阿鼻
「1尉!やつら始めました!」
守山駐屯地に滞在していた望月ら現地情報班のもとに飛び込んできたのは、名古屋市内各所でのテロ攻撃の情報だった。
「名古屋駅、地上にて爆発と銃撃、工作員らは地下街に立てこもっているようです。」
「栄のタワマン、占拠されてます!」
厳戒態勢を取っていた愛知県警はすぐに両地区に機動隊を急行させたが、相手は小銃で武装しており拳銃すら満足に装備しない機動隊では対処できていない。
「どこからこんなに大勢の人間を集めたんだ…?」
豊橋の朴らの証言が正しければ工作員は12人のはずだった。
「愛知県警より連絡!東名高速音羽蒲郡インター付近で検問中にトラックから銃撃!」
望月の頭に浮かんでいた1つの仮定に、それを裏付ける点と結ぶ線が曳かれていく。
「工作員は2グループいる!朴め、謀ったな!」
叫んだ望月は、すぐに本部へ連絡し指示を乞うた。直後、愛知県警から早期にリエゾンの派遣を打診され、現地情報班の4人は業務車に飛び乗り本部の置かれる愛知県庁舎へ急行した。
20XX年7月27日11時5分、ツインテラス納屋橋の周囲に布陣する第1機動隊第3中隊には疲弊の色が見えつつあった。そんな時、建物の中から1人の少年が出てきた。怯えた様子だが、どこにも怪我などは見受けられない。
「子供だ!保護します!」
最前列に構えていた小隊から2人の機動隊員が前へ出て、少年に駆け寄り両脇につき、隊列へ誘導した。
「大丈夫?怪我はない?」
優しく声をかける隊員を、少年は涙目で見つめた。その刹那、少年の背負っていたリュックサックが弾けた。近隣のビルのガラスが粉々に割れた。周囲の隊員は隊列を巻き込み吹き飛ばされ、第1機動隊3中隊は横隊の中央に穴を空けられたようになった。
「自爆…!?」
後方、警備車の陰にいたとある小隊長が降り注ぐガラスから身を守りながら言った。他の隊員は絶句していた。唖然とする機動隊員たち。
「中隊長!中隊長!」
第1機動隊第3中隊長の東野警部も後ろに飛ばされ、頭から血を流していた。
「子供だったぞ…自爆させたのか…?あいつら、なんてことを…。」
そう言うと東野は失神した。誰が呼んだか、招集が完了し名古屋市内を周回していた第2機動隊の1個小隊が駆けつけてきた。
「状況は!」
叫ぶ小隊長に、はっきりと答えられるものはいなかった。




