07-09.罪人の処遇
「さて。こいつはどうしましょう」
ママのお仕置きは後だ後。今は先にやるべきことがある。
目の前にはボロ侍。現在は白黒結界の効力によって時間ごと静止している。このまま永久に封じてしまおうかしら。
もちろんそんなわけにはいかない。玄関に居座られても邪魔だし。置物にしても趣味が悪すぎるし。
かといって始末してしまうわけにもいくまい。ケジメはお兄ちゃんにつけてもらわないとだ。でないとお兄ちゃんが舐められてしまう。襲撃があったのに下手人を取り逃したなんて馬鹿にされてしまう。こいつには襲撃の事実を公の場で証言させる必要がある。
指先一本動けないよう拘束してしまえば、流石のこいつでも逃げられはしないかしら。それとも白黒結界さえ解いてしまえば、また逃げられてしまうだろうか。
首を落としておいた方が安全だ。しかしそれでは証拠として弱くなってしまう。悩ましいところだ。
「ママ。何かあったら始末して」
「え~! 人は殺したくないわ~!」
「自分で危険物を拾ってきたんだから責任を持ちなさい」
「わかったわ~。私なりの方法で対処するわ~」
「良いわよ。それで」
ママならどうとでもなるでしょ。たぶん。
私は拘束用の結界をボロ侍の身体に纏わせて張り直し、代わりに白黒結界を解いた。
「あはははは♪」
まだ笑ってる。戦闘時の鋭さはどこへやらだ。
実は人違いだとか言わないでしょうね。
「ご機嫌ね」
「あはは~……は?」
流石に驚いてくれたようだ。
「まさかうちへ遊びに来ていただけるとは思わなかったわ」
「……うごけねえんだけど。指先一本。微塵も」
「切り落とさなかっただけ感謝してもらいたいわ」
「おっかねぇ~……」
「我が家には指一本触れてほしくないの。血で汚したくもない。だから今はそれで我慢して頂戴」
「嫌われたもんだぜ」
「好かれる要素があったかしら?」
「ねえなぁ~」
「ご理解いただけて何よりね」
口も塞いでおくんだったわね。別に私が尋問する必要もないんだし。
そう思い直し、お兄ちゃんの下へ転移門を繋いだ。
「早かったな」
「珍しく褒めてくれるのね」
「よくやった。引き取ろう」
「油断しないでよ。こいつに逃げられたら手間だもの」
「もちろんだ」
お兄ちゃんにボロ侍を引き渡す。
拘束は当然解いていない。だから自力では動けない。多少は不便だけど仕方がない。暫くは拘束結界も維持しよう。別に運べないわけでもなし。生きた像みたいなもんだ。
「リーリア。やっぱりお兄ちゃんを手伝って」
「心配しすぎじゃないかしら?」
「いいから」
「りょ~かい♪ 任せて頂戴♪」
リーリアを城に置くには当然リスクもあるけれど、ママの本来の姿とは似ても似つかない容姿に変えてある。そうそうバレることもないだろう。
「ちゃんと帰ってきなさいよ。任務が終わったらお仕置きだからね」
「そんな~!?」
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あれから三日。ボロ侍は未だに何も話していないそうだ。
その代わりではないけれど、お兄ちゃんはどうやってかベルドール子爵を直接捕縛してみせた。
もちろん第一王子派閥だって黙っちゃいない。不当逮捕だと騒ぎ立てている。
お兄ちゃんはこのまま躱しきれるのかしら?
お兄ちゃんに限って勝算もなく無茶することはないだろうけど。
「心配ないよ。今回はティグリスがずっと見張ってくれているからね」
心強いわね。風の四神獣は伊達ではないもの。
「リーリアは呼び戻すべきかしら」
「母さんは……大丈夫。ほうっておこう」
「なによそれ。今何してるのよ」
「……覗いてみればいいじゃん」
それもそうね。
ママの直ぐ側に小型転移門を繋いで覗き込む。
「ちょっと」
「ね」
ね、じゃないわよ。
ママったらなんで牢獄のアイドルみたいになってるの? 何故だか囚人たちと賑やかに笑い合ってるんだけど?
城の地下牢に囚われている囚人たちなんて碌な奴いないわよ? 軒並み凶悪犯罪者よ? なんで笑ってられるの?
「大物だよね。母さんって」
「破天荒だわ。善悪も曖昧だし」
「そんなことないよ。おおらかでちょっと独特なだけだよ」
「ちょっとねぇ~」
「魔王やってるクーちゃんが言えたことでもないでしょ」
それはそう。
「なんだかんだ似た者同士なんだよ。クーちゃんだって出会った頃は無茶苦茶やってたじゃん」
それもそう。
「……なんだか馬鹿らしくなってきたわ」
あれ見てたら。
私はあれこれ気にしすぎなのかもしれない。
「ふふ♪ クーちゃんももっと好きにしたらいいよ♪ 良い子でいるのもそろそろお終いにしてさ♪」
あら。お姉ちゃんがそんなことを言うなんて。
「お姉ちゃんの好みはどっち?」
「そういうことじゃなくてさ」
そう。なら好きにやらせてもらいましょう。




