04-05.凸凹シスターズ
「つまりクー様の中に女神様が住まわれたと」
「うん……そうみたい……」
ユキノはソファに腰掛け、寄りかかる私を抱きしめてくれた。不安がる私を安心させようと、優しく優しく、撫でてくれた。ぐすん……。
「「ごめんね……クーちゃん……」」
コブの増えたアヤメが今更になって謝ってきた。新たにコブを作ったヒマリもだ。二人ともユキノに成敗されたのだ。まったくもう。仕方のないお姉ちゃんたちなんだから。
「クーフェリア。女神は何が目的なのかしら?」
四人の姉たちの中でノーラだけは冷静だ。ありがたい。また騒がれたら話が進まないもの。
「それは……」
かくかくしかじか。
「まあ♪ 良い考えです♪ クー♪ そのハーレムに是非ともわたくしも混ぜてください♪」
「ルヴィ姉。空気読んで」
よかった。今度はアヤメも止める側に回ってくれた。先程の失態は許してあげましょう。
「アヤメもこっち来て」
ユキノの反対側をポンポンと叩いてお姉ちゃんを招く。
お姉ちゃんも抱きつかせて、ユキノと二人で挟み込んでもらう。……よし。落ち着いた。
「クー様」
「ダメ。ここに居て」
アヤメに私を任せて離れようとしたユキノを引き止める。
「ふふ♪ クーが甘えん坊です♪ 可愛いです♪」
「ルヴィ」
「はい♪ ノーラ姉様♪」
ノーラがルヴィを隣に座らせて寄りかからせた。それで大人しくなってくれるなら良しとしよう。
「ノーラ姉ちゃん♪ ボクもいい?」
「必要ないでしょ。ヒマリには」
「酷い!?」
ノーラは相変わらず言葉が足りていない。今のはヒマリが良い子だからという意味だろう。
ノーラはあくまで問題児のルヴィを大人しくさせるために甘えさせているだけだもの。
「ノーラ。嫌じゃなかったらヒマリもお願い」
「構わないわよ。いらっしゃい」
「やったぁ♪ クーちゃん♪ ノーラ姉ちゃん♪ ありがとう♪」
これで対面のノーラの両脇には、ルヴィとヒマリが寄りかかった。三対三で変な合コンみたいな光景ね。実際の合コンなんて見たこともないけど。
『ふつくしぃ……』
なんて?
『美しいよ! クーちゃん!! 我こういうのが見たかったん!!』
……女神様のためにやってるわけじゃないわ。
『イロイだってば♪』
はいはい。それでイロイはいつまでそこに居るつもりかしら?
『いつまででも♪ 末永くお願いね♪ クーちゃん♪』
……どうしよう。拒絶の意思が伝わらない。
『またまた~♪』
……。
『大丈夫♪ すぐ慣れるって♪』
「それでクーフェリア。転生者たちを集めた理由は」
ノーラは特段気にした様子もなく話を再開した。
アルミディア王家って皆マイペースよね。レオンお兄ちゃん然り、ルヴィ然り、ノーラ然り。あの陛下の子どもたちだものね。当然か。
「私にハーレムを作らせるためだと言ってるわ」
『ふふふ♪ これぞ我が求めし光景なり♪』
……それ以前にこの女神様が治める世界だったわ。どおりで。
「何の脅威も無いのね?」
『あはは♪ 誰もそんな事言ってないのにね~♪』
……こんにゃろう。
「脅威は無いそうよ。任務完了よ」
『もう一つ残ってるよ?』
「……クラリスと青龍を引き合わせれば任務完了よ」
「そう。それは何よりね」
ノーラ?
「先ずは平和を喜びましょう」
……それもそっか。未曾有の危機に来てほしいわけでもないんだし。
「私たちも今更放り出されては困るもの。この身をクーフェリアに委ねる事に異論は無い」
「作らないわ。ハーレムなんて」
「そう。それはそれで構わないわ」
ノーラは本当にどっちでも良さそうだ。ルヴィにはなんだかんだと甘いくせに。
いえ。責めるようなことではないわよね。たとえルヴィが危険人物だとしても。愛は人それぞれだ。
「ノーラとルヴィが結ばれたいのなら応援するわ」
だから二人も女神様に遠慮はしなくていいからね。
「では遠慮なく♪ ありがとうございます♪ クー♪」
「……」
ノーラは何も言わなかった。けれど満更でも無さそうだ。
「ボクはお邪魔かな?」
「いいえ♪ 良いのですよ♪ ヒマリちゃん♪ わたくしは皆で仲良くしたいのです♪」
「そっか♪ ボクも賛成♪」
「はい♪ 共に目指しましょう♪」
あかん。ヒマリとルヴィが手を組んでしまった。行動力の権化である二人が組んだら手に負えないわよ。たちの悪いことに、この二人には人を動かす才まであるんだから。
ヒマリは隣国の王女でありながら、ここアルミディア王国にまで手を伸ばす影の組織の総帥だ。転生者として姫として、その力と知恵を存分に奮い、十数年の時を掛けて組織を育て上げたのだ。
ルヴィは王都に居ながらにして、地方の領主貴族たちを唆し、謀反を起こさせかけたのだ。こちらは転生者とかそんなバックグラウンドも無しにだ。挙句私を嵌めようとしておきながら今では堂々と私に好意を示しているのだ。一見ほわほわお姫様なのに、そのお腹の中は真っ黒だ。油断ならない。
『だからこその愛だよ♪ クーちゃん♪ この二人を放っておいたら世界が滅茶苦茶になっちゃうかも♪ 世界はクーちゃんの双肩に懸かっているんだよ♪ ガンバ♪』
この……はぁ……。
どうしてこうなったぁ……。
コンコン。ノックの音が聞こえてきた。
「どうぞ。クラリス」
「し、失礼しますですの! おはようござ……っ!?!?」
寄り添い合う私たちを見比べて驚きに固まるクラリス。
「おはよう、クラリス。昨晩はゆっくりと眠れたかしら?」
「……」
「クラリス?」
ダメそう。完全に機能を停止している。実はロボットなんじゃってくらい、綺麗にピタリと動きを止めてしまった。
「朝食にしましょう。ユキノ。準備をお願い。クラリスはヒマリに任せるわ」
「はい。クー様」
「イエス♪ マイロード♪」
「ノーラとルヴィは先に食堂へ。アヤメは少し残って頂戴」
「ええ」
「はい♪」
「は~い」
……なんというか。
『バラバラだねぇ~♪ 完全掌握には程遠いね~♪』
……そうね。




