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#48 穴掘りの意図

『……いや、突然何を言い出すかと思えば……』


「んじゃ他に何すればいいんだよ」


『脈絡が無さすぎるから説明しなさいって意味よ!』




 珍しく真剣な顔で長く考えていたミシャリーゼの口から一体どのようなものが出てくるのかと思えば、飛んできたのはやはりというかなんというか。奇想天外な案だった。


 里の大体を調べ終え、敵について考察し、バシュヌが情報収集している間に出来ることはあらかたやり尽くしてしまった。そんな中で次にどうするべきかという問題の問いとして提示されたのがただの穴掘りであったのだから、面々の困惑も無理はない。


「……地下に何かある、ということですか? ミシャ様が小屋の下に切り拓いたような」


「おっ、リーナ正解」


 自分が説明するよりも前に答えが飛んできたことが嬉しかったのか、ミシャリーゼはリーナの方を指さしながらニヤリと笑う。


「でも、ククノチシアに地下施設などありませんよ?」


「そりゃあ悪党様がわざわざアジトの存在を教えてくれるわけないだろう。多分秘密裏に、そういう場所が造られてる……で、そう思う理由もある」


 それについて、ラミアは見当すらついていない様子。


 ミシャリーゼが突拍子もないようなことを言うのはいつものことであるが、それにしても自分の故郷……それも守るべき場所としてそこを認識している彼女でさえ知らないような地下空間があるなんて、たしかになどと信じられるはずもなかった。


「まず一つ。敵があまりにも用意周到過ぎる点だ」


「えっ? でも、里の民の殲滅を狙っての行動であるならば、それが普通ではないですか?」


「そうは言うがなぁ。あれだけの範囲を爆破できるほどの爆弾だぞ。なんで用意できたのかはこの際置いておくとして、それをどうやって運搬及びが設置出来た?」


「うーん……たしかに……」


 ディナルの素朴な疑問にも、彼女はまるで初めから答えを考えていたかのようにすぐさま返してみせた。


「里の中で作ってたんじゃまず間違いなくバレる。外から持ってこようにも、その量が多かろうが少なかろうが、日夜気張ってる親衛隊連中に見つかることなく持ち込むことは難しいだろう」


「それは、そうですね……私達も交代制で絶え間なく見張りを続けていますし、武具や不審物を有している者は、歩き方なんかですぐ分かります。……って、ディナル達は身に覚えがあるか」


「ん? ……あっ。あぁ……」


 突然話を振られたことで一瞬きょとんとなってしまったディナルであったが、その言葉の意味を理解するのにそこまでの時間を要することはなかった。


 彼の想像したものは、昨日のバシュヌによる奇襲。こちらからは何もしていない、ただ歩いていただけであるにも関わらず息の根を止められそうになったあの心臓が凍りつきそうになる感覚は、一日経過した今もなおつい先程起こった出来事のように思い出せる。






「ともかく、だ。敵の何かしらが近くにあるのだとすれば、おそらくは地面の下。とはいえしらみつぶしにひたすら穴掘ってても非効率な上、万が一的にバレたら面倒臭い。ならばどうするかだが……はいリーナ!」


「えっ、私ですか⁉︎」


 こんなところで白羽の矢を立てられるとは一切考えていなかったリーナが、それに対する答えを今の間に推測しているわけもなく、そこから数秒ほどの沈黙。頭を回すことに全神経を一気に注ぐ。


「う〜ん……えぇと……」


「じゃあヒントだ。現状、地下へ続く道はこのククノチシアにはない!」


「それ、地下施設の存在自体否定してません?」


 少しばかり理不尽な無茶振りをしたことはミシャリーゼも自覚していたのか、彼女は答えをすぐ出せそうにないリーナへとヒントを一つ。


 それがヒントと言えるかどうかは定かではないし、リーナの隣で聞いていたディナルも怪訝な表情を浮かべ始めるほど、ミシャリーゼの言葉は分かりづらいものだった。


(ん? 地下がない……いや、あ(・)る(・)前(・)提(・)で(・)の(・)話か。だとすれば……)


 しかしそれでも、そのヒントならざるものがリーナの膨れ上がりそうになっていた思考の幅を狭め、答えへの道筋をより簡単に……回答へ向かう一直線のルートを提示した。




「ーーーー転移。敵は転移魔法を用いて、地上と地下を行き来している……?」


「大正解。この世界には魔法がある……道が存在しないからといって、通れない道理はない……!」


 道なき道もまた、道である。世の理を超える力の蔓延るこの世界……その中でも特に稀有な力の集まるこの妖精の樹海で起こった異変に、魔法(それ)が関わっていないなどあり得ないのだ。




『…………いや、転移も入れていいなら地下とは限らなくなっちゃうでしょ』


「と思うだろ?」


『違うの?』


「人間の技術でも、ここ十年かけて調べさせてもらったエルフの文献だの技術だのでも、自分意外の物質を運ぶのは難しいんだよ。装備はおろか、纏ってる衣類でギリってとこか」


「たしかに、戦場でも物資の運搬は馬車で行ってましたし……」


 シエラの疑問に対するミシャリーゼの返答に、ディナルも納得した様子だった。そしてその場にいる全員が一つの答えに辿り着いたところで、次の行動が確定する。




「てなわけで結論としては、まず地下へ繋がっている入り口を探す……! 出来るならば、バシュヌが帰ってくる前にな……!」


『なるほどねぇ…………ん? どのみち穴掘らなくない? 最初とずれてるけど……』


「ヨーシ、ガンバッテサガスゾー!」


『なかったことにするんじゃないわよ‼︎』

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