02-05.マイペース兄妹
「やあ♪ お兄ちゃん♪ お昼行こ♪」
「……うむ」
今の間は?
「……ユキノはどうした」
「あ♪ ごめん♪ 会いたかったよね~♪」
にっしっし♪ お兄ちゃんも好きね~♪
「馬鹿者。何故一人で出歩いている。と聞いておるのだ」
「何故と言われても……学園だから?」
「従者の一人くらいは連れ歩け。制度上存在するのは必要なことであるからだ。ユキノはそれくらいわかっているだろ」
そんなこと言われても……。
「だってユキノが来ないって言うんだもん。私はユキノ以外を側付きにするつもりはないし」
「ならば手配しよう」
「お兄ちゃんが? 新しいメイドさんを雇ってくれるの?」
それはそれでちょっとワクワク♪
「何故興味を抱くのだ。ユキノ以外を側に置くつもりが無いのではなかったのか」
「お兄ちゃんがくれるってんなら喜んで貰っちゃうぜ♪」
ふっふっふ♪ わたしゃぁブラコンだからね♪
「聞いたな」
「はっ!」
おっとぉ? お兄ちゃんも一人になっちゃうの? 側近さん遣いに出しちゃうの?
「行くぞ。昼食だ」
「はい♪ 殿下♪ お供します♪」
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「えぇ!? わ、わたしが!? お側付きに!?」
アイリスお姉様の表情が更なる驚きに染まった。
そりゃそうだよね。いきなり王子の側近に呼び出されたと思いきや、何故か昼食の席を一緒にすることになった挙句、お姫様の側近になれだなんて一方的に言われたんだもの。
「お兄ちゃん。なんでアイリスお姉様なの?」
「……」
何その表情。渋面……苦虫を噛み潰したような……そこまでじゃない? けどかなりしっぶい顔。王子がしていいやつじゃないよね~♪
「お兄ちゃん。そんな顔しないで。折角のイケメンが台無しだぜ♪」
「……何故兄様と呼ばぬ」
え? そこ?
「何故この者はお姉様と呼べて、私を兄様とは呼ばぬのだ」
そんなに気になる?
「ダメ?」
「……まったく」
許してくれたぁ♪
「お、お二人は大変仲が良いのですね……」
アイリスお姉様が冷や汗を垂らしながら愛想笑いを浮かべている。その身は半分くらい引きかけおり、今すぐにでもこの場を逃げ出したいと考えているのが見て取れる。
「ダメ♪ 逃げないで座ってて♪ お姉様♪」
「で、でも……ひぃっ!?」
いつの間にかアイリスお姉様の背後に立っていたお兄ちゃんの側近さん。その気配に気付いたお姉様は恐怖に悲鳴を上げた。
「それでお兄様?」
「……」
何故ジト目なのか。かなてからのご希望通り、お兄様と呼んで差し上げたのにさ。失礼しちゃうなぁ。ぷんぷん。
「もしかしてお兄ちゃんの趣味? ユキノと同郷の人だもんね。やっぱりお兄ちゃんって、こういう雰囲気の女性が好きなんだね」
「えひゃぁっ!?」
何その声。お姉様ったら、どこから出したの?
「何を勘違いしている」
違うの?
「手頃だったからだ。どのみちこの者は三学年に上がれん。退学で追い出されるよりは一年からやり直す方が良かろう」
「上がれない? なんでまた?」
あんまり成績が良くないのかな?
でも平民で入学を許されるのって、とっても優秀な人たちだけなんでしょ? 苗字が無いってことは大商家の娘ってわけでもなく、単純に優秀さを買われて入学してきたんだろうし。
それにお姉様は、私の顔まで知っていたんだよ。ただの平民じゃないのは間違いないよね。……もしかして忍者?
そもそもの話、ただ問題があるだけの人を側近にしろだなんて言い出さないよね。お兄ちゃん。
「これ以上は本人から聞け」
ここで丸投げ!? まさかの丸投げ!?
「手続きは済ませておいた。これよりクーフェリアの隣に侍るがいい。安心せよ。寮の荷物も侯爵家へ送っておく」
私かお姉様が断る世界線は無かったらしい。
「ではな」
「ありがとう♪ お兄ちゃん♪」
「次は遅れるな」
マイお兄ちゃんは、固まってしまったアイリスお姉様を残して席を立った。
どうやら気を遣ってくれたようだ。変な方向にだけ律儀だよね。うちのお兄ちゃん。相変わらずのマイペースっぷりだぜ♪
「お姉様♪ 遠慮なく召し上がれ♪」
私も早く食べちゃわないと。午後も遅刻したら今度こそ叱られちゃうかもだし。
アイリスお姉様にも色々聞きたいところだけど、焦らず放課後にゆっくり聞くことにしよう。
どうやらもう運命は決まってしまったようだしね♪




