02-03.大切な従者
入学初日からテロリストに襲われるとは思わなかった。
不思議なことに、テロリストたちは私の身柄には興味が無いようだ。彼らがやろうとしたのは私の魔力を調べることだけだった。
なんでやねん。私王女ぞ? 美少女ぞ?
失敬しちゃうわね。
まるで敵国の兵器でも調べに来たみたいじゃんか。せめて鹵獲してけや。お仕事でしょ。
目立つわけにはいかないけれど、見向きもされないのは、それはそれで気になるお年頃なのだ。クーちゃん様は。
……いかんいかん。昼行灯を徹底せねば。
「都合が良かったよね。そういう意味ではさ」
「なんの話ですか?」
「ほら。今日のテロリスト騒動」
結局賊は縛り上げて出すべき場所に出してきた。匿名で。
お陰で私は判別式をブッチしただけの不良王女だ。
その裏でサクッと事件を解決していたわけだけども♪
これこそまさに昼行灯ムーブ! 影の英雄!
「まあ。実際に解決したのはユキノだけどね」
「ユキノの全てはクー様のものです」
「あんがと♪」
一心同体だもんね♪ 私たち♪
「結局あれなんだったの?」
「現在調査中です。今暫くお時間を」
あらま。意外とやるのね。
それとも単なる使いっ走りかしら? 大した情報は持ってなかった? 学園長に成り変われる程の刺客がその程度なんてことがあるのかしら?
むしろプロとして徹底しているからこそ、今も口を割らずに耐え抜いているのかもしれない。
ふむふむ。見上げた根性だネ♪
「クー様。就寝のお時間です」
「お尻痛いから撫でて♪ あいたぁっ!?」
抓られた!? 散々叩かれて真っ赤になったお尻を!!
「ぐすん……ユキノの虐めっ子ぉ~……」
「どうして裾を掴むのですか」
「脱いで」
「……何を仰っているんです?」
あは♪ ユキノが胡乱げな目してるぅ~♪
「寝間着に着替えて添い寝して」
「……畏まりました」
あらあっさり。
ユキノは本当に着替えてベッドに潜り込んできてくれた。
やったぜ♪ めっちゃ久しぶりだぜ♪
「ユキノ~♪ えへへ~♪ あったか~♪」
「ご就寝を。クー様」
「は~い~♪」
これならすぐに眠れそうだぜ♪
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「えぇ!? ユキノ来てくれないのぉ!?」
昨日の今日だよ!? 姫様刺客に狙われたばっかぞ!?
「クー様ならば万が一もありません」
そりゃそうだけどぉ!
「どうしてもご不安なのであれば同行致します」
「どうしても!」
即☆答☆!
「本当によろしいのですね?」
「なんで念押すのさ」
「ユキノは邪魔になるかと。クー様のお考えはしかと理解しております」
……そりゃそうか。
昼行灯てのは、自由だからこそ成り立つのだ。
けどユキノは立場上、私のだらしなさを注意せざるを得ないわけで。授業をサボって出歩くなんて以ての外だ。断じて認めるわけにはいかないのだ。側に居れば尚更だ。
「ユキノ~!」
取り敢えず抱きついて誤魔化すことにした。
「ご活躍を信じております」
ユキノは優しく頭を撫でてくれた。
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「しまった。迷った」
教室はどっちじゃろう?
昨日はあのまま帰っちゃったから、判別式どころかその後全部スッポかしちゃったのよね。本当はクラス分けのための試験があった筈なのに。
ただ試験はと言っても、筆記や実技の話じゃない。判別式と同じだ。魔術具で適正を見ていくだけの簡単なものだ。
私は王族だから一通り受けたことがある。
たぶん最初から免除されていたのだろう。私は知らなかったけど、ユキノが私を連れ帰ったということは間違いあるまい。ユキノは予め聞いていたのだ。
そろそろ本気で時間が危ない。しかし誰かに道やクラスを聞こうにも、そもそも人っ子一人見当たらない。
ここどこさ。一回外出て講堂でも目指そうかな。そしたら入口も見つけられるかも?
「殿下!? 何故このような場所に!?」
空き教室から誰か出てきた。
上級生だ。一部制服の色が違う。
「時間がありません! 急ぎましょう!」
勝手に私の手を取って走り出した。
同性とはいえ、王族の身体に無断で触れるとは……ふふ♪
面白い♪ 実に面白い♪
この人、私を目にした瞬間に王女だと認識していた。
その上で躊躇うことなく手を取ったのだ。
妙な話だ。私の容姿を知る者は決して多いわけじゃない。
確かに洗礼式では目立ってしまったけれど、誰でもあの場に同席出来たわけじゃない。何せ王侯貴族の洗礼式だ。セキュリティ的な意味でも観覧出来る人物は限られている。
そして私は洗礼式や入学式以外で公の場に姿を表したことはない。王族とはいえ末っ子も末っ子だ。実質的に継承権だって持っていない。
彼女はこの学園の生徒だ。入学式の時に目撃していた可能性はもちろんある。
たったそれだけにしては躊躇いが無さすぎるように思う。
今の制服姿の私を見て即座に王女クーフェリアと見抜くには、予め顔を知っている必要がある。かといって私は彼女を知らない。間違いなく面識は無い。さらに言えばこの世界に写真なんてものは存在しない。
親しくもない王女を相手にこの対応。実に良い♪
丁度ユキノの代わりが欲しかったところだ♪




