結び「二階の窓」
短めなので、お昼に第三章投稿します。
その夜遅く。隊舎の二階の窓から、庭を見下ろしている二つの影があった。
「……本当に」
イルミナは額に手を当てた。
「よくもまあ、これだけ癖の強い方々が集まりましたわね」
「類は友を呼ぶ、と、私の故郷にもそういう言葉がありました」
「タケコ様も、類の一人ですか」
「否定はできません」
二人は少しだけ笑った。
庭ではまだ誰かが動いていた。井戸端でシーツを絞るラピエラ。縁側で丸まって寝返りを打つコルニャ。厨房の窓から漏れる薬草の匂い。そして、物見櫓の上の、二つの小さな影。
「――みんな、どこかで社会からこぼれ落ちた方々です」
イルミナが、静かに言った。
「はぐれ者。異端者。夢を笑われた者。過去に傷ついた者。自分の存在そのものを、否定された者――なのに、なぜでしょう」
イルミナは振り返った。
「この隊を見ていると、なんだか初めて『自分が居場所を得た』ような気がするのです」
「そうですか」
「はい」
竹子は、少しだけ考えてから、口を開いた。
「同じ者だけで固めた軍は、同じ方向にしか進めません」
「はい」
「ですが、違う者たちが集まれば、それぞれが、他の者には見えぬものを見る事ができます」
竹子は、庭を見下ろした。
槍を握る少女。弓を張る少女。影に潜む娘。眠る獣人。動物と話す娘。薬を煎じる女。大剣を背負う戦士。異端の治癒師。小さな呪い術師。
「姫君。これが私の部隊。世間からはみ出した者たちの吹き溜まりです」
「ふふっ」
イルミナは笑った。
「では、その吹き溜まりの頭目として」
彼女は竹子を見た。
「よろしくお願いいたしますね」
「承知仕った」
夜風が、二人の頬を撫でた。
庭の遠く、精霊樹の枝には、いつの間にか三輪目の白い花がそっと咲き始めていた。
次回、第三章開始です。
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