表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見なくても、次はあなたです――捨てた動画が紙になって届くまで  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/48

七分四十三秒

朝まで待って、澪は会社の編集室で動画を開いた。

 一人では見なかった。同僚の狭山透に事情を話し、画面収録用のパソコンと、回線から切り離した確認用端末を並べた。何かあれば複製を残すためだった。

 動画は佳奈の部屋から始まった。固定カメラのような視点なのに、撮影機材は画角のどこにも映らない。佳奈は何度も玄関を確かめ、窓の鍵を閉め、スマートフォンを床へ置いた。

 音は生活音だけだった。冷蔵庫。遠い車。上階の排水。

 六分十一秒、佳奈が振り返った。

 誰かを見た顔ではなかった。自分の部屋が、昨日までの部屋ではなくなったと気づいたような顔だった。

 次の二秒だけ、音声波形が完全に消えた。無音ではない。圧縮時に残るはずの底音まで、切り取られていた。

 映像が戻ると、佳奈は玄関の外へ歩いた。

 最後の八秒には別の場所が映った。澪の会社の裏口。昨夜、残業を終えた澪が傘を開き、駅へ向かって歩いていく。

 狭山が息を止めた。

「これ、誰が撮った?」

 澪は答えず、ファイル情報を開いた。

 作成日時は三日前。佳奈が死んだ時刻だった。

 澪は見えた事実と、自分がそう思っただけのことをノートの左右へ分けた。恐怖に理由を与えれば、一晩だけは眠れるかもしれない。だが誤った理由は、次に選ばれた人をもっと危険な場所へ連れていく。だから分からないものは、分からないまま残した。

 部屋の外では、誰かの日常が何事もなく続いていた。エレベーターが止まり、配達員が階段を上り、遠くで車の扉が閉まる。そのどの音にも異常はない。異常なのは、死者の時間だけが現在へ届き続けていることだった。

 澪は見えた事実と、自分がそう思っただけのことをノートの左右へ分けた。恐怖に理由を与えれば、一晩だけは眠れるかもしれない。だが誤った理由は、次に選ばれた人をもっと危険な場所へ連れていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ