04-07.作戦会議・続
「本題に入りましょう」
ようやくだ。ここまでの話は全て前提だ。
そして対策というのもあくまで一時的なものだ。私たちは根本的な問題を取り除かなければならない。
「お兄ちゃんを勝たせるわよ」
第一王子派閥の失脚。それを目指すとしよう。
「クーちゃんは本当に首を突っ込みたいの?」
アヤメが早速痛い所を突いてきた。
この姉は、何故か私を刺す時だけは的確に貫くのだ。
「嫌に決まってるでしょ。政争なんて関わりたくないわ」
「ならやめておきなさい、クーフェリア。半端な気持ちで手を出す事ではないわ」
ノーラにまで言われてしまった。こちらの姉は常に一歩引いていて、自ら意見を言うような事はあまり無いのだけど。
「お姉ちゃんはクーが本気なら力になります♪」
遠回しにアヤメとノーラへの賛同を示すルヴィ。
「いっそクーちゃんが王位を取るのはどうかな♪ 策ならあるよ♪」
全く別の案を持ち出すヒマリ。皆がバラバラなのはこいつのせいなのかもしれない。
「クラリス。あなたも意見を出しなさい。遠慮は不要よ。私たちは運命共同体なのだから」
「えぇ!?」
「そうだよ、クラリス。クーちゃんが失敗すればクラリスだってこの国には居られなくなるんだよ。しかも君の場合はそれだけじゃない。第一王子が失脚すれば、その派閥に属するクラリスのお父さんだって立場を悪くするかもしれないね」
ありがとう、アヤメ。私の言いたかった事を全て伝えてくれたわね。
「それは……困るのですわ……」
「そうよね。わかってる。だからこそ言葉にして頂戴。クラリスを蔑ろにするつもりはないわ」
「わたくしは……嬉しいんですの……その……皆様とお友達になれて……同郷の方々に迎え入れて頂けて……本当はいっぱい話したいことがあるんですの……」
「ごめんね。それどころじゃなくて。私も同じ気持ちよ」
「光栄ですの!」
ぱっと笑顔が広がった。なんて可愛い子なんでしょう。
『クーちゃんって、こういうロリロリした子も好みなの? 姉フェチなのかと思ってたよ』
……まさかあなた、親愛の情と恋愛感情の区別がついていないの?
『あはは~♪ 何せ神様だからね~♪』
そう……。
『冗談だよ? ちゃんとわかってるよ?』
……本当かしら。
『本当だってば~♪ 神様嘘吐かない♪ 吐かない♪』
ダウト。
『あはは♪ ざ~んねん♪ 信じてもらえないかぁ♪』
なんで嬉しそうなのよ。
『ここだけの話、神様ってボッチなの。酷いと思わない? 同僚も居ない僻地に単身赴任だよ? だから暇してるの。クーちゃんがいっぱい相手してくれたら嬉しいな♪』
それでこんなバカげたことを企んだの?
『バカげたことだなんて♪ クーちゃんを幸せにしてあげてるだけじゃんかぁ~♪』
……そうね。理由はともかく、私が女神様のお陰で幸せになれたのは事実ね。
『だから~♪ イロイって♪ 呼んで~♪ 愛を込めて♪』
友達から始めましょう。イロイ。
『おっけ~♪ おっけ~♪ 喜んで♪ ありがとう♪ クーちゃん♪』
「……クー殿下?」
突然黙り込んだ私を不安そうに覗き込んでくるクラリス。
「ごめんね、クラリス。本当はもっと」
「い、いえ!! クー殿下は何も悪くありませんの!!」
この子はいつだって力いっぱいね。
「わたくし初めてなんですの! 初めてのお友達なんですの!!」
顔を赤くして、精一杯声を張り上げた。
「前世でもお友達は居なかったんですの! 生まれて初めてなんてもんじゃないんですの! 人生二度目にして初めてお友達が出来たんですの! だから本当に嬉しいんですの! 本当に本当なんですの!!」
「わかった。だから落ち着いて。クラリス。私もクラリスの初めてのお友達になれて嬉しいわ」
「光栄ですの!!!」
もう。わかったってば。
「一緒に問題を解決しましょう。私たちが堂々と友達を名乗るには障害がある。先ずはそれを片付けましょう」
「はいですの!!」
よろしい。
「それで? 本当に第一王子を倒すの? いっそベルドール子爵家だけを引き抜いちゃった方が影響も少なくない?」
「バカを言わないで、アヤメ。それではクラリスが後ろ指をさされるに決まっているでしょう」
「そもそも無理よ。クラリスは普通クラスから這い上がってきたのでしょう? そうやって特別クラスに移った子たちは既に目を付けられているわ」
そうだった。ノーラの言う通りだ。
『アピカル・コンクエスト』。学園に通う生徒たちが、決闘によって上位のクラスや席を奪い合う制度。
クラリスはそれによって躍進を遂げた優秀な生徒だ。転生者特有の莫大な魔力まで持っている。第一王子派閥の主だった者たちがその存在に気付いていない方が不自然だ。
「ちなみにヒマリはどんな策を? 子爵家ごと引き抜ける当てはあるんでしょ?」
アヤメは怖いもの知らずね。
「ぶっちゃけ子爵本人には大した力が無いんだよ。クラちゃんの件だって、どこぞの伯爵家にでも嫁に来いって言われたら逆らえないわけ。実際そういう話はもう上がっててね」
「待ちなさい。ヒマリ」
「は~い♪」
まったく。本人の前でなんて話を始めてるのよ。
「ごめん。なんとなくわかったよ」
アヤメも空気を読んでくれたようで何よりだ。
「父様は……」
心配になるわよね。こんな話を聞かされたら。
「引き抜きもそういう意味では悪い策でもないのね」
空気を読めない方の姉が口を開いた。
「つまりはそういうこと♪ これはある種の人助けだよ♪」
「ヒマリ。ノーラも。口を閉じなさい」
「「はい」」




