6-21 : 王女らしい彼女の眩さと、胸の痛み
ジークは軽く睨んだが、「あら、酷い言い様ですわね」とアストリアはどこか楽しげである。
「殿下はいつもこんな感じですの?」
急にルミナは話を振られて、とっさに返事が出来なかった。
「そっくり同じ言葉を返してやりたいものだな」
ジークがそう言ってルミナの方に足を向けると「殿下、飴も売っていますが、どちらが宜しくて?」と、アストリアがジークの腕を引いた。
「……飴だな」
「分かりましたわ。全員分買ってきますわね」
アストリアがそう言って店に近づくと、近くにいたゼニウス民が彼女に挨拶していた。
「王女様の言った通り、水を毎日やったらカナバの木が元気になりまして、また実りました。本当にありがとうございました」
「それは良かったわ。奥さんはその後、体調は戻りまして?」
「おかげさまで。カナバの実を毎日食べているから、すっかり良くなりまして」
「あら、それはなによりだわ。お大事になさってくださいね」
「ありがとうございます」
少し離れた所でそんなやり取りを聞いていたルミナは、アストリアが自分より王女らしく見え、視線を逸らした。
それでもアストリアを”王女様”と親しげに呼ぶ民の声は嫌でも耳に入ってくる。
「……ルミナ」
「殿下、どの味になさいます? ルミナ殿下は一番甘くて美味しいカウカウの実の飴をどうぞ」
ジークがルミナを気にかける声より、少し大きな声でアストリアはそう言うと、ルミナの口に桃色の丸い飴玉を入れた。
コロンと口を転がる飴はただ甘いだけでなく、程よく酸味もあり、とても美味しい物であった。
「美味しい」
「良かったですわ。護衛の方もお一つどうぞ。教会で倒れたと聞きましたわ。カウカウの実はリラックス効果もあるので、心も少し落ち着くと思いますわ」
ただ倒れた訳ではないと心の中で思ったシオンであったが、何も言わず、首を振った。
「まぁ。信用がないのね。それも仕方ないのだわ。貴女にしたら私は得体の女ですものね……」
アストリアがそう溜息を吐いた。
(姉弟、そっくりだな)
シオンは昨日のユリウスを思い出した。
「護衛の私には過ぎた物です」
シオンが片膝を着くと、アストリアは「そう」と差し出していた飴を自分の口の中に入れた。
「殿下は余り物になってしまいましたわね」
「構わん」
「でもラッキーですわよ。回復効果のあるカナバの実の飴が残ってますから」
そう言って、ジークとルミナの側に来て飴を差し出す。
ジークは手を出して受け取ろうとしたが、アストリアは首を振った。
「いけませんわ。手が汚れてしまいます」
「いや、どうしろと」
「口に入れて差し上げますわ」
「遠慮しよう」
「うふふ、冗談ですわ。殿下は面白い方ですのね」
アストリアがルミナに笑みを向け、ルミナも一応笑みを返した。
「おや、アストリア王女陛下。王都案内ですかな?」
「あら、司教、偶然ですわね」
アストリアはジークに飴を渡すと、ベネディクトに笑みを向けた。
「本当ですなぁ。これも神のお導きかもしれませんぞ」
ベネディクトはルミナにニッコリと笑みを向けた。
その自分に向けられた笑みに、彼とのやりとりが思い出されて、ルミナはぎゅっと唇を結んだのであった。




