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虚空少女の風騙り ~ 英雄王女の異世界昼行灯 ~  作者: こみやし
07.王都編

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07-13.裏切り


「余はクーフェリアを指名する」



 ガヤガヤと会場が色めき立った。


 陛下のお言葉を清聴出来ないなんてよっぽどだ。


 それだけ多くの者たちにとって、この宣言は寝耳に水だったのだろう。


 なによ。全然根回し出来てないじゃない。それともこれは仕込みかしら。これも根回しの一環なのかしら。サクラを忍ばせて、より都合の良い状況に持っていくつもりかしら。



「陛下!! それは何の冗談でございましょう!!」


 最初に異を唱えたのは一番目の兄様……アルベール第一王子だ。



「クーフェリアは派閥を持たぬどころか継承権すら怪しい立場ではございませぬか!!」


 そうよそうよ。もっと言ってやって。一兄様。


 こんなの無茶苦茶だって。皆思ってるんだから。



「陛下。恐れながらわたくしも。アルベールお兄様のお言葉に賛同致します。わたくしはレオンお兄様を支えると誓い、婚約を結びました。その際に継承権は完全に失われたものと存じます。元より我が身は十一王女。かろうじて王家の末端に加えて頂けていた身に過ぎませぬ」


 私はお兄ちゃんと結婚するため、卒業時点で母方の侯爵家に養子入りすることになっていた。既にこの身は王家の一員ですらなかった筈なのだ。



「クーフェリアでなければならぬ理由があるのだ」


 理由……?



「それは私から話しましょう」


 お兄ちゃんが名乗り出た。



「クーフェリア。現在この国は危機に瀕している」


 危機? 何の話よ。



「いいや。この国だけではない。それは大陸全土に及んでいることだろう」


 ……?



「魔獣たちが急激に姿を消したことはその最たる影響だ」


 本当に何を言ってるの? お兄ちゃんには、魔獣を消したのは私たちだって伝えてあるじゃない。殆ど全て話したわ。



「ダンジョン。お前がそう呼び始めた特殊な領域」


 ……まさか。



「あれらも未だ未知数だ。真っ先に目をつけ、探索のための組織を生み出したクーフェリアの功績は称賛に値する」


 ……お兄ちゃんは。



「四神獣とその巫女たち。彼女たちを集めた功績もだ。クーフェリアの影響力は、最早この国に留まるものではない」


「やめて」


「クーフェリア。お前には分かっている筈だ」


「やめて! お兄ちゃん!!」


「この国には……この世界にはお前が必要だ」


「お兄ちゃん!!」


「私の隣ではなく、王位こそがお前に相応しい」


「どうして!!」


「隠すことはあるまい。いいや。クーフェリアが人知れず成してきたことは皆が知るべきことなのだ」


「私は!!」


「知っている。クーフェリアがそれを望まぬことを。お前はいつだって人々のために生きてきた。それを誇示することを望まなかった。しかしそれも今日ここまでだ。我らは危機に瀕している。クーフェリアという英雄を知りもせず、その手を掴んで引き止めぬことは、我らにとって耐え難き損失だ」


「っ!! 勝手なこと言わないでよ!! なんで今更!?」


「遅すぎたくらいだ」


「知らないわよ!! 私は!!」


 私は……この国をいずれ捨てるつもりなんだから……。



「いずれ旅立つつもりだった。全てを見届けたのなら、次はより多くを救うために立つつもりだった。そうであろう?」


 だとしたら……なんだってのよ……。



「レオン」


 一番目の兄様が口を開いた。



「今の話を聞く限り、まるでクーフェリアが魔獣たちを滅ぼしたようにも聞こえるが」


「そのとおりです。兄上」


 お兄ちゃん……。


 どうしてそこまで……。



 どよどよと、再び会場中が騒がしくなる。固唾を飲んで成り行きを見守っていた観客たちも、この話ばかりは聞き捨てならないものだった。



「だとするなら、クーフェリアは英雄どころか大罪人ではないか」


「そのような一面があることも否定はしません」


 なに……言ってるのよ……。この期に及んで……。



「ですが、クーフェリアが魔獣を滅ぼさざるを得なかった事情があるのです」


「魔獣の巨大化か」


「はい。各地でその事象は確認されておりました。いずれ間違いなく手に負えぬ結果となっていたことでしょう」


「それがワイバーンの亡骸を使って調べた成果か」


「あの血肉を喰らわせた結果、ただのボアが騎士たちを蹴散らす程にまで成長しました」


 いつの間に……そんなことまでしてたなんて……。



「我らは妹の貢献に報いると同時に、その道筋を支えるべきなのです。クーフェリアの行動に問題があったとするなら、それは相談すべき相手が居なかったことこそ原因なのです」


 ……結局首輪を付けたいって話なのね。


 私が外で自由に振る舞えば、いずれこの国だって敵に回してしまうかもしれないから。お兄ちゃんの言う危機って、結局はそういうことなのね。



「……ふざけないで」


「ふむ。クーフェリアが憤るのも尤もだな」


 一番目の兄様が、私を守るように、或いは私の言葉を遮るように、私を背に立ち塞がった。



「陛下。王太女のご指名、拝聴致しました。我、第一王子アルベールはこれ以上の異を唱えぬと誓いましょう。ですが、決定にはもう暫しのお時間を頂きたく。当人が納得せぬのであればまかり通るものでもありますまい」


「うむ。この場は一旦開くとしよう。クーフェリアについてはお前に一任しよう。頼んだぞ。アルベール」


「御意」

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