07-14.長男の実力
お兄ちゃんが裏切った。
裏切って全部バラしてしまった。
私が世界に隠してきた事を。人知れず成してきた事を。
お兄ちゃんだから信じて伝えていたのに。
それなのに。
----------------------
私は一番目の兄様に連れられて、城の王族専用談話室へと移動した。
本当は帰りたい。今すぐ布団に潜ってふて寝したい。
ママの胸にしがみついて泣き出したい。お姉ちゃんに頭を撫でて慰めてもらいたい。
「クーフェリア。すまないが一つ確認させてもらいたい。レオンの口にした内容は全て真実に相違ないか?」
「……はい。真実です」
まだ話していないこともあるけど。概ねは。
「そうか……」
アルベール兄様は考え込み始めた。
「……今宵は御暇させていただきたく」
「ならぬ。手遅れになるぞ」
……今更何が。
「すぐにでも答えを出し、陛下に奏上すべきだ」
「聞いていただけるのでしょうか」
「無論。玉座は牢獄ではないのだ。鎖に繋いで座らせておくわけにもいくまい」
私が席を立つ分にはいくらでも出来る筈だと。
「そのようなこと」
「許される。許されない。そのような話ではなかろう。クーフェリアであればどこへ行こうと受け入れられる。だからこそレオンは必死なのだ。形振り構わずお前を引き留めようとしておるのだ。時間を許せば増々逃げ出す隙は無くなるぞ」
私には転移だって……。
「神獣に乗ればいつでも逃げられると考えておるのか? そうではない。間違っておるぞ。鎖はお前自身が繋ぐのだ。レオンはただそうせざるを得ぬよう誘導するのだ」
……そう……ですね。
「意志を持て。抗う意志だ。お前が否と言い張ればそこまでだ。レオンはお前の心を折るために揺さぶりをかけておるのだ。レオンの策に飲まれるな。それがお前の戦いだ」
……。
「……アルベール兄様は何故」
「我は諦めておらんからだ。次の王はこの俺だ」
兄様はニヤリと笑みを浮かべた。
そして手を差し伸べてきた。
自分が玉座に着くためには私が邪魔なのだと、だからこそ互いに手を取り合って戦おうと、これはそういう握手なのだと伝わってきた。
「……兄様もわたくしを利用するのですか」
「無論だ。クーフェリアも俺を利用するがいい。存分に」
「……感謝します」
「要らん。我々は対等だ。利害の一致に過ぎぬ共闘だ」
「……はい。兄様」
----------------------
「陛下! いえ! お父様!!」
私はメイドを一人連れて、父の部屋に直接乗り込んだ。
「家族会議よ!!」
----------------------
「兄上。お一人ですか」
「うむ。振られたな。レオン」
「……」
「なに。そう睨むな」
アルベールはレオンの執務室にあるソファに腰掛けた。
レオンも渋々対面へ移動した。
「お前は不器用な男だな」
「兄上は器用ですね。まさかここまでしぶとく抗われるとは思いませんでした」
「はっはっはっは♪ これは舐められたものだ♪」
「とっくに手足はもいだつもりでした」
「お前はまだまだ青いな。才があるだけに惜しい。せめてもう少し時間があればな」
「負けを認めぬのですか?」
「負けたのはお前だ、レオン。自ら切り札を手放したのだ。ここからお前に勝ちの目は無い」
「クーフェリアは」
「陛下の下だ。向こうも切り札を連れて乗り込んだぞ」
「……オフィーリア様ですか」
「そうなのか? あれはただの小娘に見えたが。ふむ」
「あまり驚かれぬのですね」
「いや。驚いているとも。お前があっさりとその名を口にしたことにな」
「……」
「やはり青いな。愛の一つも知らぬ身ではそれも致し方あるまいか」
「……挑発には乗りませんよ」
「諦めろ。クーフェリアはお前の手に収まる女ではない」
「余計なお世話です」
「ふむ。良い目をするじゃないか」
「諦めていないのは私も同じです」
「わかっていよう。我は時間を稼ぐために来た。行かせはせんぞ」
「必要ありません。陛下は決して撤回など致しません。オフィーリア様の介入は最初から読んでいたことです」
「だから青いと言うのだ。お前は」
「……」
「自身が何に振り回されているのか気付いているだろうに」
「だからこそ……」
「よいぞ。流石の俺も恋愛相談とやらは初めてだが、可愛い弟の悩みだ♪ 聞いてやろうではないか♪」
「……」
「まあそう睨むな。話してみよ」




