#51 魔動レーダー
「まど……? それって……」
「説明しよう! 魔動レーダーとは魔力製造物を対象とした構築者特定装置であり、先ほどの通り現場の証拠品を元に魔力を発生させた根源となるもの――今回であれば人間の現在地を探ることの出来る道具で、その名の通り魔力を元に動かすことが可能だ。動力源の魔力貯蔵庫となる小型バッテリーは私が錬成した特殊合金、ボディは耐熱性に優れた衝撃吸収材をベースとしておりどのような環境下であったとしても使用でき……」
『……で? 結局のところ?』
「せっかくの力作なんだからもう少し喋らせてくれてもいいじゃないか」
『十分長いし! 急いでんのよこっちは!!』
とびきりの笑顔で流暢に話し始めたミシャリーゼを、シエラはもはや慣れきった様子で無理矢理黙らせる。が、突然話を振られてあれだけ答えてしまうほど、錬金術師の持つそれは驚くべき代物であるのだということは、想像に容易い。
「まぁ、元は私が魔石とかのレアな素材を探すために作ったものなんだがな。ククノチシアで面白そうなもの採れないかなぁなんて思いながら持ってきたのが正解だった」
「どさくさに紛れて何しようとしてるんですかあなた」
「よーしシエラ、いつものように頼むぞー」
上手いように言いながらラミアを宥めつつ早速と話を逸らすように、彼女は魔道具を起動するべくシエラへと助けを求める。自分で作っておきながら、生まれつき魔力をほとんど持たないミシャリーゼはその自作した魔動レーダーを使うことすら出来ないのだ。
『まったく、調子いいんだから……というかいつも思うんだけど、なんで魔力で動かす仕組みにしたのよ? ミシャリーゼが起動できないんじゃ本末転倒じゃない』
「魔動式にするのは私個人としてもどうかと思ったんだがな。動力となる魔力が対象物製作者の特定の補助をしてくれるんだ。使用者の魔力に包まれた対象の魔力が増幅。周囲に放出されて、同じ特性の魔力に放出したそれが触れた瞬間、魔力が跳ね返ってこのレーダーへと戻って来る。エコーロケーション的な感じで、そこまでの正確な位置が分かるわけだ」
「や……ややこしくて何が何やら……」
「とりあえず、対象を特定の個人に限定することで能力を底上げした索敵魔法……という認識で良いんでしょうか?」
「なんか違う気もするが……うん。それでいいか」
続く細かな説明にとうとうついていけなくなってしまった面々は、ひとまず魔動レーダーの詳細についてはおいおい知ることとした。
今は兎にも角にも、敵地の発見が最優先。シエラの言う通り、かなり急いでいるのが現状だ。ミシャリーゼの自作装置自慢は、言ってしまえばいつでも聞ける。それよりも、今は動くのが先決であろう。
「そんじゃ、集めてもらったプラスチックをマガジン型解析ストレージへとセット……シエラの魔力を巡らせて――――レーダー、起動……!」
持ち手部分の底から飛び出して来た細長い鉄箱――拳銃の弾倉のようなそれに収集物を投入し、再びレーダー本体へと再装填。同時に本体内部で送られてきた物質が解析されると共に、水晶玉は怪しく光る。
「おぉっ……!」
「解析された魔力は使用者の魔力で増幅する内部機構を通り――外へと放出される……!」
瞬間、凄まじい光が本体から放たれた。近くにいる者は周囲が見えなくなるほどの強烈な光量に身を晒され、己が身が焼けているのではないかと錯覚してしまうほどの熱に当てられる。
しかしそれは、瞬きするよりも早く収束し、彼女らを目的の場所へと案内するための道標へと変貌したのだ。
生まれた青白い光が教えてくれるのは、進めば後戻りすることの許されない戦の世界。勝たねば命を失うことは免れない、片道切符の酷なルート。
『この先に……敵地が――――って、そっちの方向……』
「俺達が中域に向かうために通って来た――樹窟の口……?」
ここまでしばらく驚きの連続ばかりであった皆が、それぞれ途端に困惑の表情を浮かべる。もしもミシャリーゼの魔動レーダーが正しいのであれば、敵は洞窟内部にいるということになる……だがしかし――
「樹窟の内部は、もうすでに全て解明されていますし、ブラグロリネラを初めとしたガーディアンを用いた警備も行っています。外界からの悪意ある侵入者から、ククノチシアを守るために」
『だから、爆弾を隠したり密造したりすることなんて、本来出来ないはず……それが、どうして……?』
妖精族式のガーディアンの性能が如何程のものであるのかを十二分に理解しているシエラとラミアは、既に知り尽くされた洞窟の中に敵が潜んでいるとは考えられなかった。
ブラグロリネラ一体のみではない……ミシャリーゼ達が通って来た『本来の道』以外――エルフ達の目の届かぬ場所にて、広大な洞窟内を数百というガーディアンが巡回しているのだ。故に死角も無く、侵入者などがいたものならばすぐさま対処できる……
「だが、今のところ数年間使っている私のレーダーに狂いはない。右も左も分からない今、行ってみる価値はあるだろう」
「そうですね……俺は師匠を信じます……! 行ってみましょう!」
後押ししてくれたディナルの一言もあって、その場にいる全員がミシャリーゼに賛同する。極度の緊張と僅かな期待、それと一抹の不安を抱え、彼女らは再び洞窟へと足を踏み入れることとなった――――




