6-20 : 胸のざわめき
「特に好き嫌いなど、ない」
ジークが距離を置こうとすると、アストリアは「まぁ」と笑顔で、また近づく。
「では辛い物も平気ですの?」
「辛い物?」
おっとりとしたアストリアから想像し得なかった単語についジークは聞き返す。
「えぇ、あのお店にゼニウス一の香辛料が売っていますの。召し上がってみます?」
「いや、そのまま食べるべきではないだろう」
「あら、ゼニウスではそのまま召し上がる方もおられますわ」
「……」
ジークは顎に手をやる。
「うふふ。それはジーク殿下の考える時の癖ですわね」
アストリアがそう嬉しそうに笑うのを見て、ルミナは嫌な気持ちになった。
(さっきから二人でばっか喋ってる。それに……)
ジークも尖った感じはなく、ルミナに接するようにアストリアに接している気がして、モヤモヤするのであった。
「ルミナ殿下も召し上がります?」
ハッとして二人の方を見ると、ジークはどうやら挑戦した様であった。アストリアの隣で盛大にむせている。
「ううん、いいです」
「そうですわよね。酔っ払いしか、このまま口に入れる者もいませんし」
「おい!」
余程辛かったのか、ジークは珍しく突っ込みを入れた。
「そんなもの人に食わすな」
嫌ぁな顔をアストリアに向けたが、彼女は気にする様子もなく笑っている。
「こちらの店で甘い飲み物を売っていますわ」
「まともなんだろうな?」




