03-29.作戦
「お姉ちゃん心配です」
なんか腹立つ。
「お姉ちゃんぶって」なんて言うつもりはないけども。
「でもいずれ破棄するって」
「嘘に決まってるでしょ。ノラリクラリと遅らせて外堀を埋めていくつもりだよ」
「お兄ちゃんは私に嘘ついたことないもん」
「クーちゃんも大概ブラコンだよね。あの殿下もだけどさ」
「やっぱお兄ちゃんと結婚しようかな。お姉ちゃん意地悪だし」
「その気も無いのに口にするのはやめなさい。殿下も可哀想だよ」
「……は~い」
……仕方ない。今回ばかりは分が悪いみたいだし。
「あはは♪ お姉ちゃんも大変だね♪ アヤちゃん♪」
「笑い事じゃないよ。ヒマリ。クーちゃんはヒマリの妹みたいなものでもあるんだからね。これからはさ」
「やった♪ ボクも家族として認めてくれるんだね♪」
「仕方ないじゃん。でないとクーちゃん、本当にレオン王子に取られちゃうかもだし。わたしだって多少は譲歩してあげるよ。わたしだって必死なんだよ。それだけさ」
「それは疑いすぎよ。私はアヤメを選んだのよ。お兄ちゃんでもヒマリでもないわ」
「よく言うよ。簡単に好きだの愛してるだの口にしちゃうくせに」
「家族愛と恋愛は別でしょ?」
「それこそどの口で言ってるのさ」
「……そうね。今のは私が悪かったわ」
うっかりしていたわ。本当に。
「それで♪ シスコンでブラコンなクーちゃんは? この後どうするの♪」
ヒマリにからかわれるのは普通に腹立つのよね。
「どうするもこうするも、お兄ちゃんが動き出すまで大人しくしているしかないでしょ。取り敢えず侯爵邸でユキノとノーラと合流しましょう。それからメルヴィ姉様の様子を確認しておかないとね」
ちょろっと小型転移門で覗いた限り、今のところ二人の様子に変わったところはない。事前にヴァルター王太子にも頼んでおいた甲斐があったようだ。
とはいえ絶対に安心出来るというわけじゃない。一度話を聞きに行こう。私の見ていないタイミングで何かしら接触する者たちがいるかもしれないし。
転移門は動きながら使えないのが不便よね。どうにか改良出来ないものかしら。
「でもクーちゃん。陛下にも啖呵切っちゃったじゃん。本当に待っているだけでいいの? 自分で解決に動いた方が良くない?」
「それは……」
確かに……。
「行き当たりばったり過ぎるよね」
……ぐぬぬ。
「陛下はクーちゃんを活躍させたいんだろうし、第四王子派閥の求心力を高めたいならクーちゃんが目立つのはむしろ良い事だ。殿下の気持ちはわかるけど、クーちゃんまで言われるがままに待っているなんて間違ってるよ。そうしないって決めたから動き出したんでしょ。ここで足を止めちゃったら今までと何も変わらないんだよ」
「……そうね」
……その通りね。
「お姉ちゃんはよく見てくれているのね。私のこと」
「当たり前だよ。わたしはクーちゃんのお姉ちゃんで恋人なんだもん」
「ならそれを証明して頂戴。皆の前で」
「……何言ってるの?」
「お姉ちゃんの言葉に胸を打たれたわ。お兄ちゃんには悪いけど、計画の変更を伝えに行きましょう」
「ちょっと待って!? まさか!? わたしと付き合ってることを公表するつもりなの!?」
「ええ。だから嫁げないと突っぱねるわ。アルミディアにとっても悪い話ではない筈よ。私は全ての巫女と契るの。国母とはなれずとも、我が国に千年の繁栄を齎すでしょう」
「ダメに決まってるでしょ!?」
「覚悟を決めなさい。アヤメ」
「呼び分けしないって言ったのにぃ!」
「頼りにしてるわ。お姉ちゃん」
「それはズルい!!」
「お姉ちゃんが嫌ならヒマリに頼むわ。どちらが代表でも同じ話だもの。なんならいっそノーラに頼もうかしら。玄武も呼んで目一杯派手にやりましょう♪」
「危険視されるだけに決まってるじゃん! 大人しくレオン殿下の策に乗ろうよ! わたしが悪かったからぁ!!」
「お兄ちゃんの策では時間が掛かるわ。第四王子派閥が第一王子派閥を抑えられるようになるまでどれだけ掛かる事か。四神獣を見せびらかした方が手っ取り早いでしょ」
「強引過ぎるよぉ! 本末転倒だよぉ!」
「そうかしら? 中々良い手だと思うのだけど」
「クーちゃんが目立ってどうするのさ! わたしたち巫女と四神獣を隠れ蓑にするんじゃなかったの!? 全員束ねて表舞台に立ってどうするのさ!!」
「あくまで凄いのは四神獣よ。私はその巫女たちを誑かして牛耳る悪女よ」
「英雄から魔王にでもなるつもり!?」
「いいわね。それ。どこかに廃城でもないかしら? 魔王を名乗って世界征服に乗り出そうかしら♪」
「クーちゃん! 一旦落ち着いて!」
「落ち着くのはアヤメの方よ。私の策は完璧よ」
「穴だらけだよ!」
どうしてわからないのかしら? 私はそんなに難しいことは言ってないと思うのだけど?
「四神獣たちに世界中の魔獣たちを操らせて一処に集められれば、世界から魔獣の脅威が無くなるのではないかしら?」
「クーちゃん!!」
アヤメが突然口づけてきた。
私はすかさず転移門を起動する。
「……クー様」
久しぶりね♪ ユキノ♪
「え……? えぇ!?!?」
転移門越しにユキノに見られていたことに気付き、アヤメが慌てて私から離れた。
「酷いわ。アヤメ。ユキノが怖くて中断するなんて」
「酷いのはどっちさ!?」
「アヤメ。説明を聞かせて頂きましょう」
「ちがっ!? 今のは!!」
まあ。往生際の悪いこと。こんな調子では皆の前でなんてできないわ。先にユキノに見せて正解だったわね。
「もちろんクー様にもです」
「あら。見ての通り襲われていたのだけど」
「ならばそのように処理致しますが。本当によろしいのですね?」
「お手柔らかにね。アヤメには責任を取ってもらわないとだから」
「保証は致しかねます」
「取られる!?」
「大丈夫よ。ユキノは命までは取らないわ」
「保証は致しかねます」
「カヤぁ~~~!!!」
もう。情けないお姉ちゃんね。




