出動
その日、豊橋市内では4件の行方不明事案が相次いだ。0時を回ってすぐの時間帯に、大学生5人。1時頃からおおよそ30分おきに、散歩中だったり山間の一軒家に孤立して暮らしていた高齢者や農林業従事者が行方不明となった。市内石巻町で大学生グループのものと思われるワンボックスカーが、石巻中山町など東部の山際の地域で複数の遺留品が見つかり、また、軽トラック2台と幌のついた中型トラック1台が盗難被害に遭った。愛知県警は当然ながら工作員の残存グループによる犯行と見なし、朴からの証言で残り12人と推定される工作員のうち半数が名古屋市内に、もう半数が豊橋市近辺に潜伏していると断定した。
「先行して豊橋入りした1機1中隊2中隊は、今も地域の安定と犯人検挙のため行動している。我々も彼らと同等、それ以上の働きを求められる。出動の秋が来たぞ。気張れ。」
「応!」
愛知県小牧市、中部管区警察学校に隣接する愛知県警察本部機動隊の隊舎では、出動準備をしていた第1機動隊第3、第4中隊が第1機動隊長の峰岸の訓示に応えていた。第2機動隊の招集と、中部管区機動隊の出動の要請も既になされていた。
「3中隊総員乗車!」
号令に合わせて、1個中隊67人の隊員が人員輸送車に乗り込んだ。指揮車や警備車も随伴する。隊員は全員が出動服に身を包み、大盾を装備していた。
20XX年7月27日朝8時、出勤中だったトヨタマ自動車の重役1名が消息を絶った。自宅から車で名古屋駅前へ向かっていた途中、千種区内の商業施設に立ち寄った一瞬での出来事だった。
「本部長、お見えになりませんね。ご家族に連絡を取ってきます。」
会社で到着を待っていた部下が市内の家族に電話をかけると、主人はもう家を出ましたと返ってきた。本人の社用携帯にも、私物の携帯にも繋がらない。
「どこかで事故にでも遭ったんじゃ…?」
血の気が引いていく感覚を覚えた部下が警察に通報。9時17分、1時間前に商業施設の駐車場で連れ去られる姿が監視カメラで確認された。犯人グループはNシステムを避けるように逃亡し足取りは掴めなくなった。
12時間前、ヘリで小牧へ移動し守山へ辿り着いた望月ら現地情報班は、11時に事態を認識し協議を行っていた。望月の見解ではこれも工作員によるものだったが、高見と菊池は懐疑的だった。
「手口がプロだ。やつらじゃないか?」
「しかし犯行人数が4人です。6人のグループが今ここまで人員を出しますかね?」
菊池の言い分も一理ある。望月はそれよりも、重大な何かを見落としているような気がした。




