♪」
「頑張りますわ!」
そんな……あっさり……。
「現状維持もダメ。ヒマリを間に挟むのも実は特段意味がない。そもそもゴールはなんだろう。クーちゃんとクラリスが一緒に暮らせるようになればそれでゴール? 第一王子派閥からベルドール子爵家を切り離せばゴール? 第四王子が王太子になって第一王子派閥が空中分解を起こせばゴール?」
……。
「違うよね。わたしたちがクーちゃんに齎すべきは、クーちゃんが真に望んでいるのはそんな話じゃないよね。皆も知ってるでしょ。クーちゃんは昼行灯を目指したいの。ボンヤリとして見えづらい、昼の灯りを目指したいの」
……。
「それってどんなものだろう。直ぐ側により強い明かりを灯してクーちゃんを目立たなくさせれば良いのかな? わたしはそうじゃないと思うんだ。世界が今よりもっと明るくなれば、英雄は要らなくなると思うんだ。誰の目にも止まらなくなると思うんだ」
……。
「もちろん今の世界が絶望に覆われているわけじゃない。だからこれは簡単な話じゃない。魔王を倒せば終わりなら話は早かったんだけどね。わたしが言いたいのは、要するに皆の強さを引き上げようって話だ。今の世界に数多と存在する凡人たちを皆英雄レベルに引き上げよう。そうすればクーちゃんは目立たなくなる。わたしたちの真に目指すべきゴールはそこなんだよ」
……お姉ちゃん。
「理解できるかな? もっと具体的に言うなら魔術に革命を齎すんだ。或いは科学でも構わない。行き着く先は同じだ。わたしたちが世界を変えるんだ。世界と人々を次のステージへと引き上げるんだ」
「面白そうね」
「ふふ♪ なんだか壮大ですね♪」
「ボクたちは転生者だもんね♪」
「頑張りますの!!」
皆……。
「さてクーちゃん。皆で目指すべき目標が決まったよ。これで誰も迷わずに動けるね。次は詳細な計画を埋めていこう。安心して。それこそ皆の得意分野だから。クーちゃんはただ案を聞いて判断すればいい。方向性だけ示し続けてくれればそれで構わない。それが王様ってものでしょ。ここからはクーちゃんの役割だ。宰相のわたしが請け負ってもいいけど、最初の一声くらいはクーちゃんにお願いしてもいいかな?」
「……いつの間に宰相に就任したのよ」
「王妃の方がよかった?」
「そうね。お姉ちゃんは私のフィアンセだもの。けど宰相もお願いしたいわ。頼りにしてるから」
「そっか♪ 忙しそうだけど頑張るね♪」
ありがとう。お姉ちゃん。




