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虚空少女の風騙り  作者: こみやし
02.新入生編

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02-11.決闘の季節


「きゃぁぁぁああ……あ……? ……あら?」



 路地裏に追い込まれた少女は、眼の前の光景に戸惑いを浮かべた。つい今しがたまで確かに迫っていた暴漢たちが、突如として消えてしまったからだ。



「……幻でも見ていたのかしら……酔いすぎた……? けどここまで逃げてきて……やっぱりそんな筈は……」


 恐怖か、或いは気温の低さに身震いした少女は慌てて駆け出した。




----------------------




「バッチリだね♪ クーちゃん♪」


「完璧だね♪ アヤメお姉様♪」


 「パンッ」と、両手を合わせる二人の少女。所謂ハイタッチだ。一人の少女を暴漢たちから救い出し、一仕事終えたと喜びを分かち合う。



「今日はこの辺にしておこっか。クーちゃん」


「そうだね。アヤメお姉様。賊を引き渡さないとだもんね」


 今日も大漁大漁♪ むしろいつも以上だぜ♪ アヤメお姉様様々だぜ♪ 探知魔術凄過ぎだぜ♪



「収納魔術って生きた人間でもお構いなしなんだね」


「便利でしょ♪」


「わたしも入ってみたい」


「チャレンジャーだね♪」


「ねえ、良いでしょう?」


「また後でね♪ 今は変なものいっぱい入ってるから♪」


「そうだったね。わたしも狼藉者たちと一緒には入りたくないや」


 そっちもなんだけど、今言ったのはそっちじゃなくてさ。


 まだ禁書庫の中身もそのまま放り込まれてるんだよね。そのお陰か知らないけど、狼藉者たちも暫く入れておくと何故か大人しくなってくれるんだよね。今のところ一人も欠けたことはないし、大丈夫だとは思うけど。



 私たちは衛兵の詰め所に大人しくなった狼藉者たちを積み上げて、即座にその場を離れ、帰路についた。


 今日は一段と多かったから、皆びっくりしちゃうかも♪


 ふふふ♪




----------------------




「最近不審者の出没が相次いでおります。皆様に置かれましては心配などご不要なものとは存じますが、寄り道や夜歩きなどは以ての外。今後とも相応しき振る舞いを期待します」


 ……これ私釘刺されてる?


 心做しか、こっちを見ていた回数が多かった気がする。


 いやいや。気の所為。気の所為。


 私は学園生活も卒無くこなしてるもん。


 成績は上の下。風魔術の偽装も完璧。


 側近にお姉様を配置して、単独行動も控えてる。


 ほら完璧♪ これぞ私の目指すべき昼行灯♪



「本日より『コンクエスト』が始まります」


 あら。もうそんな時期。



「皆様のご活躍に期待します」


 教師はそんな短い言葉で締めくくった。



 このクラスに、今更『コンクエスト』って何? なんて問いかける生徒は誰もいないからだ。


 『アピカル・コンクエスト』。通称『コンクエスト』。


 生徒たちはより上位のクラス、席を巡って他の生徒たちに決闘を申し込む権利が与えられている。


 この場合の決闘とは、なにも魔術による一対一の試合に限らない。内容は様々だ。魔術勝負ももちろんその一つではあるけれど、他にも筆記試験やチーム戦なんかでも認められている。多角的に見て、何か一つでも優れた才能があるなら上位の席を維持できる仕組みだ。


 決闘の内容は原則、挑戦を受ける側が決めることになっている。しかし決闘そのものを拒絶することは出来ない。


 とは言ったものの、当然決闘を受け続ければ疲弊もするし、学生の本分に割く時間も削られてしまう。だから一人の生徒が受ける挑戦は最低、月に一度までと定められている。それ以上に挑戦を受けるかどうかは、生徒それぞれの裁量に委ねられている。大抵は受けるけどね。無理のない範疇で。複数回受けることも空気的には推奨されているし。貴族ってそういうとこあるからね。しゃあないね。


 しかし制度自体は必要だ。でないと徒党を組んで弱ったところを引きずり下ろすとかまかり通っちゃうもんね。もちろん、それで維持出来る程安い席でもないけれど。


 かつては、月一がノルマだからと配下の者に挑ませ、適当に勝利して席を維持する者なんかもいたそうだけど、今ではその手の不正が起こらぬよう徹底的な管理もされているそうな。普通に生きてると背後関係とか丸わかりだもんね。貴族社会ってやつはさ。


 どこの派閥だとか、どの家と付き合いがあるだとか知っておかないと、知らない人と軽くお話した程度でも問題になり得るからね。面倒くさいね。私はあんまり気にしないけど。



「殿下!」


 教師が立ち去るなり一人の生徒が立ち上がった。早速お兄ちゃんに挑むのかしら?



「「「「「殿下!! どうか私と!!」」」」」


 おっとぉ……?


 どうして皆私の方に来るのかなぁ?



「下がりなさい!」


 アヤメお姉様♪



「順に一人ずつです。クーフェリア様は逃げも隠れも致しません」


 えぇ!? まさか全員の挑戦を受けろって!?



「ふんっ」


 お兄ちゃん! 助けてお兄ちゃん! 不機嫌そうに鼻なんて鳴らしてないで! へーぷみー!!

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