終章-3 : 満ちる時
明るくなった部屋を覗き込んでルミナは、「あっ」と思った。
戸棚に、縛られてぐったりと横になった精霊の入った瓶を見つけたのだ。
そして、トンッという軽い衝撃が背中に伝わり、一歩部屋に足を踏み入れた途端、カチャリと、ドアが閉まる音がした。
「……え?」
急いでガチャガチャとドアノブを回すが、ドアは空回りするばかりで開く気配が全くしない。
「ちょ、ちょっと!」
ドンドンッとルミナは拳でドアを叩く。
『安心ください。ジーク王子には、私の方から姫がこちらに残ると言った旨を伝えておきますから』
ドアの向こうから、こもったベネディクトの声が響いた。
(嘘でしょう?! 私の魔法じゃ壊すことなんてできない! ……助けて。助けて、ジーク!!)
◇
ルミナがゼニウスの城を発ち、教会に着いた頃、ジークはシオンを連れて面会を願い出た。
「あら? 一人ではないのね」
シオンを認め、部屋の主はわざとらしく目を丸くする。
「一緒にこれを聞いてもらいたくて」
ジークがそう言って見せたのは、黒く四角い無線機であった。
部屋の主―アストリア―は初めて見る機械を不思議そうに見つめた。
「離れた場所の音声を聞くことが出来る機械だ」
「聞いたことがあるわ。でも、実物を見るのは初めて。触っても?」
「構わない」
アストリアに無線機を渡すと、ジークは部屋の中へと目を向けた。
白を基調とした部屋の中心には、来客用なのか椅子とテーブルが置かれている。
「あら私ったら、案内もせず……どうぞ座ってください」
無線機をジークに返すと、アストリアは椅子に腰かけた。
ジークが四脚ある椅子のうち、彼女の向かいに座ると、アストリアが一つ移動してきた。隣に移動してきたアストリアをジークは見た。
「一緒に聞くなら隣が良いでしょう?」
うふふと笑う彼女にジークは軽く息を吐き、部屋にいる侍女に目を向けた。
「用があったら呼ぶわ」
アストリアの言葉に、渋々侍女達は部屋を出て行った。
「貴女はいらっしゃるのね」
アストリアはシオンに笑顔を向けた。
シオンは黙って頭を垂れた。
「……それで、私に聞かせたいものとは何でしょう」
シオンのことは諦め、隣にいるジークの顔を覗く。
ジークは黙って手元の無線機のボリュームを上げた。




