表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見なくても、次はあなたです――捨てた動画が紙になって届くまで  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/60

玄関の人数

久瀬は佳奈の死亡記録を取り寄せた。

 遺体が見つかったのは自室ではなく、六階の共用廊下。争った跡はなく、鍵も壊れていない。防犯カメラには、午前二時二十四分に部屋を出る佳奈が一人で映っていた。

 澪たちが見た動画と時刻は一致した。

 ただし、防犯映像の佳奈は部屋を出る直前、誰かを先へ通すように身体を横へずらしていた。

「画面外に人がいた可能性は」

「玄関前は全部入っています」

 管理会社の担当者は平面図まで示した。死角はない。人が隠れられる幅もなかった。

 久瀬は動画を一コマずつ送り、玄関脇の鏡で止めた。

 廊下には佳奈一人しかいない。鏡の中にも佳奈がいる。だが鏡の奥、室内側へ伸びる影が二本あった。

 一本は佳奈の足元につながっている。もう一本は、画面の下で途切れていた。

 その夜、澪は自宅へ戻らず、母の家へ泊まることにした。

 玄関で靴を脱いだとき、壁の姿見に母と自分が映った。二人分の身体、二人分の影。

 澪は目をそらした。

 母が先に廊下を曲がる。

 鏡には、角の向こうへ消えた母と、動けずにいる澪と、誰のものでもない三本目の影だけが残った。

 澪は見えた事実と、自分がそう思っただけのことをノートの左右へ分けた。恐怖に理由を与えれば、一晩だけは眠れるかもしれない。だが誤った理由は、次に選ばれた人をもっと危険な場所へ連れていく。だから分からないものは、分からないまま残した。

 部屋の外では、誰かの日常が何事もなく続いていた。エレベーターが止まり、配達員が階段を上り、遠くで車の扉が閉まる。そのどの音にも異常はない。異常なのは、死者の時間だけが現在へ届き続けていることだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ