ep02―3
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「国王陛下へ拝謁する前に、まずは婚約者(仮)に会ってみます?」
先頭を悠然と切って歩いていたユーリが、突然振り向く。
ルミナはこれ以上、色んな感情を抱え込みたくなく、断ろうとしたが「さすが、私! 良いこと思い付きましたねぇ」と、ユーリはルミナの返事など最初から聞く気もなく、さっさと階段を上り始めてしまう。
(本当にこの人、私のことを何だと思ってるの!?)
押し寄せていた悲しさや無力感は、ユーリのあまりの無礼さのせいで、一気に「怒り」へと塗り替えられた。
しかし、そのお陰で不思議と体の震えは止まっていた。ルミナは王女としてのプライドを胸に、ユーリの背中を鋭く睨みつけながら後に続いた。
ユーリは頑丈そうな白い扉の前で足を止めた。
扉には、鋭い牙のある獣が描かれていた。
猛獣など存在しない平和なアルカディアで育ったルミナにとって、それは本能的な恐怖を植え付けるのに十分な威圧感だった。
トントン、と扉に据え付けられた鉄の輪で、ユーリが軽快にノックする。
「婚約者(仮)を……」
重そうな扉が開き、長身のユーリと差ほど背丈の変わらぬ青年が顔を出した。
黒いサラリとした前髪を真ん中で分けたその青年は、ルミナが今まで見たどの人よりも顔が整っていた。
弓なりの眉に、すっきりとした鼻梁。奥二重だが、目元ははっきりとしている。小さい口には品があるが、薄い唇は情も薄そうに見える。
「ユーリ、お前は”内密”の意味を分かっているか?」
声は低すぎず、凛とした声が耳に響いた。
声の主――ジークの瞳が、まっすぐにルミナを捕らえた。
心臓が跳ね上がる。
全身を黒い服で包み隙なく佇む彼に、ルミナはこれ以上舐められてたまるものかと、キュッと口を固く結んで、その冷たい視線を見つめ返した。
「かわいらしいお嬢さんで良かったですねぇ」
ルミナの精一杯の姿勢を知り得ないユーリが軽口を叩いた。
「……君は部屋に入ると良い」
そう言うとルミナに背を向け、彼は部屋に入っていった。
ルミナはその背を追うように部屋に入っていった。




