02-13.放課後の噂話
「聞いたか? 姫殿下の風刃は土壁すら両断するそうだ」
クーフェリアの活躍はあっという間に広まっていった。
学園中が英雄姫様の新たな武勇伝で盛り上がっている。
特段珍しくもない光景だ。
「絶対風じゃねえだろ! あんなん!」
「だからって他の何の属性だっていうんだ。あの速さだぞ」
「なんかインチキしてるに決まってるぜ! だいたいなんだって属性を隠してるんだ!」
「風属性だと示されているではないか」
「判別式に出てねえじゃんか!」
「なんでも賊に襲われたとか」
「ここは学園だぞ!? そんな噂真に受けてんのかよ!?」
「ならばどう説明を付ける? 姫様にコンクエストを申し込むか? 今なら断られはしないそうだぞ? そこで勝って証明するか? お前にそれが出来るのか?」
「出来るわけねえだろ! だいたい勝ったって相手は王族だぞ!? 親父にどやされるわ!」
「どころか絶縁からの追放でもおかしくはあるまい」
「おめえの方こそどうなんだよ? 気取ってねえで挑んでみりゃあいいじゃねえか。他の連中みたいに記念にってな」
「君のように突っ張ってはいないのだ。私は」
「よく言うぜ。勝ちたいって顔に書いてあんぜ♪ 俺ぁお前のそういうとこが好きなんだ♪」
「気色の悪いことを言うな」
「はっ♪ そりゃ悪かったな♪」
「……私も君の物言いは嫌いじゃない」
「素直じゃねえな♪」
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なんか後半イチャラブし始めたなぁ……。くっ……。
どこもかしこも似たり寄ったりだ。もちろんイチャラブの話じゃなくて。クーちゃんの評価の話。
「アイリス? どうかしまして?」
目敏い。クーちゃんは決してニブチンなんかじゃない。
けれどその鋭さは何故か近しい相手にしか発揮されない。周囲の噂にはとんと無頓着だ。不思議なことに。
お姫様モードの清楚可憐なクーちゃんも良いものだ。アイリスと呼ばれるのもこれはこれで悪くない。もちろんアヤメと呼んでもらえるのも嬉しくて堪らない。つまるところ、クーちゃんラブ。LOVE。L☆O☆V☆E! クーちゃん!
「アイリス?」
おっといけない。愛するクーちゃんが心配している。
「まだ挑まれる方々がいらしたようでして」
「……」
うへって顔するクーちゃん。お姫様モードはペラペラだ。
「ですが数は随分と減りました。直落ち着くでしょう」
「そっか。それは何より」
素が出てるよ。クーちゃん。
「じゃぁ……ないね。ごほん。そうですか。ご苦労様です」
「はい。姫様」
ふふ♪ お姫様も大変だね♪
「しかし……少々残念ですね」
クーちゃん?
「皆様の創意工夫には目を見張るばかりでした。それが終わってしまうとなると寂しくも感じるものですわ」
クーちゃん……。
ど~してそう……。
「あら? 皆様如何なされたのでしょう?」
クラスメイトたちがバタバタと駆け出していく。
あっという間に全員が飛び出していき、教室の中にはクーちゃんと、わたしだけが残された。
「お兄ちゃんまでいないし」
ほんとだ。王子殿下については正直わかんない。色々と。一体全体、どういうつもりなのだろうか。
「私たちも帰ろっか」
マイペース~。
しっかし、折角落ち着きかけてたのになぁ~……。
今のクーちゃんの余計な一言で、きっと皆また燃え上がったことだろう。またあれ捌くのかぁ。流石に面倒だなぁ。
「ねえ、クーちゃん。暫くわたしが代わりに挑戦を受けてみてもいいかな?」
「え? なんで? もちろん構わないけど。むしろありがたいけど」
「なら決まりね。クーちゃんは一回休んでて」
「そもそも代理決闘なんて認められてるの?」
「やり方次第なんだよ。そういうのはね」
「そっか。アヤメお姉様に考えがあるなら全部任せるよ」
「ありがと♪ 愛してるよ♪ クーちゃん♪」
「うん。私も」
そっけない……。
気軽に言い過ぎたかなぁ。クーちゃんも機嫌が良いと言い返してくれるんだけどなぁ。今も別に機嫌が悪いってわけでもないんだけどなぁ。
「愛してるよ♪ クーちゃん♪」
「う、うん。私もアヤメお姉様大好き……だよ?」
いけないいけない。戸惑わせてしまった。ついゴリ押してしまった。落ち着け、わたし。
「帰ろっか♪」
「うん」




