02-10.暗躍
「昼行灯したい」
「クーちゃん? 何言ってるの?」
「これは由々しき問題だよ。アヤメお姉様」
真面目に学園行って、真面目に修行して、真面目に宿題こなして。こんなのただの優等生じゃんか。
違うんだよ! 私の思い描いていた学園生活ってやつぁ!
もっとこう! あるでしょ! こう!
昼間は居眠りしまくって、夜な夜な事件を解決する! そんなアウトローに私はなりたい!
「明日はブッチしよう!」
「お休み? どこに行きたいの?」
「どこか遠くへ! 二人だけで!」
「それって!?」
「デートしよ♪ アヤメお姉様♪」
「はい! 喜んで!」
「お二人とも。全部聞こえていますよ」
げっ!? ユキノ!?
「お願い! 見逃して!」
「なりません」
「ユキノだって知ってるくせに!」
「クー様の目指す昼行灯とはそのようなものではなかった筈です」
「けど! だって!」
「けどもだってもありません。サボれば目立ちますよ。目立つことを徹底して避け、昼間の灯りのようにボヤけた存在であること。それがクー様の目指す昼行灯像です。どうかお忘れなきよう」
「主人公が出歩かなかったら事件なんて起こりようもないじゃんかぁ!」
「メタい……」
「よくぞ言えたものですね。このユキノが気付いていないとでも?」
「ぎくぅ!?」
「え? クーちゃん何したの? わたしずっと一緒に居たよね? 学園でも家でも。お風呂でもベッドでも。片時も離れず側に居てくれたよね?」
ひぃっ!? なぁ~にぃ~これぇ!? アヤメお姉様から真っ黒なオーラがぁ~!?
まさか!? 存在しない筈のダブル属性!? 闇の混ざった風!? めっちゃ気になる!
「クー様」
「クーちゃん」
けどそれどころじゃない!? どうしてこうなったぁ!?
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「まさかわたしが寝た後にねぇ。クーちゃんたら悪い子なんだから♪」
怖い……アヤメお姉様の笑顔が怖い……。
「今日は連れて行ってよね」
「今日は無理ですぅ……ユキノに釘刺されましたぁ……」
「それで諦めちゃうの? クーちゃんの助けを待っている人が居るかもしれないのに? それが本当にクーちゃんの志す主人公なの?」
なっ!? アヤメお姉様!? ここで唆すの!?
ユキノ大好きアヤメお姉様ならそんなこと言わないと思ってたよ!?
「行こうよ。夜デー……見回りにさ」
今デートって言いかけました?
「アヤメお姉様……一緒に叱られてくれる?」
「もちろん。クーちゃんの望みを叶えられるなら本望だよ」
めっちゃ甘やかしてくれるじゃん♪
「あ、けど。ユキノ先輩に嫌われたいわけじゃないから、極力バレないようにね」
言いながら、風の魔術を発動した。
「もしかしてそれって!?」
「うん。情報を集めるための魔術。まだ音だけだけどね。練度もまだまだ。それでも屋敷の中くらいは探れるよ」
「凄い! 凄いよ! 流石アヤメお姉様! 本当に完成させちゃたんだ!」
「えへへ♪ クーちゃんのお陰だよ♪」
甘々お姉ちゃんだぜい♪
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「「シュタタ!」」
私たちは夜の王都へと繰り出した。
目的は王都の治安維持だ。悪漢許すまじ。本当は魔獣退治なんかもやりたいのだけど、流石に王都外へ出る程の時間の余裕は無い。早く研究中の転移魔術を完成させたいものだ。
「クーちゃん。足元注意」
「ふふ♪ アヤメお姉様もすっかり逞しくなったね♪」
「鍛えられてますから」
本当によくぞ付いて来てくれるものだぜ♪
「こっちだよ。クーちゃん」
「わかるの?」
お姉様の風の探知魔術はあまり範囲が広くないって話だったけれど。
「うん。こういう空気は慣れてるから」
……なるほど。そういう感じ。
「これは良い練習になりそうだね」
お姉様は貪欲だ。きっと実践を重ねていけば、探知魔術の制度もあっという間に上がるだろう。
「程々にね、アヤメお姉様」
きっと見たくないものまで見えてしまうだろうから。
「ありがとう♪ クーちゃん♪」




