ep.02 ヴァルハラへ
ウィンと別れたルミナは無事、ヴァルハラに到着した。
ヴァルハラの港は、アルカディアのような白い砂浜はなく、ゴツゴツとした岩肌が多く、そこに船が数艘、流されないよう縄で結ばれていた。
水の精霊の加護を持つ船員に別れを告げ、ルミナは一人、船から歩み出た。
陸にはルミナのことを聞いてきたのだろう、髪も瞳も黒いヴァルハラの民がそこには待っていた。
(噂通り、真っ黒ね)
闇のように深い黒い瞳と髪。服装まで上下とも真っ黒であった。
冷たく、値踏みするような視線の数々に、ルミナの背中にゾクリと寒いものが走った。
怖気づきそうになる足を叱咤し、キュッと唇を結んで毅然と見渡す。
集団の中には、高く結い上げた黒髪が凛々しい女性の姿もあった。ふと見ると、彼女だけでなく、民は皆、腰に黒く細長い『何か』を物々しく携えている。
あれは――武器、なのだろうか。平和なアルカディアでは見慣れない不穏な光景に、緊張が一段と跳ね上がる。
「ようこそヴァルハラへ。私は案内役を遣わされたユーリと申します」
糸目の男が一歩前に出て、頭を下げた。
ルミナも王女の礼儀として、膝を少し折り、一応の一礼を返す。
「おやおや。あの恐るべき『魔女』のお孫さんが、こんなに愛らしいお嬢さんだなんて……。我が主、ジーク様はラッキーですねぇ」
ユーリは笑顔であったが、ルミナは不愉快であった。




