06-06.告白
「「ユキノ(先輩)ばっかズルい!!」」
私が見せつけるようにユキノに甘え続けていると、思った通りママとアヤメは憤慨して迫ってきた。
『無理もないわ。相当しつこかったもの』
フィリアは私の味方じゃないの?
『もちろん味方よ。クーがもっと頼ってくれるならいくらでも手を貸すわ』
……なら出てきて。右手が空いてるの。
『心得たわ♪』
私の中から現れたフィリアが、右手側に抱きついて隣を占拠した。
ふふふ♪ ユキノとフィリアで両手に花よ♪
ところでイロイは?
『いるよ~』
あら。出遅れたわね。
『膝の上が空いてるじゃん♪』
いいわよ。好きになさい。
『やったね♪』
いつもより随分と小さなイロイが現れた。
フィリアスと呼ばれる吸血鬼たちは元々変身が得意だ。フィリアスの身体を依代に降臨を果たした今のイロイは、フィリアスの力を自在に使いこなしている。子どもの姿に化けるのもお手の物だ。
四歳くらいの小さな子どもの姿で、私の膝に正面から座って抱きついている。笑いかけられて、不覚にも可愛いと思ってしまった。少し残念だ。両手が空いていたら抱きしめてあげたのに。ほんと顔だけは良いのよね。女神なだけあって。
「外に居るからって思考が読めないわけじゃないからね」
あら失礼。
「く、クーちゃん!? いつの間に子どもなんて!?」
ママが勘違いしちゃったじゃない。
「フザケてるだけだと思う。オフィーリアが我の気配に気付かない筈もないし」
「イロイはママのことも知っていたの?」
「もち。だからクーちゃんを宿らせたんだもん」
ちょっと聞き捨てならない話が出てきたわね。
「詳しく話しなさい」
「今? この状況で?」
「……後でママの居ない時に」
「あら。クーちゃんはママに内緒で何を話すつもりかしら」
そりゃ当事者だものね。気になるわよね。
「ママ。大切な話があるの」
「聞きましょう」
「その前に。その体勢のまま話すの? そういうの良くないと思うよ、クーちゃん」
アヤメは細かいわね。
仕方なくユキノとフィリアから手を放し、イロイを正面に向けて座らせ直した。
「~♪」
私が後ろから手を回して抱きかかえると、イロイは嬉しそうに鼻を鳴らした。
「イロイもどかして」
「ダメよ。逃がすわけにはいかないもの」
「あはは~♪ 逃げちゃうかも~♪ しっかり捕まえててね~♪」
「……話し方が子供っぽくないよね。舌っ足らずさが足りないと思うの」
だから何よ。お姉ちゃん面倒くさいわよ。
「それでね、ママ」
「無視しないでよ」
「お姉ちゃん。少し黙ってなさい」
「……むぅ」
「アヤちゃん♪」
ポンポンと自分の隣を示すママ。
お姉ちゃんは素直にママの隣へ腰掛けた。
「まずこの子。イロイは女神なの」
「あら。女神様。女神オネイロス様なのね」
オネイロス……ギリシャ神話の夢の神?
どうしてママがその名前を? 一般的には女神様としか呼ばれていないのに。イロイ本人も私たちにはイロイとしか名乗ってこなかったのに。
「我の話はまた今度。今はクーちゃんの話でしょ」
この様子だと話す気はないわね。
いいわ。一つずつ片付けていきましょう。逃さないけど。
「♪」
私が抱きしめる腕に力を込めると、イロイはまた嬉しそうに身じろいだ。
……ふぅ。
少しうつむき、イロイの髪に顔を埋めて呼吸を整える。今になって緊張してきたのだ。ここまでは平気だったのに。
「……わ、私や……アヤメ……は…………イロイが別の世界から呼び出した……転生者……なの」
「……そっか」
……ママの顔を直視できない。全部伝えて仲間に引き込むつもりではいたけど、いざとなると急に言葉が震えてきた。
「けど……その……ママ……」
「クーちゃんはママの娘よ♪ 大好きで自慢の娘なの♪」
「……なら……なんで」
「……ごめんね、クーちゃん。わからないよね。ママ、何も言わずに置いていったものね」
「……寂しかった」
「ごめんなさい。クーちゃん」
「……どうして?」
「クー様。オフィーリア様の話は後にいたしましょう。今はクー様の事情をお話しているのですから」
「……うん。そうね、ユキノ。続けるわ」
私は話した。これまでの全てを。何一つ隠すことなく秘密も洗いざらい打ち明けた。




