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嫌われたまま死ぬはずだった聖剣の乙女ですが、後悔した第三王子の口づけで目覚めました  作者: アキラ・モーリング


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第3話:魔王討伐の歓喜と、忍び寄る不穏な影

 魔王は討たれた。


 


 王都は熱狂していた。


 


 アルフレッド率いる魔王討伐軍は、長きにわたり王国を脅かしてきた魔王をついに討ち果たしたのだ。


 


「第三王子殿下万歳!」


「聖剣万歳!」


「アルフレッド殿下万歳!」


 


 街道に花びらが舞う。


 人々は笑い、子供たちは駆け回り、酒場では昼間から祝杯が上がっていた。


 


 誰もが勝利を喜んでいる。


 


 だというのに。


 


 アルフレッドの胸には、晴れない影が落ちていた。


 


 白銀の軍馬に跨りながら、人波の向こうを眺める。


 


 無意識だった。


 


 探していたのだ。


 


 金色の髪を。


 


 凛と背筋を伸ばして立つ、一人の少女の姿を。


 


 ――セレスティア。


 


 最後に会ったのは前回遠征前の聖剣降臨の儀。


 


 今回の遠征では、その儀式が行われなかった。


 


 兄である王太子だけがフェルノア公爵家へ赴き、聖剣を持参した。


 


 理由は知らされていない。


 


 出陣前、何度も面会を願い出た。


 


 だが、公爵家は一度として応じなかった。


 


 王太子に問い質しても返ってくるのは同じ言葉だけだ。


 


『今はまだ言えない』


 


 その一言が、ずっと胸に引っ掛かっていた。


 


 嫌な予感がする。


 


 理由も分からないまま。


 


 ただ、どうしようもなく胸が騒いでいた。


 


 城門前に到着すると、王宮騎士が進み出て頭を下げた。


 


「殿下、陛下がお待ちです」


 


 アルフレッドは小さく息を吐く。


 


「承知した」


 


 そして一拍置き、


 


「謁見が済み次第、フェルノア公爵家への訪問許可を願い出たい」


 


 騎士はわずかに目を見開いたが、すぐに頭を下げた。


 


「かしこまりました」


 


 アルフレッドは視線を落とす。


 


 なぜ、これほど気になるのか。


 


 自分でも分からない。


 


 ただ。


 


 無事でいてほしかった。


 


 その思いだけが胸に残っていた。


 


 ◇◇◇


 


 謁見の間には、すでに国王と王太子が待っていた。


 


 その左右には重臣たちが並び、勝利の報告を受ける準備が整っている。


 


「此度の働き、大義であった」


 


 国王の声が響く。


 


「魔王討伐軍の働きは見事であった。騎士団、魔術師団をはじめ、王国のために戦った全ての者へ褒賞を与える」


 


「ありがたきお言葉にございます」


 


 アルフレッドは騎士礼を取った。


 


 本来なら歓喜に包まれる場だ。


 


 だが。


 


 空気が重い。


 


 祝いの場とは思えないほどに。


 


 国王も。


 


 王太子も。


 


 どこか疲れ切った顔をしていた。


 


 耐えきれず、アルフレッドは顔を上げる。


 


「陛下」


 


「申してみよ」


 


「セレスティア・フェルノア嬢への面会を願いたく存じます」


 


 広間が静まり返る。


 


 アルフレッドは続けた。


 


「出陣前より幾度も面会を願い出ましたが、公爵家はこれを拒否し続けました」


 


 王太子の表情がわずかに強張る。


 


「また、本来執り行われるべき聖剣降臨の儀も行われておりません」


 


 視線を真っ直ぐ国王へ向ける。


 


「魔王は討たれました」


 


「……」


 


「今こそ事情をお聞かせ願いたい」


 


 沈黙が落ちた。


 


 やがて国王はゆっくりと口を開く。


 


「その件については、この場で語ることはできぬ」


 


 重臣たちがざわめく。


 


「陛下……」


 


「アルフレッド」


 


 国王の声は低かった。


 


「お前には、直接見てもらう必要がある」


 


 胸がざわつく。


 


「何を、です」


 


 だが国王は答えなかった。


 


 代わりに立ち上がる。


 


「フェルノア公爵家へ向かう」


 


 それだけだった。


 


 王太子も無言で後に続く。


 


 その姿を見た瞬間。


 


 胸の奥で何かが嫌な音を立てた。


 


 理由は分からない。


 


 だが。


 


 取り返しのつかない何かが起きている。


 


 そんな予感だけが、確かにあった。


 


 そして三人を乗せた馬車は、フェルノア公爵邸へ向かうのだった。

明日も18時更新です!


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