6-28 : 甘香
「それは、それは」
ユーリは恭しく頭を下げると、窓に向かって歩き出し、二人に一礼して外に消えていった。
びっくりするルミナの頭上で、ジークがゆっくりと口を開いた。
「……俺から離れようなどと、思っていないだろうな」
ルミナはもう一度、背後に目を向けた。
ジークの黒い瞳がまっすぐルミナに向けられていた。
「どの国にとっても、俺にとっても、危険なのは、君ではない。そのことを盾にしようとする輩だ」
「でも――」
「異論は受け付けない」
この言葉にルミナは先ほどのことを思い出し、顔を赤く染めた。
(唇が湿っぽいだなんて知らなかった……)
自然と自分の唇に手が伸びた。
その様子に、ジークは目を細め、ルミナを横抱きにした。
「きゃっ」
咄嗟のことにルミナはジークの胸もとを掴む。
その自分より華奢な彼女の手に笑いを深めたジークは、そのまま彼女のベッドにボフンと座った。
「ちょ、ちょっと!」
堪らず抗議の声を発したルミナであったが、今まで見た中で一番、嬉しそうな彼の笑みに何も言えなくなってしまった。
「……」
おずおずと自分を見上げるルミナを、ジークは嬉々として腕の中に彼女を収める。
ルミナは抗うこともなく、ジークに身を預けた。
(……この匂い、好き)
言いようのない、どこか落ち着くジークの匂いに、ルミナは目を閉じた。




