01-02.やりたいこと
昼行灯。それが私の一番やりたかったことだ。
だってカッコいいでしょ♪ 昼行灯♪
普段は冴えない主人公♪ けどいざとなったらこっそり事件を解決♪ 誰にも褒められない影の英雄♪ そんな主人公に私はなりたい♪ ならなくちゃ♪ 絶対なって~やる~♪
まああれよ。私の夢はともかくとしてよ。
現実問題として、私が目立たないように立ち回るのは必要なことだと思うのよ。これまでの私はちょっと調子にノリすぎちゃったからね。燥ぎすぎていたからね。
そろそろ私も五歳だ。お姉さんだ。弟や妹が生まれる予定は無いけれど。それはともかくだ。
ここらで凡人に戻るとしよう。幼い間は天才でも構わなかった。所詮は一過性のものだ。歳を経れば凡人になるのだ。それが一番波風立たない生き方だ。
私王族だからね。こんなでも。端くれでも。下手に優秀だと祭り上げられちゃうのよ。それはきっとママやユキノにだって迷惑が掛かっちゃう。だから大人しく暮らそう。そう決めたんだ。もちろん夢のためでもあるけどね♪
「ユキノ」
私は全てを伝えておくことにした。私の大切な半身には。
「……畏まりました。クー様」
ユキノは少しだけ涙ぐみながら協力を約束してくれた。
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七歳になった♪
昼行灯計画は順調だ。陛下からの登城要請もなくなって久しい。最初から大して本気でもなかったのだろう。でなきゃとっくに攫われていただろうし。或いはママが頑張ってくれた結果なのかな。ママありがとう♪
お陰で私は今も侯爵家王都邸で平穏無事に暮らしている。母方のお祖父ちゃんである侯爵本人は、自らの治める領地に住んでいるため、あまり会ったことは無いけれど。
「クー様」
「今日も?」
「はい。先に食事をお済ませくださいませ」
ママ……会いたいなぁ……。
毎日お仕事忙しそうだなぁ……。
「ねえ、ユキノ」
「ダメです」
「まだ何も言ってない」
「職場に様子を見に行きたいと仰るのでしょう?」
「ママって王宮魔術師なんだよね~」
城勤めのエリートさんだぜ♪
「ダメです。クー様を城には近づかせられません」
ぐぬぬぅ~……。
「ユキノが一緒なら大丈夫だってば~」
「いけません」
「むぅ~」
「可愛い顔をしていないで食事を済ませてください」
無茶を言う。クーちゃんはどんな場面でも可愛いんだい♪
「なんでママってまだ働いてるの?」
陛下と結婚して娘まで産んだのに。
侯爵家が母娘一組くらい養えない筈はないのに。
「奥様は偉大な魔術師であらせられます。奥様の力無くして今日の発展はありません」
そこまでか~。何か凄いってのは聞いてるんだけどね~。
けどママ本人もユキノも詳しいことは全然教えてくれないんだよね~。
「どうかご理解を。クー様」
「……ごめんね。我儘言って」
「いいえ。クー様はとっても良い子ですよ。こちらこそお力になれず申し訳ございません」
これ以上は困らせちゃうな~。しゃぁないな~。
ユキノを虐めたりなんてしたくないもんね。諦めよう。
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「なんて言うと思ったのか♪ ガハハ♪」
ふっふっふ♪ 今日はこっそり夜ふかししてやったぜ♪
このままママが帰って来るのを待ってるんだぜ♪
「クー様」
「あ♪ ユキノ♪ 実は今からね♪」
「……」
「……ごめんなさい」
「良い子ですね。ベッドにお戻りください」
「は~い……」
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「夜がダメなら朝だぜ♪」
これならユキノもダメなんて言わないっしょ♪
「え? もう出ちゃったの?」
「はい。日の出前には職場に向かわれました」
そんなぁ~……。
「もう一月でクー様のお誕生日です。奥様は必ずその日だけはお休みを取られます。どうかもう暫しの辛抱です」
「はい……」
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誕生日。もう直八歳かぁ。魔力を得るにはもう七年。ようやっと折り返し。先は長い。早く大きくなってママに楽をさせてあげたいのに。ままならないものだ。ママだけに。
「クー様」
「うん。集中するよ」
「ではなく」
「……どうしたの?」
なんだか嫌な予感。
「奥様が……」
……え?
「遠方の討伐任務が決まりました」
「それって……」
「クー様のお誕生日までには戻れません」
「……そっかぁ」
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「ごめんね。クーちゃん」
久しぶりに会ったママは、私をたっぷり抱きしめてから旅立っていった。
国境を越えてきた強大な魔物を討伐しに行くのだそうだ。
既に城では討伐軍が編成されており、ママもその一人に加わった。今回の任務だけはどうしてもお休みできなかった。
大丈夫だよ。ママ。ちゃんと良い子にして待っているよ。
そう伝えると、ママは頬にキスをしてくれた。
「クー様。お勉強の時間です」
「うん。今行くよ」
ママを見送ったまま、いつまでも動かない私を心配して、ユキノが声を掛けてくれた。
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「殿下! クーフェリア殿下! 勅命ですぞ! 今日こそは観念してくだされ!! 疾く城に参りますぞ!!」
げげっ!? 久々の厄介お爺ちゃん!?
「なんと卑劣な……」
ママが出かけた途端に勅命だってさ。びっくりだよね。
……これマズいかなぁ。陛下がまだ私に興味があるだなんて思わなかったよ。昼行灯計画のお陰で興味を失ったものとばかり。けれど実際はそうじゃなかった。ということはだ。
まさかと思うけどママを遠ざけたのって……いやそんな筈は……だって大勢の討伐軍が一緒に……けど現実的な線を考えるならママへの人質にしたいってところかしら……やっぱり今更私への興味が復活したとも思えないし……。
「クー様。どうかこの部屋にてお待ちくださいませ」
「ダメだよ。ユキノ。勅命まで出た以上はユキノ一人じゃ止められない」
「しかし」
「私が行くよ。ママの留守は私が守るよ」
「クー様……承知致しました。ですがせめてこのユキノを」
「うん。付いて来て。頼りにしてるよ。ユキノ」
「はい! クー様!」
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「ふむ……」
ここは謁見の間。
玉座に座る王を前に、私とユキノは頭を垂れた。
あれがパパンか。
心配していた程嫌な感じはしないかな。一安心。
なんなら普通にカッコいい。流石異世界。
「……」
なんか言えや。
「……パパと。呼んでみてはくれぬか?」
……なんて?




