撮影された裏口
会社の裏口を撮った位置は、向かいの立体駐車場の三階だった。
澪は久瀬と現場へ行き、映像の柱、黄色い車止め、街灯の重なりから場所を割り出した。そこには防犯カメラが二台あったが、佳奈が死んだ夜の記録だけ、午前二時十分から二十分まで欠けていた。
管理記録には停電も故障もない。
床の隅に、濡れていない長方形が残っていた。前夜の雨で周囲は黒く湿っているのに、そこだけ古い機械を置いていたように乾いている。
久瀬が寸法を測る。幅十一センチ、奥行き五センチ。スマートフォンより厚く、家庭用ビデオカメラより細い。
「撮った道具を探しても、たぶん説明にはならない」
澪が言うと、久瀬は否定しなかった。
「説明にならなくても、測った数字は残ります」
帰り際、澪は柱の陰に紙片を見つけた。
写真用紙の切れ端だった。表面には何も印刷されていない。裏には鉛筆で、2:17とだけ書かれていた。
久瀬は手袋で拾い、証拠袋へ入れた。
その瞬間、澪の鞄の中で銀色のガラケーが振動した。
電池を抜いたはずの本体に、受信を示す緑色のランプが灯っていた。
澪は見えた事実と、自分がそう思っただけのことをノートの左右へ分けた。恐怖に理由を与えれば、一晩だけは眠れるかもしれない。だが誤った理由は、次に選ばれた人をもっと危険な場所へ連れていく。だから分からないものは、分からないまま残した。
部屋の外では、誰かの日常が何事もなく続いていた。エレベーターが止まり、配達員が階段を上り、遠くで車の扉が閉まる。そのどの音にも異常はない。異常なのは、死者の時間だけが現在へ届き続けていることだった。
澪は見えた事実と、自分がそう思っただけのことをノートの左右へ分けた。恐怖に理由を与えれば、一晩だけは眠れるかもしれない。




