03-09.似た者同士
「仲良いね。あの二人」
「ダメよ、アヤメ。ジロジロ見たりなんかしたら」
「ねえ、クーちゃん」
「ダメよ、アヤメ。私に触れないで」
「酷いよ。クーちゃん」
「ダメよ、アヤメ。私を嫌いにならないで」
「……ちょっと面倒臭くなってる?」
「……ダメよ、アヤメ。そんな事言わないで」
まだ白黒空間は完成したばかりの魔術だから制御が心配なのだ。外で待っているなんて怖くて出来る筈もない。ノーラ姉様とメルヴィ姉様だけを残して出たりなんてしたら、二人だけ永遠の棺に閉じ込められてしまうかもしれない。
改めて考えると危険過ぎる技術ね。これって。使い方には気を付けよう。
ノーラ姉様とメルヴィ姉様は飽きもせずに延々と睦……ごほん。仲睦まじく談笑を続けていた。本当に語りたいことが尽きないようだ。
「ちなみにこの空間内って歳も取らないのかな? それとも逆浦島になっちゃうの?」
何逆浦島って。いやわかるけど。
「たぶん大丈夫よ。肉体年齢は進まない筈よ。代わりに筋トレとかには効果も無いけど」
そうイメージしたから。老化は大敵だものね。うら若き乙女にとっては。
いっそ不老不死とか良いかも♪ 常時自分の身体を特別な結界で覆っていれば、実現できるんじゃないかしら? きっとこの技術は応用できる筈よね♪ 意外と簡単そうだわ♪
「さっすがクーちゃん♪」
「隙あらば抱きつかない」
「隙を晒したクーちゃんが悪い♪」
もう。アヤメったら。
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「このまま攫えないかしら?」
「次は五番目のお姉ちゃんを犠牲にするつもりかしら?」
「……我儘言ってごめんなさい」
よし良い子。
「ありがとうございました。クーフェリア様」
「メルヴィ姉様。どうかクーフェリアと」
「はい♪ クーフェリア♪」
よし♪ こっちも良い子♪
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ノーラ姉様を侯爵邸に送り届け、私はアヤメと二人で転移を繰り返し、王都中の屋根を伝って城壁の上へと移動した。
「これで準備はバッチリかな」
「シー。静かに。見張りに見つかるわ」
もう一度転移門を開く。今度は王都の外へと続く門だ。
「クーちゃん。ダメだよ。ユキノ先輩と約束したでしょ。今日は見るだけ。王都の外へ出るのは明日だよ」
「少しだけよ。すぐに帰れば気付かれないわ」
「ダメ。ダメったらダメ」
「……わかったわよ」
私は転移門を開き直した。
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「クーちゃん」
「あら? ここうちの庭じゃないわね? どうして?」
「そっか。あくまで惚けるんだね」
「ちょっとだけよ♪ アヤメだってさっき私のこと抱き締めたじゃない♪ お互い様よね♪」
「うぐ……」
ふふふ♪ 念願のお外だもの♪ 少しくらいはね♪
「……少しだけだよ」
「ありがと♪ アヤメ♪」
本当に少しだけにしておこう。ユキノを裏切りたいわけでもないんだし。
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「ちょっと。アヤメ」
「なに? クーちゃん」
「手を放しなさい。離れなさい」
「こんな夜遅くに油断しすぎじゃないかな」
「私は外を見に来たのよ。貴女の見飽きた顔を見に来たわけじゃないわ」
「ひどい……」
「私の楽しみを邪魔している自覚が無いのかしら? そっちの方がよっぽど酷いことをしていると思うのだけど?」
「そうだね。クーちゃんが怒るのも当然だね」
「なら」
「けどさ。わたしも我慢出来ないんだよ」
「……帰るわよ」
「いけず」
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「お早いお戻りでしたね。クー様」
殆ど真っ直ぐ帰ってきたんだから良いじゃない。
「……何か問題でもありましたか?」
……違う。違うの。ユキノに八つ当たりなんて。
「ごめんなさい。約束を破りました」
「はい。クー様」
「アヤメにも罰を与えて頂戴」
「クーちゃん!?」
「私が何度言ってもしつこく迫ってきたの」
「承知致しました」
「そんなぁ!?」
「来なさい」
ユキノがアヤメの肩を掴んだ。
「待って! クーちゃん本当にそれでいいの!? 自分で制御するからって約束してたじゃん! ここで先輩頼っちゃうの!? クーちゃんがお仕置きするべきじゃないの!?」
「アヤメっ!! あなたは!」
「ごめん、ユキノ。アヤメの言う通りね。私に任せてちょうだい」
「しかし!」
「大丈夫。甘いお仕置きなんてしないわ。徹底的にわからせてあげる」
「クーちゃん♪」
バカね。この期に及んでそんな顔をするなんて。
アヤメは私を舐めすぎね。その勘違いを正しましょう。手加減せず。容赦なく。
恨まないでね、アヤメ。これは自分で望んだことなのだから。




