6-18 : 闇の影が落ちた瞬間
「精霊王の愛し子……?」
初めて聞く言葉だった。
「簡単に言えば、精霊王の加護を受けていると言う意味です。精霊王の加護を持っていると、彼のような黒髪になるのですよ」
ベネディクトは優しく微笑んだ。
「精霊王の属性は“闇”。先々代の女王は"火"の属性でありましたな。火に闇の力が加わって、ヴァルハラの城塞に傷を付けることが出来たのでしょう」
精霊王の話は別として、黒髪が強い魔力を持つ象徴だと言われている理由が分かった気がした。
だが……。
(だとしても、どうして、私は……)
「ルミナ王女の瞳は金色。つまり“光”属性ですな。光と闇は、相反する属性ですから、光魔法の威力を弱めているのでしょう」
ルミナの瞳が大きく開かれた。
「私は他にも色々と知っています。ルミナ王女もこちらで生活してはいかがでしょうか?」
「私は……」
「ジーク王子を慕っているのですね」
ベネディクトはにっこりと微笑むと、ルミナの足の縄を解く。
「見ていたら分かります。お二人は思い合っている。しかし……」
縄を解く手を止め、眉尻を下げたベネディクトはルミナを見上げた。
「ルミナ王女は光と闇の両方をその身に受け持っている。闇が光を飲み込んだ時や、闇が押されて光が溢れ出すような時に、何が起こるか計り知れません。それこそ、小さな島の一つくらいは消えてなくなることも……おっと、怖がらせてしまいましたな」
ベネディクトは笑顔を繕ったが、ルミナは二の腕に鳥肌が立ち、それをさすった。
(私がいるとアルカディアのみんなや、ジークが危ない……?)
ルミナは目を伏せ、台の縁を見つめた。
「私はその力……要は魔力を抑制する方法を知っております。またご興味がありましたら、この教会を訪れてくだされ」
ベネディクトが笑みを湛えながら、ルミナに手を差し出した。
ルミナが身を縮み上がらせていることに気づくと「そろそろお戻りになられる頃かと思いましたが」と、ベネディクトは首を傾げて見せた。
「すみません! お手をお借りします」
ルミナはそっとベネディクトの手を借り、台から降りた。
部屋の中にはたくさんの書物があり、ルミナはチラチラとそれらに目を向けた。
「足元に気を付けてくださいませ。廊下は少し暗いですから」
そう言ってベネディクトがゆっくりとドアノブを回し開けると、廊下は人気もなく、ガランとしていた。
その薄暗い廊下の先に見えるぼんやりとした光に、ルミナは目を細め、ベネディクトが告げた内容を脳内で反芻していた。




