03-14.王女の旅立ち
「夢のお告げ?」
「ええ。昨晩夢の中に女神様が現れたの」
朝食の席でアヤメに夢の中での出来事を伝えた。
「残り二人の転生者かぁ」
「アヤメ、昨日から調子が良いのでしょう? 風の魔術で探せるかしら?」
「待ってね。ティグリスに聞いてみる」
アヤメは魔力を練って風に流した。
直接音を届けるのではなく、メッセージをああして魔力に込めて伝えるのが風の魔術を使った伝達方法なのだそうだ。
「あ♪ キタキタ♪」
程なくして返事が届いた。
「『近くに一人。隣国に一人』だってさ」
隣国? 他の四人がこのアルミディア王国に転生しているのに? どうして一人だけ隣国なのかしら。
「もう少し詳しくわかる?」
「ううん。これが限界だって。直接会えば判別は出来るけどって」
にゃるほど。風使いだからって世界中から声を拾い集めて探っているわけじゃなくて、昨日みたいに魂の波長を読み取っているのか。それも個人個人を調べたのではなく、大雑把に違和感を探した程度なのだろう。それでも十分凄いけど。
「便利ね。『四神獣』って」
「クーちゃんが王様だよ♪ 好きに使って良いんだよ♪」
「私も会いに行きたいわ。玄武に」
「テストゥードよ。ノーラ」
女神様がそう名付けられたそうよ。
「よく覚えてたね、クーちゃん」
「アヤメも人様の名前は正確に覚えなさい。あなたは私の片腕なんだから。隣国で失礼は出来ないわ」
「あいあいさー♪」
かくいう私も姫様らしいことってしたことないのよね。普通はお茶会とかもう何度も経験している筈なのでしょうけれど。その辺はベテランのノーラ姉様に補助を頼みましょう。
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あっという間に夏休みになった。
私たちは変わらず修行漬けの日々を送った。
もちろん森通いも欠かしていない。私は護衛隊長だ。いつまでも魔獣を殺すのに躊躇するだなんて言えないもの。
「今日からよろしくお願いします♪ クーフェリア♪」
「はい。こちらこそ。メルヴィ姉様」
陛下への挨拶を済ませ、私たちは馬車へと乗り込んだ。
一旦は私とメルヴィ姉様だけだ。王都を出るまでは多くの民が見送ってくれる手筈だからだ。ここはお姫様らしく手を振って応えないとね。
「あら? 緊張しているのですか?」
「……はい。少し」
こういうの初めてだから。
それに昼行灯を志す者としては、あまり目立たずに済ませたいところだ。
「大丈夫です♪ もう一方の手は握っていてあげますね♪」
ありがとう。メルヴィ姉様。
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無事に王都を旅立った私たちは、それぞれの従者を馬車に招き入れた。
流石にノーラ姉様は呼び出せない。そもそも旅に同行させていない。今はお屋敷で一介のメイドとして匿っている。
もちろん隙を見つけて転移門で呼び出すつもりだけど。メルヴィ姉様とは極力会わせてあげたいし。
ともかく馬車に乗ってきたのは私の従者であるアヤメと、メルヴィ姉様の従者である、モーラだ。
ちょっとノーラ姉様と似てるわね。名前の響だけじゃなくて顔つきも。それもその筈。わざわざノーラ姉様の母方の親戚から選ばれたお側付きだ。徹底しているわね。
「お初にお目にかかります。第十一王女殿下」
「ええ。こちらこそ。旅の間よろしくね。モーラ」
あんまり中身は似てないわね。
話してみて驚いた。凄くキリッとしている。どこかポワポワしたノーラ姉様とは正反対だ。
「こちらはアヤメ。私の従者よ。仲良くしてあげてね」
「よろしく。モーラさん」
「アヤメ。礼儀正しくしなさいと言ったでしょ。なによ、その話し方は。相手は先輩よ。年齢的にも経歴的にもよ。それに私のお姉様の従者よ。だいたいモーラだって貴族の出なんだからね。あまり血筋がどうこうとか言いたくないけど、これから隣国に行こうとしているんだから、普段以上に気を遣わなければダメじゃない」
「はい……ごめんなさい……」
「構いません。事情は伺っております」
あら。調べは付いていると。
「ごめんなさい。教育が行き届いていなくて。恥ずかしいところを見せたわね」
「良いのです。クーフェリア。自然体で過ごしましょう♪ 我らはこのまま十日も馬車に揺られねばならぬのです♪ あまり堅苦しくては息が詰まってしまいます♪」
「ありがとうございます。メルヴィ姉様」
「クーフェリアもです♪ どうぞ気軽にお姉ちゃんと♪」
「えっと……メルヴィお姉ちゃん」
「はい♪ お姉ちゃんです♪ クーフェリア♪」
メルヴィ姉様が抱きしめてくれた。やわやわ。ふわふわ。
「むぅ」
ダメよ、アヤメ。ステイよステイ。




