↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚空少女の風騙り ~ 英雄王女の異世界昼行灯 ~  作者: こみやし
03.夏季休暇編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/126

03-13.即位


 ティグリス、アヴィス、テストゥード、ドラコー。



 四神の獣たちは、それぞれ女神様からそのような名前を授けられたそうだ。そこは素直に白虎、朱雀、玄武、青龍じゃダメだったのだろうか。


 いや。人様の名前にケチを付けるのは良くないね。



 ともかく、女神様はこの四体を大陸の四方に配置し、それぞれに四属性の魔力から一つずつを与え、世界の守護者としての業務の一部を任せたそうな。


 その四属性とは、もちろん地水火風の四つだ。光や闇、空属性は含まれていない。ちなみに光と闇の神獣は存在しないらしい。ティグリスも聞いたことが無いそうだ。


 私とアヤメとノーラ姉様は、一般的な人間の水準より遥かに多くの魔力を与えられているそうだ。中でも私のものは飛び抜けていて、四神獣たちですらも及ばないらしい。


 そして私の空属性という特殊な魔力を鑑みるに、四属性とは別の新たな四聖獣として、私が選ばれたのではないかという話だ。……私人間なんだけど? それでいいの?


 ティグリスはなんか認めてるけど、他の四聖獣たちが王と認めるとは限らな……え? 認めた? ティグリスが風を飛ばして話をつけてくれたの? そっかぁ~……。


 でもほら。女神様の真意も聞いてからじゃないとさ。考え直す気はない? やっぱり人間が四聖獣の王ってのはおかしくない? おかしくないの? そっすか……。


 そんなわけで、私は四聖獣の王に就任させられてしまったのだった。強制的に。拒否権は無いらしい。シクシク。



「でもさ。やっぱり何か違うと思うんよ」


「往生際が悪いよ、クーちゃん」


 こんにゃろう。裏切り者め。



「もしかして転生者ってあと二人いるんじゃないかな?」


 ノーラ姉様は地属性だ。アヤメは風属性。なら水属性と炎属性担当の転生者も世界のどこかにいるのかもしれない。そしてそれぞれが四神獣と照応するのかもしれない。


 何か具体的な災厄に備えて私たちを転生させたのではなく、この世界の基盤をより強固なものとするために呼び出したのかもしれない。



「『ふむ。ありそうな話だ』」


 ほら。ティグリスもそう言ってくれてる。



「というわけで、私は四神獣の王じゃなくて、王の側近に選ばれただけなんじゃないかな?」


「『それはない』」


 なんでだよ。



「『力が大きすぎる。バランスを欠いている』」


「でも四神獣の王なんでしょ? 本物だってそれくらい強いんじゃない?」


「『あり得んぞ。王よ。王以上の力を持つ存在がもう一体出現すれば、この世界はバランスを保てなくなるだろう』」


 ……にゃるほど。


 だから私のことは意地でも「王」と呼ぶのですわね。




----------------------




「連絡出来なかったのは力を奪い取られたからだもん。我のせいじゃないもん。悪いのは全部クーちゃんだもん」


 何かがボヤいている。



「クーちゃん。四神獣は我のだからね。貸してあげるのはいいけど、本当に取っちゃったら嫌なんだからね」


 段々視界がハッキリとしてきた。



「それから推理は良い線いってたよ。転生者はあと二人いるから見つけてみてね」


 とびっきり綺麗な女性が指を立てて目をつむり、「それからね」と言葉を続けた。



「もしかして女神様?」


 神像によく似ている。



「……え?」


 話しかけると動きが止まった。言葉も止まった。


 あと私は膝枕されていた。まるで幼子を寝かしつけるように、お腹に手を添えられていた。


 ここはどこだろう。屋敷のベッドじゃない。女神様のお住まいだろうか。私はソファに座った女神様の膝に頭を乗せて寝かされているいる。


 少し首の向きを変えてみると、眼の前のテーブルにはカラフルなマカロンが盛り付けてあった。その隣にはお煎餅。更には大ジョッキ。情緒もへったくれもない。神秘の欠片もありはしない。流石にツマミの組み合わせ変じゃない?



「えぇ!? クーちゃん起きちゃったのぉ!?」


「……おはようございます。女神様」


「ダメダメダメダメ! 忘れて! 目を瞑ってぇ~~!!」


 手の平で視界に蓋をされた。


 かと思ったら割とすぐ手を退けられた。テーブルの上が綺麗さっぱり片付いていた。別に特別な空間だから見られたら困るとかって話ではなく、単に恥ずかしかっただけらしい。



「ふう♪ 危ない危ない♪」


 内緒にしておこう。バッチリみちゃった事は。



「けど食べたかったなぁ。お煎餅」


 こっちの世界に転生してから見たこと無かったし。



「クーちゃん!?」


 あら? 口から漏れてた? ごめんちゃい。



「もう。一枚だけだからね。これで内緒にしてよね」


「むぐ」


 口にお煎餅を押し付けられた。パリポリバリバリむしゃむしゃ。美味しい。



「マカロンは如何?」


「頂きます」


 そして始まるお茶会。


 女神様は優雅にティーカップを傾けた。



「ぷは~♪」


 真っ白なおヒゲが付いている。遠慮せず大ジョッキで飲めばいいのに。別にからかったりしないよ? 内緒にするし。



「それで女神様」


「ほら♪ クーちゃんも食べて飲んで♪ 今日は無礼講♪」


 完全に飲み会のノリなんよ。それは。



「クーちゃんの即位を祝して! かんぱ~い!」


「かんぱ~い」


 ……あかん。つい乗せられて掲げてしまった。



「待って女神様。その話なんだけど」


「遠慮しないで♪ 好きにこき使っちゃって構わないよ♪」


 さっきは自分のだから取らないでって言ってたのに。調子の良い女神様だ。



「けど」


「大丈夫大丈夫♪ 皆頑丈だから♪」


 いったいどういう運用を想定しているのだろう……。



「残り二人の転生者って」


「それは内緒♪ 目的は推察のとおりだよん♪ 見つけ出して四神獣(あのこたち)と引き合わせてあげてねん♪」


 は~い。


 しゃあない。腹括ろう。女神様直々のお言葉だし。



「なら世界の危機とかも無いんだね」


「う~ん♪」


 今のはどっちよ。


 こんなとこで呑気に酒盛りしてるんだから大丈夫なんだろうけどさ。



「ところでここは?」


「神の座だよ♪ 我のお家♪ 正確には夢の中に再現した紛い物だけどね♪」


「夢の中?」


「うん♪ クーちゃんも本当は目覚めてないの♪ お屋敷でぐっすりだよ♪ 今日はお疲れ様♪ 初めての魔獣退治はどうだったかな♪」


 白虎(ティグリス)と別れた後、ちょっとだけ狩りに行ったのよね。



「……思っていた程上手くはいかなかった」


「そっか。まあそんなもんだよ。初めてなんだからさ」


 白黒結界を使わずに【断空】を当てるのは難しかった。私は獣の動きに翻弄されっぱなしだった。むしろ対魔獣戦はアヤメの方がずっと上手にこなしていた。


 私は全くの初めてでもなかったのに。あの三つ首犬との戦いだって全然活かせてはいなかった。あれからだっていっぱい準備してきた筈なのに。



「自分が追い詰められているわけでもないのに相手の命を奪うのって、普通は難しいものだよ。それは前世のクーちゃんが生きた平和な世界に限った話じゃない。こっちでだって同じだよ」


「……うん」


 ……そうだね。躊躇があったのは間違いない。私は勘違いしていた。一度出来たことだから普通に出来ると思い込んでいた。けど実際はそうじゃない。どうしても一瞬考えてしまう。手元が狂ってしまう。判断が遅れてしまう。



「ふふ♪ 悩め悩め♪ 若者よ♪ (ごくごくごく)ーーぷはぁ~~~♪」


 結局大ジョッキに持ち替えていた女神様は、心底嬉しそうに飲み干した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。