計画
20XX年7月27日9時30分、名古屋市都心部に機動隊の配備が始まりつつあった。当然大手を振って展開はまだできないため、人員輸送車や各大規模警察署への移動をし待機していた。12時から県警本部長と県知事が会見を開き、それに合わせ展開する予定だ。さらに名古屋市守山区、陸上自衛隊守山駐屯地では、望月ら現地情報班の4人が事件の経過と、治安出動命令を視野に入れた展開計画を検討していた。
「トヨタマ自動車の件も合わせるなら、現状発生した事案は大まかに6件。」
望月が情報を整理していく。高見と菊池が補足し、都築が時々疑問を述べる。
「治安出動命令がじきに出るだろう。これは本部からの情報。警察との連携を基本に想定しよう。」
防衛省内部では既に事態の深刻化を想定して治安出動命令の根回しが始まったらしい。戦後初となる命令はきっと出るまでに時間が掛かる。準備しておくことは必要だろう。機動隊と普通科連隊を中心に重要施設防護と市街地の警戒を行う。
「警察との連携は、県庁で行うことになりそうですね。」
35普連の隊員から手渡された過去の資料を確認しながら高見が言った。県や市との調整も必須事項だ。それに消防救急もだ。打ち合わせは続いた。
少し時は遡り、トヨタマ自動車の重役が誘拐された直後、8時30分頃、名古屋市中村区某所。
「崔同志、工程が終わりました。」
部下から報告を受けた崔は満足そうに頷き、李と蔡が集めた情報を見つめていた。
「日本軍は昨日から動き出したようだな。…望月直成、か。会えるのが楽しみだ。」
崔は小さな窓から外を見た。青空の向こうに超高層ビルの連なりが見えた。
「10時半をめどに作戦を進めろ。」
王が口を挟んできた。不快感を表に出さないよう返事をし、同時に各班に武装と整列をさせる。
「まだ少し明るいな。白昼の宴の幕開けだ。」




