07-06.愚かな首謀者
「首謀者はベルドール子爵よ」
「え……? ……それってクラリスの?」
「そう。父親よ」
「けど……子爵だよ? こう言っちゃあなんだけど、王子を亡き者としてまで……クラリスを取られたから?」
「それしかないでしょうね。動機は」
たとえ敵対王子を亡き者にしたって、派閥内での評価が上がることはない。子爵程度では簡単に切り捨てられてしまうだろう。
だからあるはずだ。個人的な動機が。
「でもなぁ。あのクラリスのお父さんがなぁ」
「結局直接的な面識はないじゃない」
全部お兄ちゃんに任せたから。
「子爵は王都を離れていた筈なのよ。一家揃って東方に立派なお屋敷とお役目を与えられていたの。それがお兄ちゃんの補填だった。なのに王都に戻ってる。不自然な話でしょ」
「よく戻って来れたね。他の第一王子派閥からしたら裏切り者じゃんか」
「そうでしょ。そうなのよ。不自然なのよ。彼の動きは」
「バックでも付いたのかな。クラリスを取り戻して第一王子派閥の力を少しでも削ろうと、クラリスのお父さんから取り込んだ誰かがいるのかも」
「冴えてるわね。そうでもないと説明が付かないわよね」
わざわざ戻ってきた理由も。そう出来た理由も。
「大至急調べましょう。クラリスの家族に何があったのか」
「らじゃ。お父さん以外の家族が人質に取られているなら救い出さないとね」
……或いは……もしかしたら……既に家族は。
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「調査結果が出たよ」
「早かったわね」
「ヒマリとモミジが張り切ってたからね。はいこれ」
「お姉ちゃん、まだ目を通してないの?」
「勇気が湧かなくて」
「そう。いいわ。私が見ましょう」
「一緒にだよ」
お姉ちゃんと頭を突き合わせて資料を覗き込んだ。
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「……」
「……」
……。
「……クラリスに」
「言わないわよ。絶対に」
「そんなわけにはいかないでしょ……」
「……」
「でもまあ良かったじゃん。全員命は無事で」
「良いわけないでしょ!! 子爵がこんな奴だなんて!!」
彼は裏切り者だ。第一王子派閥を裏切って、第四王子の甘言に乗った。娘を手放して富を手に入れた。
だというのに、今度は第一王子派閥の甘言に乗って再び第四王子を裏切った。更なる富を得るため、一度は手放した筈の娘を政治争いに巻き込もうとしているのだ。
「この世界の貴族ってそんなものでしょ。娘が神獣の巫女になんて選ばれれば魔が差すってもんでしょ。全部クーちゃんが撒いた種だよ」
「わかってるわよ!! けどだからって!」
「わたしたちは有名になりすぎたんだよ。お飾りの象徴ではなく実力者の集団になってしまったんだよ。そこに混ざるクラリスが注目されない筈はないじゃんか。隙があるなら突き崩そうと手を付けるに決まってるじゃんか。レオン殿下も片手落ちだよね。クーちゃんからの急な頼みだったからってこんな雑に済ませていたなんて」
「お兄ちゃんのことまで言わないでよ!!」
「けどわかるでしょ。子爵は軽んじられているんだよ。最初から三下と見下されているんだよ。レオン殿下だってそうだったんだ。もちろん敵派閥の者たちだって同じだろうさ。最初から彼は良いように利用される立場なんだよ。そんな人が手元に転がってきた最高の札を使って見返そうと思うのは当然のことでしょ。クラリスだけじゃないよ。きっとボロ侍との出会いも偶然だ。クーちゃんとレオン殿下の目論見で東に送られた結果の必然だ。それだけ上等な刀を手に入れたのなら振り回してみたくなるってもんでしょ」
「だからって……」
「運が良いんだか悪いんだか。こうなった以上は政敵として叩き潰すしかないよね」
「……私に覚悟が無いとでも言いたいの?」
「伝えなよ。黙って手にかけたら一生後悔するよ」
「……無茶言わないでよ」




