終章-4 : 黒い箱が暴く真実
『私が魔力の抑制方法を知っていると言ったばかりに、そう勘違いされたのですね』
ノイズ交じりではあるが、よく知った声にアストリアの微笑みは消えた。
「ベネディクト総大司教……?」
「そうだ」
驚愕に震える瞳で自分を見上げるアストリアを、王女などという肩書きを無くしたただの女性のようだとジークは思った。
「魔法なんて実在してますの?」
アストリアの疑問にジークは自分の推察が正しいことを確信した。
(やはり奴は、自分が特別なのを良いことに王族に真実は話していないのだな)
魔法の存在や、精霊王のことなど、下手に知られては思い通りにならないことが生ずる。ベネディクトはあえて王族に何も言っていないのだろう。
『ちょ、ちょっと!』
ルミナの叫び声にも似た声に、二人は同時に無線機に目をやった。
無線機の向こうで、ドンッドンッドンッと音が聞こえてくる。
「まずいな。ルミナが閉じ込められた。シオンは残り、そうであると確証を得たら国王にベネディクト捕縛の許可をもらってくれ」
そう言い終わるやいなや、ジークは無線機を置いて部屋を飛び出していった。
『私の方から、姫がこちらに残ると言った旨を伝えておきますから』
無線機から聞こえるベネディクトの声に、アストリアは首を左右に振った。
「確証を得たと言っても宜しいでしょうか?」
シオンは色々な感情を抑えて、口を開いた。
「そうですね……父には私から報告しますわ。ですが、貴女も証人として立ち会ってもらって良いかしら」
怒気を孕んだようなアストリアの雰囲気が意外であった。
だが何も聞けるはずもなく、シオンはズンズンと城の中を突き進むアストリアの後を黙って付いて行ったのであった。
◇
ベネディクトの足音が遠くなってゆき、自分の生死を握られてしまったルミナは、絶望の淵に立っていた。
ドアノブに触れている指先から、世界が壊れていく気さえする。
(私、こんなところで、二度とジークに会えずに死んじゃうのかな……?)
それだったら……と、ルミナはやり残したことの多さを実感した。
「……やっと、いなくなりましたねぇ」
「ユーリさん!」
「よっと」
天井から飛び降りてきたユーリは、しゃがんで着地する。
「ここの鍵さえ開けてもらえれば良かったのに、閉じ込められるなんてねぇ」
糸目を開いてルミナを見る。
(何よ。嫌味だわ)
むぅと、ルミナは眉根を寄せる。
(でも……)
ユーリの登場に先ほどの絶望は胸から消えていた。




