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虚空少女の風騙り ~ 英雄王女の異世界昼行灯 ~  作者: こみやし
07.暗躍魔王

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07-02.変わらない日常


 冒険者ギルドの立ち上げには一年を要した。



 時が経つのは早いものだ。忙しい日々は特にそうだ。


 お兄ちゃんはパトロンになってくれはしたものの、実務は私たちに丸投げだった。良い機会だからと、根回しも私に自分でやれと言い出した。


 ……ううん。実際には口にしていない。ただそういう雰囲気を醸し出して圧を掛けてきただけだ。あの時はちょっと喧嘩になった。お兄ちゃんの厳しさが私のためだとわかってはいても、言葉が足りなすぎると反論したかった。


 実際そんな言葉を口にした私はお兄ちゃんに嘲笑われた。まともな兄妹喧嘩はあれが初めてだった。それからは何度も喧嘩をするようになった。その甲斐もあって、一年前よりはお兄ちゃんの事が理解できたと思う。



 なんのかんの言いつつ、お兄ちゃんは私が社交界に馴染むためのサポートも欠かさなかった。


 そう。私は所謂社交界デビューを果たしたのだ。デビュタント? とかそんなやつ。お姫様として、正式に表舞台へと上がることになったのだ。


 だいぶ今更な気もするよね。既に学園にも通っていたし、お兄ちゃんの婚約者として名前も知られている。それ以前に私は英雄王女だ。生まれた時から注目は避けられなかった。



 そんな私が十六歳になって初めて王侯貴族の集まるパーティーに出席したのは、もちろん冒険者ギルド立ち上げの一環だ。丸投げとは言いつつ、お兄ちゃんも流石に紹介くらいはしてくれた。


 私はパーティーで知り合った関係者と親交を重ねて、ギルドの立ち上げに漕ぎ着けた。


 そんな経緯もあり、結局立ち上げまでには一年の歳月を要したのだ。最後の報告の後、お兄ちゃんは自分なら人員確保まで含めて三月もあれば十分と笑っていた。もちろんまた喧嘩した。これももはや日常だ。



「クーちゃん、また不機嫌」


「私頑張ったと思うの。一からやって一年で立ち上げるのは相当優秀な方だと思うの」


「殿下にまた何か言われたんだね。大丈夫。クーちゃんはよくやってるよ。それ以上にレオン殿下がチートなだけだよ」


 実は転生者なのかしら?


『ノンノン♪ そんなわけないじゃん♪』


 思えば女神様(イロイ)とも一年以上の付き合いね。


『ふふ♪ まだまだ序の口だよ♪ 千年だって一緒だよ♪』


 それはそうと。


 最近引き篭もり気味ね。問題でもあったの?


『ううん♪ 女神の気まぐれ♪』


 そう。ならいいけど。困った事があるなら早めに言いなさいよね。私たちは貴女が召喚した転生者なんだから。


『うん♪ 期待してるよ♪ 我のクーちゃん♪』


 あら。



「ところでお姉ちゃん」


「なんか嫌な予感」


 察しが良いわね。



「最近イロイとはどうなのかしら?」



「イロイと? う~ん……なんかあったかなぁ~?」


 これは惚けているというより、ピンときていないわね。どっちみちおとぼけお姉ちゃんに変わりないけど。まさか約束を忘れてしまったとは言わないわよね。



「ならヒマリとは?」


「仲良し♪」


 ふむふむ。進展はなさそうね。



「ママとは?」


「……母さんとは特に何も」


 ほう。



「つまりリーリアとは何かあったと」


「ち、違うんだよ! わたしは何もしてないよ!」


「何かはされたのね」


 リーリアのセクハラ癖には困ったものね。



「ふ、普通だよ! あれくらい普通! 普通の範疇だよ!」


 焦れば焦る程怪しくなるでしょうが。



「もしお姉ちゃんがハーレムを作る気になったのなら」


「ならないよ! クーちゃん一筋だよ!」


 あら。意外としぶといのね。



「そろそろ認めてあげるわ」


「クーちゃん♪♪」


「だから受け入れてしまいなさいな」


「クーちゃん!?」


「良いじゃない。皆で仲良くやりましょう」


「裏切ったね!! クーちゃん!?」


 なんて人聞きの悪い。



「アヤメはよく頑張ったわ。そろそろご褒美をあげたいと思うの」


「自分が進めたくなっただけでしょ!?」


「そんな事はないわ。クラちゃんは大切な親友よ」


「クラリスとのことだなんて言ってないよ!? 語るに落ちるとはこのことだね!!」


 ふふふ♪ チョロいお姉ちゃんね♪ 簡単に乗せられてくれるわ♪



「いったいいつから!? いつからクーちゃんはクラリスと浮気してたの!?」


「失敬ね。そんな事実はないわ」


 いきなり飛びすぎじゃないかしら。



「なら片想い!? むしろ両片想い!?」


「安心なさい。クラちゃん自身が親友で満足しているわ」


 むしろ最近はモミジとの方が……。


 それもこれもギルドの件で忙しかったのが原因よ。すっかり出遅れてしまったわ。遅れを取り戻さないと。



「クーちゃんの片想いだって認めるんだね!?」


 ヒートアップしてきたわね。



「約束したでしょ。お姉ちゃんが籠絡されない限り、私も他の子には手を出さないわ。だから精々頑張って。リーリアたちに負けないように」


 ふふふ♪ たまにはこうして危機感を煽ってあげないとよね♪ 頑張りなさい♪ お姉ちゃん♪ 私だけの恋人でいるために♪ 期待しているわ♪



「手を出す直前まで高ぶってるってこと!? クーちゃんはもう私以外に夢中なの!?」


 ……少し乗せすぎたわね。全然話を聞いていないわ。


『『そりゃそうなるでしょ』』

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