6-25 : 痛みの後
「存外、指からもこれだけ血が流れるのだな」
指先にケガをしたことがなかったジークは、ふーんと流れる血の勢いの良さに関心を示していた。
「もう! そんな場合じゃないから!」
ルミナは手をかざし、傷口を癒す。
人差し指が思っていた以上に傷が深く、ルミナは思わず眉尻を下げた。
「……ごめんね」
「謝らなくていい。元を正せば原因は俺だろう」
綺麗になった右手をジークは色んな角度から確認する。
「でも……」
ルミナの気持ちも声も沈んでいた。
自分の魔法がジークを傷つけたのがショックであった。
「異論は受け付けない」
傷を癒してもらった右手でルミナの両頬を掴んだ。
「ちょ、ちょっと! ふざ……」
後の言葉は続かなかった。
何故なら、ジークの唇がルミナの口を塞いだからであった。
「ふざけているつもりはないが」
そっとルミナの唇を離すと、ジークはふっと笑った。
「う、うん……」
ドキドキする胸に手をあてているルミナは、ジークを見ることが出来ず、視線が泳いでいた。
そんなルミナを愛しく思い、ジークは胸に彼女を抱き寄せた。
腕の中のルミナからはいつもと違う匂いがした。
ゼニウスの石鹸の匂いだと思うと嫌な感じがしたが、自分の頬にあたる懐かしい髪の感触に、次第に心は落ち着いていった。
「……本当は黙っていようと思っていた」
何を?とルミナは目線を上げる。
「君をここに連れて来たかったのはベネディクトなんだ」




