02-16.少女の成長
「何言ってるの? お姉様も一緒に決まってるじゃん」
「クーちゃん!!」
お姉様ったら。何をイジケてたんだか。
「ごゆっくり」じゃないよ。クーちゃん様の背を流す大役をそうポイポイ放り出さないでほしいもんだね。ぷんすか。
「さあ♪ いざ♪ 桃源郷へ♪」
ユキノとお姉様を両手に抱えていざお風呂へ♪
「……桃源郷?」
「どったん?」
「クーちゃんその言葉どこで知ったの?」
「どこで? ……さあ? 本かな?」
キッカケってなると中々思い出せないものだよね。いつの間にか知ってる常識的な言葉ってさ。
「……そっか。他にもいたんだ」
「お姉様?」
「ううん♪ なんでもない♪ さ♪ 手挙げて♪ 万歳♪ お洋服脱がしてあげる♪」
「ううん。いい。ユキノにやってもらうから」
「そんなぁ~……」
お姉様ったら。そんなに落ち込まなくても。「orz」みたいになっちゃった。
「クー様。自分でお脱ぎください」
「私お姫様ぞ?」
「いつも自分でやられているではありませんか」
「ユキノが全然お世話してくれなくなっちゃったからだよ」
「当侯爵家では自立心を重んじるのです」
「ふっふっふ♪ 私の家名は『アルミディア』だもんね♪ つまりお姫様としての立場が尊重されるのだ♪」
「そうですか。では城のメイドたちと湯に浸かられればよろしいかと」
「ま、待って! 冗談だから! 行かないで! ユキノ! 約束でしょ!!」
「次はありませんよ」
「は~い……ごめんなさぁ~い……」
しぶしぶ……。
「やっぱりわたしが……」
「アヤメ。今後一切クー様のお身体に触れる事を禁じます」
「「そんなぁ!?」」
流石に横暴だよ!? それはダメだよ!?
「クー様。これはやむを得ぬ事なのです。どうかご理解を」
「なんでさ!? お世話云々はともかく接触禁止はやり過ぎでしょ!?」
「いいえ。決してやり過ぎなどではございません。むしろ今までが甘すぎました。同性だからとどこか油断してもいたのでしょう。これは私の落ち度です。謝罪致します。クー様」
「何を謝ってるの!? 意味がわからないよ!?」
「クー様。アヤメは懸想しているのです」
「なっ!? 先輩!?」
「けそう? えっと……お姉様が私を好きってこと?」
「はい。惚れています。恋をしています。だから遠ざけねばならぬのです。その意味は理解出来ますね?」
「先輩……酷い……全部言っちゃうなんて……」
「愚か者!!」
「「っ!?」」
「主に邪な感情を抱いておいて何をのたまうのです!! あなたは自分の立場をなんと心得るのです! このお方をどなたと心得るのです! 分を弁えなさい! 痴れ者が!!」
「も、申し訳ございません!!」
「ユキノ! 落ち着いてユキノ! 言い過ぎだよ! 話はわかったから! ちゃんとお話しよ! ね!」
「……はい。クー様。突然声を荒げて申し訳ございません」
「ううん。ありがとう、ユキノ。大丈夫。ちゃんとわかってるよ。本当に感謝してるの。けどね。私はお姉様のことも大好きだから。お姉様がこれまで私のためにしてきてくれた事は本物だから。だから話し合おう。ユキノも納得出来るまで私も勝手なことはしないから」
「はい。クー様。仰せのままに」
「お姉様もそれでいい?」
「はい。クー……フェリア様」
「うん。じゃあお風呂はまた後で。場所を移しましょう」
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私たちは席に着き、今後の事を話し合うことにした。
「先ずはアヤメお姉様。お姉様の気持ちを聞かせてもらえるかな?」
「……すみません」
「そうじゃなくて。本当に私のことが好きならお姉様の口から聞かせてもらいたいなって」
「……はい。わたしは……アヤメはクーフェリア様をお慕い申しております」
「そっか。ユキノの誤解ってわけではないんだね」
「はい。これは偽らざる本心です」
「うん。わかった。お姉様の気持ちは理解しました」
ちょっと驚いたけどね。けどそれだけだよ。
たぶんさっきのアレで諸々吹っ飛んじゃったね。それに何より、私はアヤメお姉様の気持ちを嬉しく思ってるからさ。
「けれどごめんね。私はアヤメお姉様の気持ちには応えられないよ」
「……はい」
「勘違いしないでね。私はお姉様のことが大好き。心の底から愛してる。きっとユキノに対する気持ちにだって負けてない。それくらい大好き。どうか信じてくれるかしら?」
「……はい。感激です」
「アヤメお姉様の気持ちを知っても私の想いは変わらない。あくまで家族としての気持ちのまま。増えても減ってもいないの。だから応えられない。これはユキノが反対するからとかそういう事でもないの。私が恋をしていないからなの」
「……はい」
「ユキノ。私たちの考えはそんなところかな。今後は私も自衛をするよ。アヤメお姉様にも自重してもらう。けれどどうか接触禁止だけは取り下げてほしいの。大好きなお姉ちゃんに距離を置かれたら私は泣いてしまうもの。ユキノは知っているでしょ。ユキノが距離を置き始めた頃、私がどれだけ悲しんでいたのか見ていたでしょ。だからお願い。アヤメお姉様のことまで取り上げないでほしいの。そして出来ることならユキノにももっと近くで見ていてほしい。私たちが道を踏み外さないように見守っていてほしい。お願い出来る?」
「……クー様。私は」
「わかってる。全部私のせいだって。ユキノだって悲しんでいたんだって。全部わかってるよ。だから大人になるよ。私もちゃんと一人で生きていける強い大人になる。それがママの望みだから。王国に縛られない自立した個人になってみせるから。だから見守っていて。縛るのではなく、私の裁量で動くことを許してほしい。お願いします。ユキノ」
「……はい。クー様。出過ぎた真似を致しました」
「ううん。ありがとう、ユキノ。本当に感謝しているわ」
ごめんね。いっぱい心配かけたよね。いつまでも子どものように振る舞う私が心配で堪らなかったよね。私変わってみせるから。ユキノに頼らなくても一人で立ってみせるから。
ありがとう、ユキノ。大好きだよ、ユキノ。




