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粛清

 20XX年7月26日5時頃、愛知県豊橋市の山中で金は懊悩していた。呉を射殺し、残った偵察総局員18名を引き連れ漂着地点を離脱した金は、偶然にも至近にある豊橋市少年自然の家に辿り着き、無人の施設で幸運にもキーの挿さったままの軽トラックを発見した。施設の倉庫に放置されていたブルーシートを荷台に載せ、16人を荷台に押し込み上からシートを被せた。金、朴ともう1人が運転席に乗り込み、軽トラックとブルーシートを拝借した工作員たちは国道42号へ入り、東へ進んだ。


「どこへ向かう?朴同志。」


「もう少し先で左へ折れて山地へ向かいます。左折する直前に警察の駐在があります。」


ハンドルを握る朴が答えると、金は満足したように頷き、トラックは直進した。1台の大型トラックとすれ違った。しばらくして小松原駐在所の前を過ぎ左折し、愛知県道404号を北上した。荷台の16人は息を潜め、3人は運転席で前だけを見つめ進んでいた。物流センターと田畑、温室の続く丘陵を軽トラックは進む。朝日が差し込んできた。少しずつ家が増え、国道1号と交差した。多数のトラックが走り回り、その奥には白と黒に赤色灯を載せた車が見えた。一瞬緊張が走ったが何事もなく、交差点を抜け川を越えた工作員らは新幹線の高架下を抜け、東海道本線の踏切を抜けた。背後で踏切が鳴動し、遮断機が閉まった。その先の神社を横目に、十字路を左折し住宅地を抜け、山の入口へ向かった。後方では先程の踏切を貨物列車が通過していった。


「資本主義帝国の最たるものだな。破壊してやりたい。」


金が言うと、工作員らは軽トラックを降り集合し、証拠を隠滅したのちトラックを放棄した。自然公園の遊歩道を抜け隠密に山中へ分け入り、尾根筋からゆっくりと谷へ入った。


「分隊集合。整列。」


金が号令を掛けると朴ら18人の工作員は整列した。ここからどう行動するかを話し合う。


「作戦の続行、それが大前提であるが、現状ではこの国に潜伏することすらままならん。」


そう言う金は、そのまま現地住民からの強奪と隠滅を提案した。朴と数人がざわめいた。


「いくら日本人とは言え、民間人を殺して略奪だなんて、蛮族と変わらないですよ!」


「朴同志、生存のためだ。止むを得んだろう。」


金や金の側に立つ者と、朴たち7人は激しい口論になり、金が朴の手を払ったことをきっかけに殴り合いに発展し、朴や賛同者はリンチにあった。1人は谷筋から蹴り落され斜面を転げ落ち、1人は近くの大木に叩きつけられ食い込んだ枝で重傷を負った。


「…金、貴様。」


悶えながら口を開く朴。


「同志に手は掛けん。逃げるなり野垂れ死ぬなり好きにしろ。」


そう吐き捨てた金の足首に掴みかかった1人の後頭部に踵を食らわせ、12人は山中へ消えていった。

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