現地情報班
東京都新宿区市谷本村町、防衛省A棟脇。申し訳程度の屋根がD棟から続いてきている車寄せに、1台のセダンが停まっていた。中の人物がこちらに気付いたようで降車してきた。
「望月1尉、高見1曹ですね。お待ちしておりました。中即連所属、都築2曹であります!」
若いな。望月の感想だった。都築は事実、若干26歳で、170cm半ば程の体躯の随所から若々しさが見えた。そしてさらに、都築の胸には3つの徽章が輝いていた。FF空挺、レンジャー、狙撃…?所謂怪物というやつだろうか。何故中即連にいるのだろう、と疑問を持ちつつ望月も自己紹介をした。
「お2人とも、思ったより恰幅のある方なんですね。安心しました。」
そう口走りながら後部座席のドアを開き二人を乗せると、都築も運転席へ収まった。
「こちらがもう1人の班員の菊池さんです。」
「情報作戦隊所属、菊池准尉です。よろしくお願いします。」
情報作戦隊という言葉に少し動揺する2人。特戦と同様の機密部隊とされる隊員とこんなところで巡り合えるとは。眼鏡に細身の菊池がこちらを向き直った。かたや中即連の空挺レンジャー狙撃付き、かたや情報作戦隊。予想より豪華な顔ぶれに驚きつつ、まずは班の方針について話しながら移動を始めた。
「これから立川に向かいます!」
都築が言うと、業務車は市谷本村町の交差点を右折し靖国通を西進し始めた。
「立川からヘリで小牧に飛びます。その後は10師の2科の迎えで守山へ。」
菊池が淡々と説明すると、車は新宿5丁目に差し掛かっていた。望月がここまでの情報を共有すると、菊池が情報作戦隊の内部情報を共有する。
「潜入中の隊員によると、人民軍と解放軍が工作活動を主導しているようです。」
「潜入って、まさか某国に?」
「そのまさかですよ。」
当然だが、自衛隊が極秘に日本国外で活動を行うなど触法行為である。驚く望月と高見をよそに、菊池は話を続ける。数か月前から某国偵察総局の無線通信量が増大していること、国内の要注意団体に動きが見られたこと、人民軍特殊作戦軍と解放軍が合同訓練を行っていたこと。情報本部の関知していた概要より、はるかに詳細だった。
「…これがウチに上がってきたらどれほど楽だろうな。」
愚痴をこぼした望月をよそに、業務車は新宿大ガードをくぐった。大ガード西の交差点を過ぎると、目の前にハの字に末広がりの形の超高層ビルが屹立し、さらにその左右にも巨大な超高層ビルが聳えていた。新宿警察署の脇を過ぎ、旧世代的な超高層ビルとガラスカーテンウォールのモダンなビルの入り混じる交差点を左折する。左前方の高層ホテルの向こうに、東京都庁が見えた。工作員は何故ここではなく名古屋を狙ったのだろうか。疑念に頭を捻る望月を乗せたセダンは新宿中央公園を過ぎ、国道20号線を右折し西へ進む。東日本一帯を管轄する通信企業の本部と、新国立劇場。少し南に行けばベトナム大使館、南東には明治神宮。初台から首都高速4号新宿線に入り、一行は立川を目指した。




