07-03.冒険者ギルド
私たちの立ち上げた冒険者ギルドは基本に忠実だ。
ランクはG~Aの七段階と、Sランクの計八つ。
内部的には更に「A+」とか「A-」とかもある。これはそれぞれの実力をより正確に把握して管理するためだ。冒険者本人には開示されないし、依頼を受ける上で制限が掛かるということも基本的にはない。こちらから依頼を持ち込む時には参考にする事もあるけどね。
討伐対象の魔物は全てダンジョン内に生息している。即ち冒険者ギルドはダンジョンの管理組織でもある。
冒険者ギルドと一口に言っても、その業務内容は多岐に渡る。
冒険者たちの支援や依頼の斡旋だけでなく、ダンジョンのマップ作成・販売や、魔物たちの生息状況の把握、魔物素材の卸業、需要に応じた依頼票の作成、ダンジョン関連の必需品販売、各種お偉いさんのご機嫌伺いなど、本当に様々だ。
もちろんまだまだ始まったばかり。今後も業務は増えていく。今はまだ最低限。それでも大忙しだ。
販路支援も近々ギルドで受け持つ予定だ。
冒険者は今後も増々その数を増やしていくだろう。ダンジョンでの素材採取だけではいずれ斡旋しきれなくなる。ダンジョン自体はいくらでも広げられるけれど、需要にはいずれ限界が訪れる。
ここは異世界だ。前世の世界とは大きく違う。文明レベルも人口も違うから、物資の消費速度が桁違いにゆっくりだ。
だからダンジョン外の仕事も増やしていきたい。
魔獣が減った影響か、最近は盗賊たちが増えている。
私たちが勝手に魔獣たちを絶滅させた影響も少なくない。仕事を奪われて食いっぱぐれた者たちが無法者に身をやつしているのだろう。
冒険者ギルドはあらゆる人々に仕事を提供するつもりだ。直接戦うんでなくともやれることはいくらでもある。
販路支援もその一環だし、他にもまだまだ構想はある。いずれは王都近郊以外にもダンジョンを生み出し、そこに新たなギルド支部を作っていく。
私たちは全てにおける胴元だ。ダンジョンは全て私たちの管理化だ。勝手に湧き出すダンジョンも無くはないが、基本的には発見される前に回収して必要な所に再配置している。
魔王軍に属するフィリアスたちが常に世界中を見張り続けている。フィリアスたちには独自のネットワークが構築されており、何かあれば即座に対応し、伝えてくれる。
この世界は完全に私たちの支配下だ。誰に気付かれることもなく、私たちは世界征服を成し遂げた。
「完全に悪人のやり口だよね。お代官様」
「越後屋の方ではないかしら?」
「悪質なのはそのどちらもがクーちゃんだってとこだよね」
「私は神よ」
「おっと」
「間違えたわ。神の代理人よ」
『いいよ♪ 譲ったげる♪ 代理人と言わず♪』
「ダメだよ、イロイ。変なこと言わないで。クーちゃんが本気にしたらどうするの」
『大丈夫大丈夫♪ クーちゃん強いし♪』
「そういう問題じゃないでしょ」
『もう直だよ♪ クーちゃんは次のステージに上がるの♪』
「何を企んでるのさ」
『ふふふ♪ 乞うご期待~♪』
イロイの温めていた秘密がようやく一つ明かされるのね。
『そゆこと~♪ 頑張ってね♪ クーちゃん♪』
いいわ。期待していなさい。
『もちろん♪ とっくに期待は越えてるよ♪』
----------------------
現在冒険者ギルドには一人のSランクと、三人のAランクが存在し、一般の者たちは高くてもCランク程度となっている。
ぶっちゃけコネ採用だ。Sランクはリーリア。Aランクはユキノ、ヒマリ、モミジの三人だ。
知っている人は知っている。ユキノは私の従者だし、ヒマリは隣国バルトローグの姫で、モミジは東方の離島を治める領主の娘だ。
わざわざ変装しているのはリーリアだけで、他の三人は素性を隠してすらいない。
ちなみに病死して既にこの世に居ない事になっているノーラや、隣国に嫁いだことになっているルヴィは、万が一も考えてそもそもアルミディアに置いていない。ルヴィの側近であるモーラも合わせて、三人は常に魔王国で暮らしている。
リーリアの実力は当然Sランクとして恥ずべきものではないけれど、それを知るのは私たちだけだ。世間一般的には王女本人か、実質的な黒幕である(とされている)お兄ちゃんの差し金だと思われている。
別に誰がなんと言おうとも構わない。そもそもSランクには現状メリットが無い。むしろギルドからの指名依頼を断れないという特大のデメリットが付随しているくらいだ。Aランクも基本は似たようなものだ。
要するに、私たちが都合良く動かしたいがために配置されているだけだ。表向きの口実が増えるのはありがたい。強大な戦力を動かすには何かと気を遣うものなのだ。
とはいえ、あんまり調子に乗って枠を増やすと文句を言われるのも事実だ。実態として何のメリットがなかろうとも、見栄を気にするのが貴族というものだ。最初からAやSで部下を登録させろと直接言ってきた者たちだっているくらいだ。
もちろんそのような提案は丁重にお断りさせて頂いた。その辺りもAランク以上の冒険者に押し付けられる面倒な仕事の一つだ。彼女たちには試験官を務めてもらった。圧倒的な実力差を示し、本人たちにも納得の上で諦めてもらった。
な~んて。都合良くいけばいいものを。
諦め悪く再試験を望むならまだマシだ。私やお兄ちゃんに堂々と圧を掛けてくる厚顔無恥な貴族たちも案外といるものなのだ。
お兄ちゃんは未だ王太子ではないけれど、そうなるのも時間の問題だと噂されているのにだ。貴族って度し難い。
高位の冒険者を抱え込むメリットもわかるけどね。素材をギルドに卸さず、直接回収出来るようになるかもだし。ただしそれは実力が伴っていればの話だ。強引にラベルだけ貼り付けたって何の意味もない。
現状ダンジョン内での無断採取は許されていない。正式にそんなルールを設けたわけではないけれど、ギルドに属さない者はギルドのサポートを受けられない。
もちろん仕組みはそれだけじゃない。冒険者カードに仕込まれた特別な鉱石を所持していないと私たちの配置したダンジョンボスが察知して迎撃してくれる。例えカードを持っていたとしても、軍隊で乗り込んできた場合なんかも同様だ。
ちなみにこの鉱石は魔王国だけにある特別なダンジョン内で採取した、この世界に存在しない鉱石だ。だから偽造も不可能だ。カードから引っ剥がせば崩れるように出来ている。
鉱石には正式な所有者の魔力が登録されており、本人以外が持っても、ダンジョンボスに伝わるようになっている。
取り敢えずの抜け道対策はこんなところだ。あとは運営を続けながら追々だ。当面はイタチごっこになるかもだけど、いずれ私たちが勝利する筈だ。なにせダンジョンが私たちの支配下にある出来レースだもの。
残る手は私やお兄ちゃんの暗殺くらいかしら。それこそ無理な話だけど。
なにせ常に私の防護結界で囲われてるからね。
フィリアスたちが増えて、フィリアと同じように私と契約を結んだことで、私の力は以前より遥かに増している。四神獣をフィリアス化して契約したのも大きかった。あれで更に私の力は跳ね上がった。
ともかくそのお陰で常時守っておける人数も随分増えた。そろそろまた家族を増やすのも悪くない。人手はあるに越したこともないのだし。
なんて。油断していた時だった。お兄ちゃんが襲われたのは。




