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虚空少女の風騙り ~ 英雄王女の異世界昼行灯 ~  作者: こみやし
04.新学期編

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04-06.作戦会議


 私にはカリスマ性がない。



 皆言う事を聞いてはくれる。家族同士の仲も良い。けれど纏める力がない。皆で一つの志を抱くには程遠い。誰もが腹に一物を抱えている。


 この曲者たちを纏めるには致命的に何かが足りていない。



「考えすぎだよ。言いたいことはわかるけどさ」


「あら。私の不安を軽んじると言うのね」


「意地悪言わないで。機嫌が悪いのもわかるけど」


「私がアヤメにあたっているとでも?」


「ごめんね。わたしの言い方が悪かったよね。そうじゃなくてさ。皆まだ付き合いが浅いんだよ。それも当然でしょ。出会ってからまだ三ヶ月と経っていない子たちばかりなんだもん。わたしたちはこれから家族になるんだよ。だからクーちゃんの心配はまだ少しだけ早いと思うんだ」


 ……それは……そうね。



「お姉ちゃんはいつだって私に教えてくれるのね」


「そう在れているなら何よりだよ」


「頼りにしているわ。本当よ?」


「わかってる。疑ってないよ。クーちゃん」


 お姉ちゃんはまた私を優しく撫でてくれた。



『ぐふ♪ ぐふふ♪ 姉妹百合♪ 大好物デス♪』


 ……うっざ。


『本当に機嫌悪いね、クーちゃん』


 ……。



「クーちゃん? また女神に何か言われたの?」


「もう忘れましょう。あんな奴」


「あらま」


 察したお姉ちゃんが先に立ち上がり、私の手を引いてエスコートしてくれた。




----------------------




 朝食を済ませた私たちは、クラリスの件を話し合うことにした。今日は週末で学園も休みだ。焦らず考えるとしよう。



「暫くは問題無いよね。クラリスは寮暮らしだし」


 アヤメの呑気な意見から会議が始まった。



「楽観的過ぎるわね。子爵も王都に住んでいるのよ」


「ならなんで寮に? クーちゃんみたいに家から通えば?」


「そう上手くはいかないわよ。下級貴族とはいえ貴族令嬢の通学だもの。それなりに人手が必要なのよ。毎日そんなものに費やす程、王城勤務の子爵って裕福なわけでもないのよ」


 護衛だって馬車だってタダじゃない。貴族だからそれくらいは持っているでしょうけど、余分に抱え込めば相応に経費も嵩むものだ。



「はい……うちは貧乏なんですの……父様は少しでも食い扶持を減らしたいと……」


「悪かったわね。眼の前でこんな話をして」


「いえ! 事実ですの! お気になさらず続けて欲しいですの!」


 あなたはやっぱり良い子ね、クラリス。ちゃんと状況をわかってくれているのね。ユキノが説明しておいてくれたのかしら。ユキノもありがとう。



「うちの学園って貴族でも一切費用は掛からないんだっけ」


 そういうのは知ってるのね。アヤメ。



「そうよ。教育に力を注いでいるからって名目で国費から多めに出しているのもあるけど、王家と一部の高位貴族が出資者として独占している面もあるわ。所謂利権というやつよ」


 ノーラが詳しい内情を補足してくれた。



「利権? 学園でお金稼ぎが出来るの?」


 お姉ちゃんって、たまにすっとぼけるわよね。



「金の成る木……いえ。この場合は金の卵を産む鶏かしら」


 ノーラも乗らなくていいから。もっとわかりやすく説明してあげて。



「卒業生に価値があるのよ。値千金の価値がね」


 出資額の多寡に応じて、優先的に優秀な人材を誘える仕組みだ。貴族だから元々進路が決まっている者だって少なくはないけど、それでも十分なリターンが見込めるのだ。



「寮に暮らしている限り、授業料どころか生活費の一切が発生しないわ」


「なるほどね~。だからか。流石に通学の費用までは面倒見てくれないんだね」


「そりゃそうよ。うちは裕福だから出来ることよ」


 それもまた高位貴族としてのステータスでもあるのだけれど。なんなら私の場合は侯爵家の者としてだけでなく、王女としての見栄まであるものね。



「話が脱線したわね。クラリスは寮暮らしだけど、ご実家の子爵家も王都に住んでいる。だからすぐに伝わるわ。今の話で重要なのはそこだけよ」


「了解」


 ようやく本題に戻れるわね。その前に一度おさらいしておきましょうか。



「クラリスの父、ベルドール子爵は第一王子派閥の所属よ。その娘であるクラリスと私が直接仲良くしていれば、第一王子派閥は第四王子派閥による切り抜き工作と見るでしょう」


 これが問題点だ。



「その対策としてヒマリ……ソラール・バルトローグ王女には、うちの学園に留学してもらったの。本当はヒマリの方が一学年上なのだけど、私の友人として我が侯爵家に居候している関係もあって、同じ一年生にしてもらったわ」


 これが対応策その一だ。



「ヒマリには学園でクラリスとの友好を深めてもらうわ。あくまでヒマリがクラリスを連れ込んだのだと周囲に印象付けるためよ。私とクラリスはヒマリを通じて友人となるのよ」


 これなら最低限の言い訳は立つだろう。



「ならまだ暫くは決闘も続けるの?」


「……そうね。そうしましょう。クラリス。週明けからも変わらず私に突っかかってきなさい」


「えぇ!?」


「……? 何か驚くような所があったかしら?」


「無理です! 無茶です! 恐れ多いですの!!」


 ……? この子は今更何を言っているのかしら?



「前と同じことをすればいいだけよ? 私が不真面目なのは本当よ?」


 理由はどうあれ、学園をサボりがちなのは事実だし。



「も!! 申し訳ございませんでした~~~~~!!!!」


 なんだか妙なことになっているわね。



「わたくし誤解していたんですの! クー殿下は不真面目王女なんかじゃなかったんですの!!」


「だから事実だってば」


「何か理由がある筈ですの!」


 クラリス……あなた極端ね……。



「……わかった。謝罪を受け入れるわ」


「ははぁ~!」


「私に迷惑を掛けた分は働いて返しなさい。改めてクラリスは私のものよ。いいわね?」


「はい!!」


「よろしい。なら週明けからも私のサボりを咎めなさい。そうして決闘を申し込みなさい。あくまでライバル感を出しながらね。第一王子派閥に属する者として、第四王子の婚約者たるこの私に突っかかってみせなさい」


「無理ですの!」


「なんでよ。演技をすればいいだけよ」


「それが無理なんですの! 演技の才はからっきしですの!!」


 ……なるほど。それが言いたかったのね。



「え? じゃあその話し方は素なの?」


「もちろんですの!」


 アヤメ。また話を脱線させたわね。



「ならいいわ。私のことは放置してヒマリと仲良くしてみせなさい。ヒマリも頼んだわよ。クラリスが私に意識を向ける暇も無い程構い倒してやりなさい」


「イエス♪ マイロード♪」


「い、いえす! まいろーど! ですの!」


 そこは真似しなくていいわ。


 ……はぁ。なんだか疲れた。全然本題が進まないわ。話し合いたいのはこの先の事なのに。


『ふふ♪ 頑張れクーちゃん♪ クーちゃんだけの女神様が見ていてあげるからね♪』


 ……どうせなら相談に乗って頂戴。


『やった♪ クーちゃんがデレた♪』


 妥協しただけよ。使えるものはなんでも使うことにしているのよ。私は。


『そうだったね♪ うんうん♪』


 ……。

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