03-22.太陽の少女
「改めまして♪」
白黒結界を解くなり、ソラール姫はヴァルター王太子の背を強引に押して追い返してしまった。
それからくるりと私たちの方へ振り返り、見事なカーテシーを披露した。意外と様になっている。
「ボクはソラール♪ 前世の名前はヒマリ♪ よろしく♪」
「前世?」
しまった。止めるべきだった。
ここにはメルヴィ姉様とモーラさんもいるのに。
「ごめんね、メルヴィお姉ちゃん。今のも聞かなかったことにしておいて♪」
「は~い♪」
軽いぜ。ありがとう、お姉ちゃん。
「ありゃ? もしかして内緒だった? メンゴメンゴ♪」
たはは♪ と笑うソラール姫。可愛い。
「むっ。浮気の気配」
やかましい。これ以上ややこしくしないの。
私は再び白黒結界を発動した。
「うわ!? またなった!?」
「ソラール。話をしましょう。私はあなたを迎えに来たの」
「うん♪ さっき聞いた♪ 付いてくよ♪」
話が早いなぁ。
「この国に未練は無いの?」
「未練? 戻ってこれないの?」
「いえ。いつでも戻って来れるわよ」
何せソラールの相棒は朱雀だもの。いつでも飛んで来れるでしょ。
「なら問題ないね♪」
「クーちゃん、もしかしてソラールの魔力属性わかるの?」
「火でしょ。見た通りじゃない」
「普通は見ても属性なんてわからないよ」
「それもそうね……。なんでかしら?」
「無意識だったの?」
「ええ。なんか当たり前のように伝わってきたのよ。よく考えたらメルヴィ姉様とモーラの属性は見えてないのよね。これってもしかしてソラールが転生者だからかしら。女神様が何か力を与えてくれたのかも」
「女神様!? クーちゃん女神様と会ったの!?」
「ええ。ソラールも?」
「ないよ!」
そっすか。
「いいなぁ~! 女神様かぁ~! いいなぁ~♪ 美人だろうな~♪ ボクも会ってみたいな~♪」
「まさかお前!? 前世は男だな!?」
アヤメ。お口が悪いわよ。
「なんで? 前世も女だよ? 二人は男嫌いなの?」
「別にそんなことは無いわ」
「クーちゃん!?」
「この子が過剰に反応しているだけよ。この子は私のことが好きなの。恋愛的な意味でね」
「へ~♪ 奇遇だね♪ ボクも女の子が好きなの♪」
「なっ!? クーちゃんは渡さないよ!!」
「ボクは~♪ アヤちゃんにも興味があるんだ~♪」
「げげっ!? 近寄るな変態!!」
アヤメ……。あんたどの口で……。
「ね~♪ 良いでしょ♪ 仲間に入れてよ♪ どっちのハーレムでもいいからさ♪ 二番でも三番でも構わないから♪」
「ダメだってば!」
「アヤメ。これ以上騒ぐなら結界から追い出すわよ」
「クーちゃん!? こいつと二人きりで何する気!?」
飛躍しすぎよ。まったく。
「話をすると言っているでしょうが。問題は山積みよ。どうせなら手を貸してもらいましょう」
「わたしがいれば十分だもん! こんな奴いらないもん!」
「聞き分けなさい。本当は追い出したくなんてないの。アヤメにはずっと側に居てほしいの。理解して頂戴」
「クーちゃん……」
「わ~♪ 熱烈~♪ 二人はラブラブだね♪ ごめんね♪ 無理言っちゃって♪」
「わ、わかれば良いんだよ!」
「先ずはアヤちゃんに好きになってもらわないとだね♪ ボク頑張るね♪」
「なっ!?」
なんとも前向きなことだ。
「……けど都合は良いわよね」
「クーちゃん!? まさか!?」
しつこい。
「ソラール。私は女神様から特別な役割を授かったの。それはこの世界を守護する四体の神獣を統べる王となること。あなたにはその内の一体と組んでほしいのよ」
「う~んと……それってつまり♪ ボクもクーちゃんの家来になるってことだよね♪ つまりハーレムの一員にしてくれるんだね♪」
「そういうことよ」
「違うよ!? クーちゃん何いってんの!? というかソラール! お前はクーちゃんと呼ぶな! そう呼んで良いのはわたしだけなんだ!!」
「そうなの? ならクーちゃんさんの前世のお名前は?」
「それは内緒にしておきましょう。名乗ってもらっておいて悪いけど。お詫びにクーちゃんと呼ぶことを許すわ」
「許さないでよ!! クーちゃんのバカ! 意地悪!!!」
「う~ん。折角だけどやめておくよ。ボクはアヤちゃんとも仲良くなりたいし」
「そう。ならリアと呼びなさい」
「うん♪ リアちゃん♪」
「増えたぁ!?」
あなたがぐずるからでしょ。
「一応聞いておくけど、ソラールは何故そこまでハーレムに拘るの? あなたからは邪な感情が伝わってこないわ。何か目的があるのでしょう?」
「だってそっちの方が主人公っぽいじゃん♪ 折角異世界に来たんだから楽しまないとさ♪」
「えぇ!? そんな理由だったの!? けど!」
「もちろん女の子が好きだからっていうのもあるよ♪ だからって初対面でいきなり発情したりはしないけどね♪」
「アヤメより健全じゃない」
「なっ!?」
「ごめんね、アヤちゃん。ちょっと燥ぎすぎちゃったよね。先ずはボクと友達になろうよ。本当はそう言いたかっただけなの。どうかな? 仲良くしてくれるかな? してくれると嬉しいな♪ ダメそうでも頑張るね♪」
「くっ……!」
ソラールの良い子さにアヤメの邪な心がダメージを受けている。
「リアちゃん。リアちゃんたちは何か困ってるんだよね。もちろんボクも手伝うよ♪ これは所謂加入イベントってやつだね♪ 華麗に解決して仲間として認めてもらうからね♪」
「その意気よ。期待しているわ」
「任せてよ♪ マイロード♪」
「気を付けなさい。結界の外でそんな呼び方したら問題になるわよ」
今世の私たちはお姫様なんだから。
「あはは♪ だね♪ 改めてよろしくね♪ リアちゃん♪」
「ええ。こちらこそ。ソラール。それともヒマリと呼んだ方がいいのかしら? もちろんいつでもというわけにはいかないけれど」
「どっちでもいいよ♪ どっちの名前も大好きだから♪」
ふふ♪ 良い子ね。本当に。




