02-14.決闘
「殿下に挑みたくば、わたしを倒してお行きなさい」
なんてカッコよく決めたお姉様の勝率は、精々が六割程だった。
いや、十分凄いけどね。学園二年目とはいえ、去年は落ちこぼれだったそうだし(本人談)。それが私と二月程過ごしただけで、特別クラスの生徒たちまで相手取って半分以上は勝ってるんだから。
それに負けた内の半分くらいはわざとだったし。本人は相手の名誉のためにも伏せていたけど、最初から私の相手を選別する以上の意味は無いのだろう。お眼鏡に適えば、わざと負けて私への挑戦権を与えてくれているのだ。
それもこれも私に実戦経験を積ませるためなのだと、最近になってようやく理解した。
学生相手だからってバカにはならない。私に必要なのは適度な手加減だ。空間ごと断つ【断空】では、どうしても加減が難しいからね。いかにして相手を傷つけずに降参させるかという経験は得難いものなのだ。これは基本不意打ちのチンピラ退治でも積めない経験だもんね。
「力及ばず申し訳ございません。殿下」
「ありがとう。アイリス。あなたのお陰で助かっています」
今日も今日とて敗北したお姉様に代わり、私は決闘場の中央へと進んでいく。
相手は連戦でも問題無さそうだ。いつも通りお姉様の加減は完璧だ。残り二割の敗北も実はわざとなのかもしれない。私の観察眼もまだまだだ。
「お願いします!!」
「はい。こちらこそ♪」
にこり♪ くらえ♪ お姫様スマイルだ♪
「くっ!」
よし。効いてる効いてる。
「えい♪」
「ぐわぁ~~~~!?」
まるで風に巻き上げられたように天高く飛び上がった決闘相手。今日も一撃で決まってしまったぜ。
「っ【土壁】!!」
ありゃ。しぶとい。
しかも無詠唱だ。珍しい。詠唱の方だけっぽいけど。
術名まで省略出来るのは私やお姉様くらいのものだろう。もちろん学園に限らなければもっといる。ユキノだって出来る。けど珍しいのは間違いない。
「【岩砲】!!」
いきなり大技だねぇ♪ 一年生なのにやるじゃない♪ まだ魔力を授かってから日も浅いのに♪
「風壁」
「なっ!?」
ふっふっふ♪ クーちゃん様の風壁は岩の塊だって防ぐんだぜ♪ もちろん嘘だけど♪ 今のは【断空】だ♪ 無詠唱だからこそ別の呪文名で誤魔化すことが出来るんだぜい♪
「【石礫】!!」
うんうん。そう来るよね。
風壁って風の壁だからさ。大きな塊が通じないなら、細かい粒を風に紛れさせて自滅を誘うのが定石だもんね。
「颪風」
「っ!?」
私の頭上から下に向かって風が吹くように、迫った礫の全てが上からの圧力で、斜め下に向かって叩きつけられた。
礫たちはそのまま地面を転がるのではなく、跳ね返って勢いを増して飛んでいく。
「ぐはぁっ!?」
反応が間に合わずに幾つもの礫をその身に受けた決闘相手は、意識を失って倒れ込んだ。
「勝者! クーフェリア王女殿下!!」
よしよし♪ 今のは中々良かったんじゃなかろうか♪
「おつかれ様です。殿下。お見事でした」
「ありがとう。アイリス」
「本日のコンクエストは終了です」
「そう。では参りましょう」
ふふふ♪ 完璧な姫様ムーブも決めて退場するぜ♪
「待てよ! 姫殿下!!」
なにやつ?
「今のは風なんかじゃねえ! 不公平だろ! 俺たちは全員属性を明かしてるってのによぉ!」
決闘を見物していた一人の男子生徒が声を荒げた。
周囲の者たちは慌ててその男子生徒を取り押さえた。
「なんとか言いやがれ!!」
「黙れ!!」
他の男子生徒が喚いていた生徒の口を塞いだ。
「申し訳ございません! 姫殿下!」
そのまま彼の代わりに頭を垂れた。
「構いません。手を放してあげてください」
「っ!?」
私は彼らの下へと近づいていく。
「あなたお名前は?」
「はっ! 姫様は下々の名前を覚えてねえのか!」
「貴様!!」
「いいのよ。その子の言う通り。これは私の勉強不足だわ。謝罪致します。わたくしはクーフェリア。クーフェリア・アルミディア。このアルミディア王国の第十一王女にして、大英雄オフィーリアが一人娘。どうかあなた様のお名前も教えては頂けないでしょうか?」
「……ギルバート・コリンズ。コリンズ男爵家の三男です。申し訳ございません! 殿下! 無礼を申し上げました!」
あら。意外と素直ね。
「コリンズ男爵子息。ギルバート様。覚えましたわ。どうかわたくしの無礼も許してくださいまし」
「め、滅相もございません!!」
「良かったですわ♪ ならこれでおあいこですわね♪ 皆様もどうかそのように♪ それではご機嫌よう♪」
退散♪
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「姫様。大変素晴らしいお手並みでした」
「あら、アヤメお姉様。まだそんな話し方を続けるの?」
もう学園は出たのに。ここは二人きり。帰りの馬車の中なのに。もちろん御者さんはいるけどね♪
「やり過ぎだよ、クーちゃん」
「目立ってた?」
「適当に決闘でも受けてボコボコにしとけばよかったのに」
「もしかして怒ってる? ダメだよ。闇討ちなんかしたら」
「あれじゃあクーちゃん人気者になっちゃう」
「アヤメお姉様のプロデュース計画に差し障るかしら?」
「とっても」
「それはマズいね~」
「元はと言えばクーちゃんの夢でしょ」
「そんな薄情なこと言わないで♪」
「もちろんこれはわたしの夢でもあるよ。わたしにとってはクーちゃんが全てだからね」
流石にちょっと愛が重すぎやしないかしら? お姉様って本気か冗談か、しょっちゅうこういうこと言うのよね~。
「本気だからね」
眼力が強い! いやん♪ 私のお姉ちゃん美人さん♪




