02-09.新米姉妹
アヤメお姉様に魔術を教えてみて驚いた。
お姉様は才能の塊だ。先ず魔力量が半端じゃない。流石に私程ではないけれど、ユキノの数倍はある。たぶん英雄と呼ばれていたママと比べてもずっと多い。
そしてもう一つ。これは魔力量より大切な要素だ。お姉様は想像力に極めて優れている。私が十年以上掛けて蓄積した風魔術の有効的な活用方法をあっさりと取り込んで、更なる発展型や、私の想像も及ばなかった扱い方を示してくれた。
本人は昔の記憶をヒントにしたと言っていた。もしかしたらどこか風の強く吹く谷にでも住んでいたのだろうか。
体感したことが魔術のヒントになるかもという視点は盲点だった。私の空属性の魔術も空に上がれば何か新しい視点を掴めるだろうか。気になるところだ。
そして最後にもう一つ。これは魔力量や想像力よりも更に大切な要素だ。お姉様はやる気に満ち溢れている。誰よりも真摯に強くなろうと努力している。この熱意こそが最もお姉様の成長を補強している要素だ。
今までは環境に恵まれず、その余裕も無かったのだろう。しかし今は違う。私やユキノという師に恵まれ、学園での課題の心配も無くなった。
魔術の修行に全ての時間を費やすことで、あっという間に優秀な魔術師へと成長してみせたのだ。
「全部クーちゃんのお陰だよ♪」
アヤメお姉様は笑いながらそう言ってくれた。
こちらこそ♪ 全力で付いて来てくれてありがとう♪
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「ふむ。そうですね。成長は認めましょう」
「「きびし~……」」
おっかしいなぁ~……。
私とお姉様の二人がかりでもユキノに勝てないな~……。
そりゃあ、ユキノ相手に本気の魔術は使えないけどさ。空間ごと真っ二つにしたら洒落になんないし。
けどだよ。でもだよ。
そもそも魔術使ったって当たるイメージが湧かないんだよね。ユキノは速すぎるんよ。水属性だからって氷まで自由自在だし。スイスイ~って滑ってちゃうんだよ。
そもそも魔術使わなくても体術だけで私たちを圧倒しちゃうしさ。ママはユキノの数倍強かったとか言われてもね。全然想像も湧かないよ。一回くらい手合わせしておけばよかったなぁ。けどママ、私には魔術教えてくれなかったしなぁ。絶対誘っても困らせちゃうだけだったもんなぁ……。
……あかん。一旦ストップだ。ママに会いたい欲求が高まりすぎてしまう。落ち着け私。すぅ~~~~はぁ~~~~。
「クーちゃん?」
うぐっ……。ダメダメ。結びつけちゃダメ。今のはアヤメお姉様だから。大丈夫大丈夫大丈夫。よし。落ち着いた。
「続けるよ!」
「今日はここまでに」
……しゃあない。ユキノが言うなら。
「先輩! 後一回お願いします!!」
「……良いでしょう」
やったぜ♪ ナイス♪ お姉様♪
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「はぁ~~~~……ごくらく~……」
「あはは♪ お疲れ様♪ クーちゃんは本当に頑張り屋さんだね♪」
いえいえ。お姉様程では♪
「後でマッサージしてあげるからね♪」
「えへへ~♪ アヤメお姉様のマッサージ大好きぃ~♪」
本当に気持ち良いんだよ♪ どこで学んだんだろうね♪
「そうだ♪ アヤメお姉様には私がしてあげるね♪」
お姉様もいつも頑張ってるもんね♪
「……本当に良いの?」
ありゃ? 何か一瞬寒気が? 湯冷めした?
「もっちろん♪ アヤメお姉様の身体に触って良いのはクーちゃんだけだもんね♪」
けどユキノにだけは許してあげちゃう♪
「ふふ♪ 是非お願いするよ♪」
やっりぃ♪ イチャイチャタイムだ♪
「そういえばアヤメお姉様って好きな人とかいないの?」
「なに突然」
「たまには恋バナでもどうかなって♪」
お姉様は誰にもあげないけどね♪ それはそれとして、応援するのも吝かでもないような~♪ そうでもないような♪
けどさ♪ お姉様も学園生だから♪ お年頃だからね♪ あんまり気を遣わないのもあれだからね♪ 一応ね♪ 聞いておこうかなって♪ 雇用主としてはさ♪
「わたしが好きなのはクーちゃんだけだよ」
「やったぜ♪ 私もお姉様大好き♪」
両思い~♪
「(……ああ。本当に可愛いなぁ。クーちゃん)」
およ? また寒気が? 風の引き始めかな?
「それはそれとして、お兄ちゃんとかどう?」
「クーちゃん」
っ!?
「ダメだよ、クーちゃん」
「は、はい! ごめんなさい!!」
何!? いきなりどうしたの!?
なんでそんな冷たい声で!? お姉様!?
「殿下は王子様だから。あんまり迷惑掛けちゃダメだよ」
……普通に? 戻った?
「そ、そうだね!」
「そろそろ上がろっか」
「う、うん! それがいい! そうしよう!」
良かった……もういつも通りだ……。
怒らせちゃったみたい……気を付けよう……。




