6-27 : 耳を塞ぐ手
(稀有な存在だとしても、主様にプラスにならないようなら、困った存在であることには変わりはない)
ルミナはユーリの視線に気づき、ユーリを無垢な瞳で見つめ返した。
「……先ほどの話ですが、ルミナ様をゼニウスに連れてこようとしていたのはベネディクトで間違いないのです。しかし、物的証拠がないが故に、捕らえる訳にもいかず……困りましたねぇ」
ふぅとユーリは溜め息をついてみせた。
ルミナに動いて欲しいのが本音だが、ジークの手前、そうはいかないのである。
(捕らえる……)
ルミナは不穏な響きに眉を下げた。
穏やかな笑みをいつも携えているベネディクトが黒幕だと思えなかった。だが、今日あったことを思うと、否定もできない。
ルミナは縛られていた手首を擦った。
「実際、私にそんな大きな力なんてあるのかな……」
ついこの前まで、軽い怪我しか癒せなかった自分にそんな力があるとは思えなかった。
「どれほど大きいかは計り知れないが、さっきの防壁だけでも充分な脅威にはなるだろう。君が拒否すれば、相手は君の方へは近づけないのだからな」
触れる者にパチパチと閃光を放ち、侵入を拒む先ほどの防壁を簡単に突破出来ないだろうとジークは唸った。
「……」
ルミナはジークを傷付けてしまったことを思い出し、黙って俯いた。
「ベネディクトにとってルミナ様は、失礼ですが平たく言えば、利用価値があるのですよ。気に食わない国を牽制、もしくは無くすことができますからね」
ユーリの言葉に肩を震わせ、ルミナは顔を上げた。
彼女の金色の瞳は、彼女の内面を表すかのように揺れていた。
「気に食わない国……例えば?」
「それは勿論、言うことを聞かない――」
「その辺にしておけ。ルミナが怖がっているだろう」
ジークが優しく抱き寄せ、両手でルミナの両耳を塞いだ。




