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#50 道標

「うーんと、もうちょい欲しいかも」


「まだ要るんですか⁉︎ もう結構取り尽くしたと思うんですけど……」


「探すものがものだからなぁ。痕跡になりそうなのは出来る限り多い方が精度も上がる」


 突如始まった単純作業の繰り返し。その内容は、今回敵の爆発物に使われていたプラスチックの回収。




 そもそもが爆発している故に破片も少なく、抉れた地面と混ざったそれは細かい石との見分けすらつかない。ましてや、ここにいるミシャリーゼ以外の全員がつい先ほど初めて見る代物を探せなどと突然言われても困る話である。


「見慣れてる私よりは違和感に気付きやすいだろう?」


「まぁ、触ったらなんとなく分かりはしますけど……熱も生命に通ずる何かも感じませんし」


 本格的に探し始めてからおよそ三十分で集まった欠片は手の平に収まる程度。しかしそれでもかなり集まった方であると言えるはずだ。本来ならば、粉々になって見つけられぬことの方が間違いなく多いのだから。


 そして中でも、そのほとんどを集めたラミア。森と長い間共存してきたことで、生物ならざる存在の命をも感じられるというエルフの特技のようなものは、周囲に広がる景色の中に混じった異物をも容易に発見してみせたのだ。




「……それで師匠。こんなものをどうするつもりなんですか?」


『森にとってはあまりよくなさそうな物だし、回収してくれるのはありがたいけれど……今は一刻も早く敵地を見つけなくちゃ』


「もちろん、そ(・)の(・)つ(・)も(・)り(・)で(・)集めてるんだよ」


 ミシャリーゼは笑みを浮かべながらそう返すが、彼女に巻き込まれている他の者達はいまいちピンと来ていない様子で、ディナルとシエラの二人と同じことを、他の二人も思っていた。




「結論から言うとな。この爆弾、敵が魔法で作った物なんだ」


「えっ、魔法で?」


「構築魔法の類か、リーナみたく錬成魔法か……いずれにせよ、これほどまでに純度の高いプラスチックを正攻法で作る技術はこの世界に存在しない。私やミケロみたく、知識や技術を持った“誰か“が爆弾製作に関わっている」


「そんな……そんなことが……⁉︎」


 中身の火薬自体はこの森にある物だけでもどうとでもなる。しかしそのガワだけは、簡単にどうこうできるものではないことは、ある意味では同業者とも呼べるミシャリーゼが一番よく知っていた。


「んで、そういう類の構築物には、作るのに使われた魔力の痕跡が残るんだ」


『痕跡?』


「魔法を発動した人間の魔力だよ」

 

 それを聞いて、皆は驚く他に無かった。




 様々な材料を元に、魔法で武器や道具を作る人間は人国にも存在している。剣などは基本的に魔法を用いることなく鍛造した方が強く耐久性も高いが、熟練の構築魔法使いによって数週間かけて生み出される一振りは、それらを遥かに凌駕するほどの性能を有するのだ。


 そして、剣だけに留まらない。武具の他にも、家具や壺などを専門とした魔法使いもおり、高値で売れるそれらを真似して構築された贋作を売りさばく詐欺を行う連中も中にはいる。数多ある犯罪の中でしでかす者が最も多く、それでいて最も捕(・)ま(・)り(・)に(・)く(・)い(・)手口だ。


 理由は簡単――構築魔法によって寸分狂わず似せて作られた贋作は、専門家や本物を作った人間でさえ見間違ってしまうほど精巧な作りをしている……一度偽物が出回ってしまえば、本物の価値がゼロになってしまうほどに。




 しかしミシャリーゼが言ったことが本当に正しいのであれば、品の構築を行った人間を特定できる。本物だけに確かな価値を見出すことも可能であるし、あらゆる国での犯罪率がぐっと減ることとなるだろう。


「ミシャ様、それ本当なんですか⁉」


「え、うん。錬金術の研究やる中で分かったんだよ。割と最近だけど」


 皆が唖然とする中、リーナが先陣を切ってミシャリーゼにその話が真実であるのかを問いかける。すると返ってきたのは、なんとも軽い返事と頷き。それがどれだけ凄いことなのかを自覚していないのか、本人は何故そこまで声を荒げているんだとでも言いたげな表情を見せていた。


「でもこの世界の鑑定魔法は形を細かく知れるだけみたいだし、なんかパッとしないんだよなぁ。やっぱり、犯人を見つけられてこそ――――というわけでこちらぁ!」


 そうして勢いよく彼女が懐から取り出してみせたのは、なんとも形容の難しい……強いて言うならば、持ち手のついた台座と水晶玉が一体化したような魔道具であった。


「ミシャリーゼさん、なんですそれ?」


「その水晶玉で犯人がどんな奴なのかを調べるんですか?」


 見たことのない、おそらくはミシャリーゼのオリジナルなのであろうその魔道具は、見た目こそ変わっていないものの、内部ではカチャカチャと自ら音を立てている。不思議と目を奪われるそれではあったが、少々不気味でもある。




「ふふふ、私のは一味違うぞぉ……鑑定した物に残っている魔力から敵の居場所を炙り出す……! ――――この世界じゃ類を見ない『魔動レーダー』のお披露目だ……‼」

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