06-09.英雄の教え子
「かて……ない……」
な……んで……。
何度やってもママに勝てない……。
お姉ちゃんと二人がかりでも……。
「まだまだねぇ~♪ これはやっぱり目が離せないわ♪」
「ママが全然教えてくれなかったからよ!」
「あら。人のせいにするだなんて感心しないわ。ユキノは随分と甘やかしていたみたいね。ママちょっとガッカリだわ」
くっ……言うわね……。
再会して初めて知ったけど、ママって結構ズケズケ言ってくるのよね。昔はあんなに優しかったのに。あれは幼い娘に対する特別仕様だったのね。
『普通でしょ。オフィーリアをなんだと思ってるのよ』
わかってるわよ。別に悪いだなんて言ってないわ。ただちょっと新鮮だっただけ。それだけよ。
『知らない一面が見れて嬉しいわよね♪』
そうそう。そういうこと。そういうことにしときなさい。
『ふふ♪ 頑張ってね♪』
言われなくても!!
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その後も何度挑んでも勝てはしなかった。
けど楽しかった。何より嬉しかった。
憧れたママの強さを実感出来て。
やっぱり私のママは凄かった。
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休暇は瞬く間に過ぎていった。
ママとの日々はそれだけ楽しかった。
ユキノとアヤメも含めた家族四人。
だけではないけど、四人で過ごす時間が一番長かった。
修行が一段落付くと、今度はダンジョンにも赴いた。
四人で協力して最深部を目指すのも楽しかった。
世界は楽しいもので溢れている。特別なものなんて必要ない。日々の些細な出来事を全力で楽しむ心こそが肝要だ。
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「え? 行けなくなった?」
そろそろ休暇を切り上げようと伝えたところ、ママから想定外の言葉が返ってきた。
「もしかしたらよ。実はオースティンがね」
オースティンとは従兄弟の名だ。オーランドお祖父様の孫で、クリフォード叔父様の息子だ。
「叔母様と結婚したいから行かないでくれって♪」
「だからなんなのよ!? まさかオッケーしたんじゃないでしょうね!?」
いい歳して何色気付いてんのよ!? というかパパとだって離婚したわけじゃないでしょ!?
「クーちゃん次第よ♪ 頑張って♪ クーちゃん♪」
遊ぶ気だぁ~!?
「何でも楽しむのはママの良いところよ! 私もそこは大好きよ!」
「ありがとう♪」
「けどダメよ! 甥っ子弄ぶのは話が違うでしょ!」
「何もしてないわ。ちょっと稽古付けてあげただけよ?」
「ハッキリ断ってきなさい!」
「あら。クーちゃんは自信が無いのかしら」
「そういう問題じゃないと言ってるのよ!」
このわからんちんめ!!
「けどもう挑まれちゃったもの♪ クーちゃんに勝ったら考えてあげるって答えておいたから♪ あとよろしくね♪」
「もう! ママがこんな人だなんて思わなかったわ!!」
「あはは♪ クーちゃんがしっかり者でママ嬉しいわ♪」
平行線!!
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「クー様。若様は本気です」
ママが相当上手く煽ったのかしら。
「国王にはどう申し開きをするつもりなのよ」
ママはまだ一応王妃の筈なんだけど。
「おそらくノープラン……いえ、内縁の妻として迎えるつもりではないかと」
「だいたいオースティンはまだ十四歳よ」
マセガキめ。やだやだ。従兄弟が母親に想いを寄せているなんて聞かされてどんな顔すればいいってのよ。
「結局私は年下の従兄弟をボコせばいいのかしら?」
「一つしか違いません。加えてここ数年オフィーリア様の下で鍛えられておりました。どうかご油断なされませぬよう」
……ズルいわね。私がママと会えない間も構ってもらっていたくせに。
「やっぱボコボコにしたくなってきたわ」
「八つ当たりは褒められたものではありません」
正当だと思うのだけど。マセガキの思い上がりを叩きのめしてやりましょう。
「フル装備よ!」
「とおっしゃりますと?」
「四神獣を呼び寄せなさい!」
「やりすぎです」
「良いのよ。私は王だもの。魔獣たちは余さずこの魔王クーフェリアの配下よ。使えるものはなんでも使うわ」
「ご自重ください」
「油断するなって言ったのはユキノじゃない」
「油断せず、加減も忘れずに。上手くやってください」
またそれ。ユキノまで言うのね。
「普通の範疇なら全力を出してもいいのよね?」
「若様は次期当主の座を賭けて」
「いらないわよ!!」




